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第6話 日常編①  非日常?


4月11日  1時間目授業 化学



 「教科書17ページを開け。まず構成元素について説明する。元素というものは単体と化合物から成り、種類は110種余りあるとされ … 」



教室内には、教師が熱心に授業をする声だけが響き渡っている。


だが、僕は正直に言うと、授業に集中できないでいたのである。

なぜならば … とてつもない睡魔に襲われているからである。

それもそのハズ、昨日は十分に寝ていないからだ。


昨日の夜は、未確認生物の調査のため、市内北部の大丸トンネルに向かったが、そこで未確認生物のカエル男が出現し、いろいろととんでもないことがあった。

見事退治した後は、家に帰る暇もなかったので、部室の仮眠室によって少しだけ寝た程度だけなのだ。

よって睡眠時間は、極端に少ない。


それにしても眠い・・・・。

眠すぎだ。

もう寝ちゃうか・・・・・・いやいやダメだ。

今は授業中だ。


そんな風にウトウトしていると、



 「じゃぁ … 柊、答えてみろ」

 「ええっ!?」



いきなり指名されたので、テンパった。

しかも眠気のせいで、今までの先生の話を聞いていなかったため、何の質問をされているのか自体、理解できない。


僕が硬直していると、



 「なんだ、そんなことも分からないのか? じゃぁ … 次は … 」



教師はあきらめた様子で、次は誰を当てるか探っている様子。

あ~、しょっぱらから恥かいたな~ って思っていると、



 「コラッ! 來林、起きろ!! 授業中だぞ!!」



凜?

振り返ってみると、僕の右斜め後ろの席にいる凜が、見事に熟睡していたのであった。


おまけに口からヨダレを垂らしながら、何か寝言をつぶやいている。



 「う~ん、祐磨ー、ダメだよー、そんなとこ触っちゃー」



はい? なんで僕の名前が出てくるんだよ!!


次の瞬間、クラスメイト達が疑惑の目で凜と僕を交互に見始めた。

は一体どんな夢見てんだよ と思っていると、ゴホンと咳払いした教師が、凜の頭を軽くたたく。


すると、凜はびっくりしたように目を覚ました。



 「痛っー!」


 「起きろ、來林。 2年になっても居眠りしてるつもりか」


 「うー、あっ、先生おはよー!」



凜は元気よく手を上へと上げる。

教師は実に呆れた様子で、うんざりしていた。



 「挨拶はいいから、地球上で最も軽い元素を答えてみろ」

 「うーん」



凜は実にかわいらしいしぐさで、首を傾げると、


 

 「あー、わかったー!鉄ー!」


 「鉄は重いだろ。しかも固体じゃないか。ヒントは気体だ」


 「うーん、二酸化炭素ー?」


 「・・・それは元素どころか化合物だろ。 ヒントは単体だ」


 「うーん、プロテインー」


 「・・・違う。最終ヒントだ。元素記号Hの元素名。これでわかるだろ?」


 「うーん、Hかー。あー、わかったー!」



そこで凜はガッツポーズを決めながら立ち上がる。



 「ヘリコプターーーー!!」


 「・・・・・・・・・・・」



次の瞬間、教室内は大爆笑で包まれた。


ていうか・・・ヘリコプターって、もはや元素のかけらもねぇー!


当の本人である凜は、首を傾げたまま、僕を見つめてくるばかり。

何でみんな笑ってるのー? って言っているような表情をしている。


いや・・・僕を見られても・・・



 「 … 静かに! もういい。気を取り直して授業を続けるぞ。現在、地球上で最も軽いとされる元素名は水素であり、性質は … 」



そのまま先生は気を取り直して、授業を進め始めた。


まぁ、これはいつものことだ。

1年の時から、凜がいるところには笑いが起きていたような気がする。







なんとか午前中の授業は終了した。

結局、4時間目で睡魔に負けて、教師にたたき起こされてしまったが・・・まぁ、仕方ない。


4時間目が終わり、いつものように僕のところに、野球部友人である穂崎立平がやってきた。



 「よっ、お前さっき先生に叩き起こされてたな」


 「まぁな。死ぬほど眠いんだよ」


 「帰宅部のお前が? 夜遅くまで何してるんだよ。お前今から受験勉強してるのか?」


 「いや、してないしてないって」


 「じゃあいったい何してる … もしかしてお前、夜な夜な大人のビデオを … 」


 「見てないって!!」



そんな風に会話していると、



 「祐磨ー! 一緒にご飯食べよー?」


 「ん?」



ふと気づけば、近くに凜が可愛らしく微笑みながら立っていた。


そんな彼女を見て、穂崎は僕の胸倉を掴み、凜に聞こえないようにヒソヒソ声で話しかけてくる。



 (「なぁ、柊。どういうことか説明してくれよ。あぁん?」)


 (「いや … どういうことって言われても … 僕にも分からない。)」


 (「分からないって … お前、クラスの … いや、学年の天然アイドルである來林さんに、ご飯誘われてる時点でおかしいだろ! もしかして付き合ってんのか? クソッ!リア充死ね!!」)


 (「いやいや、付き合ってない! 凜とは部活仲間なんだよ。だから … 誘われてるのかもしれない。」)


 (「お前今、凜って言ったな? 女の子を下の名前で読んでる時点で付き合ってる決定だろうが!!」)

 

(「なんでそうなるんだよ!」)



いやいや、友達でも下の名前で呼ぶんじゃないのか?と思うのだが …



 (「ていうかお前、いつから部活に入ったんだ?」)


 (「昨日」)


 (「昨日かよ! っで、何部?」)


 (「ああ、超常 … 」)


おっと、これは一般の生徒には極秘だったということを思い出す。

たしか・・・表向きは・・・



 (「オ … オカルト研究部だよ」)


 (「お前 … 変な部活に入ったもんだな。オカルト研究部って。でも俺は許さん! クソッ!こうなるんだったら、俺もオカルト研究部に入部すればよかった!」)



すると、何を思ったのか、穂崎は凜の前まで行き、両手を差し伸べた。



 「來林さん! アイツよりも、俺と一緒に食堂へ行きませんか? 美味しいもの、おごってあげますよ?」



何してんだよアイツ。


だが、凜は即答で返事した。



 「あたしは祐磨と一緒に行きたいのー! ねぇ~、祐磨ー!」



気がつけば、クラスメイトの男子が嫉妬の目で僕を見つめていた。

何か … いろいろとやばいですね。


僕がどう返事していいか迷っていると、



 「あたしと食堂行くのー、嫌ー?」


 「嫌じゃない嫌じゃない。行くよ。ってことで、じゃあな! 穂崎」



僕は凜の手を掴み、急いで教室の外へ出た。



 「あのさ、凜。誘ってくれるのはありがたいけど、何で僕? ほら、僕は男だし … 昼飯は友達と一緒に食べた方が … 」


 「そうだけどー、あたしー、祐磨と一緒にいるほうが、なんだか安心するかなー?」



はい、心拍数急上昇しました!



 「あ、安心? 僕が?」


 「うんー。同じ部活メンバーだからかなー? ほらー、他の子だと部活のこと話せないしー。祐磨だといろいろ話せるかなーってー」


 「だったら、隣のクラスの同じ部員のマラはどうだ? 同じ女子同士なんだし。ほら、僕だと、男女で一緒にいるとなると、いろいろ誤解とか・・あるし」


 「でもー、祐磨と一緒に食べたいのー!!」



凜は目に涙を少し浮かべながらそう叫んだので、廊下を歩く生徒達が一斉に振り向いてきた。

そして、こちらを見てヒソヒソ声で何か話し始める。


ま・・・マズイな・・・



 「凜、分かった分かったから、泣かないでよ! 一緒に食べよう・・・なっ?」


 「ほんとにー?わーい!わーい!」



凜は本当に感情表現豊かだな。

子供っぽくて可愛い。


そう思っていると、丁度そこに、同じ部員の中津川マラが通りかかった。



 「あっ、祐磨君と凜ちゃん、今から食堂に行くの?」


 「そだよー!」


 「あっ、マラ。足の怪我はもう大丈夫なのか?」



そう、昨日マラは、任務の最中に足を怪我して病院へと運ばれたのであった。

見れば彼女の右膝には包帯が巻かれている。



 「はい。病院で治療してもらったんですけど、骨折はしてないって。ただの擦り傷で、数針だけ縫う程度でした」



マラはそう言って微笑んだ。



 「もしかして、これからお二人は、食堂へ行くの?」


 「ああ、そうなんだ。よかったらマラもどう?」



すると、なぜがマラは顔が一瞬赤く染まり、挙動不審になった。



 「えっ!? いえ、わたしは … 友達と食べますので、ごめんなさい」



マラは申し訳なさそうに頭を下げてくると、早々と走り去ってしまった。

僕と凜はお互い顔を見合わせた。







食堂は東校舎の1階にある。

席は全校生徒の約半分程度しかない。


昼食の時間になると生徒らは、持参した弁当や売店で購入したものを教室で食べるグループ、食堂で注文したものを食べるグループの2つに主に分かれるためである。


僕と凜が食堂へ入ると、食堂内はすでに混雑していた。

座席空いてるかなと心配するほど混雑している。



 「なぁ、凜、先に座席とっておいてくれないか?」


 「うんー! いいよー!」


 「その間、僕が注文してあげるよ。凜は何食べたい?」


 「うーん、カレーとチキン竜田、ポン酢おろしハンバーグとパフェー!」


 「 … 頼むから1つにしてください。最低でも2つ」



それにしても、よく食うな。

こんなに細いのに、大食いなのかな?



 「えー! じゃー、パフェでいいー」


 「昼飯にパフェだけ食うのか!?」


 「じゃぁー、パフェとカレー大盛りでー!」


 「分かったよ」



凜は一足早く、座席確保のため、混雑した座席へと向かって行った。

僕は1人、行列に並ぶ。


ようやく僕の順番が回ってきたので、カレー大盛りとパフェとラーメンを注文すると、食堂のおばちゃんに「よく食べるね」と言われてしまったのだが・・・気にしないことにしよう。


そのままレジの方へと向かおうとしたとき、不運にも誰かとぶつかってしまった。


なんとか料理は落とさずに済んだのだが、僕が注文したラーメンの汁が、少しだけ相手の服にかかってしまったのだ。



 「あっ!!すみません!」



僕は咄嗟に頭を下げて謝ることにする。

すると、周りの生徒達がざわつく声が聞こえてきたのである。


何だと思い、チラリと横目で周りの様子を伺ってみると、2組の女子生徒がこちらを見て震えていた。

正確にいうと、僕ではなく相手の方を見て。



 「ん?」



僕は頭を上げてみる。

僕がぶつかった相手は男子生徒だった。



あああああああああああああああああ!!



僕は心の中で絶叫してしまった。


なんと、相手は髪は金髪で、耳にピアスをつけ、おまけにネクタイは着けておらず、カッターシャツの第2ボタンまで全開となった、不良みたいな少年だった。


はい、僕 死にましたー!


しかも、周りの生徒達が、何か話している。



 「あの人って、3年3組の浅井っていう人じゃない?」


 「確か … その人って昔、人殺しで少年院へ入れられたって聞いたことあるわ」


 「マジか? やべぇな! あのぶつかった生徒、殺されるんじゃねえ?」


 「きゃあ、怖いこと言わないでよ!」



えっ? なんですか、その話?

人殺し? 3年?


人殺しかどうかはわからないが、相手が先輩だったことにマズイと思った。

でも・・・ぶつかってしまったことには変わりない。


僕は恐る恐る相手の服を見ると、白いカッターシャツの袖部分が、茶色くなっていた。

恐らくラーメンの汁のせいで、汚れたのだろう。



 「ごめんなさい! ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」



ここはとりあえず謝るしかない。

僕がそう謝り続けていると、相手の3年男子は、チッっと舌打ちをし、何事もなかったかのように会計のレジへと向かって行ってしまった。


あれ? 許してくれたのかな?

僕はただ呆然と相手の背中を見つめているしかなかった。



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