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長野県 某所


木々が生い茂る深い森林の中に、ひっそりとコンクリートの建物が建っていた。

地上2階建ての建物で、外観は何の変哲もないごく普通の建物。


コンクリート製の頑丈な塀が、その建物を取り囲んでおり、上部には有刺鉄線まで備えている。

もはや、刑務所と見間違うような外観をしていた。


そんな建物の入り口には 『高瀬 生物生態学研究所』 と書かれた木製のプレートが掲げられていた。

生物生態学研究所と聞こえがいいが、それは表向きの施設である。


実際は、アメリカ政府と協力して、極秘に捕獲・回収した未確認生物の生態を研究したり、極秘に遺伝子操作をしたりして、新たな生物を開発している恐ろしい研究所なのである。




その施設内の北棟地下1階にある中央管制室に、谷奥たにおく大史たいしという男がいた。

彼の役職は、この中央管制室内にズラリと並んだ監視モニターの管理である。


モニター画面には、施設内のいたるところに設置されている監視カメラの映像が、ズラリに映しだされている。


彼は防衛省の管理職をやっていたのだが、1年前にこの施設へと移動となった。

当時は、この施設内で行われている実験や奇妙な生物を目の当たりにしたときには、1週間くらい肉料理が食べられない状態が続いたのだが、今では大分慣れてきたといったところ。

今でも思い出すと吐き気がすることがある。


そんな谷奥は中央管制室内で、いつものように大きなあくびをした。



 「あ~、暇だな」


 「確かに、暇だな。こんなにたくさんのカメラを毎日見ていると、目がどうにかなりそうだよ。ただ画面をじっと眺めるというのも、案外辛い作業だよ」



頷いたのは、同僚の安屋やすや

安屋は退屈そうにあくびをすると、ポケットからトランプカードを取り出し、ニヤついた。



 「よーし、休憩代わりにトランプでもするか」


 「またトランプかよ。まぁ、暇つぶしにはいいけどよ。そろそろ飽きてきたところだ」



そんな会話を交わし、トランプで遊び始めた。


これはもはや毎日の日課となっている。

当然、この部屋には、安屋と谷奥の2人しかいないので、誰にもバレないわけだが。


いつものように、トランプでババ抜きをやっていると、突如として施設内にけたたましい警報音が鳴り響いた。


谷奥はトランプを放り捨て、急いで監視モニターへと駆け寄る。



 「侵入者だ!」



同僚の安屋が、小さな画面に映っているモニターの1つを指さしながら叫んだ。


見ると、監視モニターの25番カメラに、不審な男が映し出されていた。


髪は真っ黒のロングヘアーの人間だったので、一見女かと思ったが、よく見たら目は吊り上っており、表情も鋭く、服装は全身真っ黒だったため、谷奥は瞬時に男だと判断した。


急いでマイクのスイッチを入れ、施設内に放送を流す。



 「緊急事態!緊急事態! 施設内入り口ゲートにて、侵入者あり!! 侵入者あり! 繰り返す! 施設内の入り口ゲートに … 」



するとその時、今度は施設内のいたるところから銃撃音が聞こえてきた。


なんだと思って谷奥が監視モニターを確認すると、施設内の生物保管室の映像に映っていたはずの、奇妙な生物たちの姿がなかった。


ただ映っているのは、破られた檻と、床に倒れて血まみれの監視員の姿だった。


他の監視カメラには、逃げ惑う研究員、銃を連射している特殊部隊、そして、そんな彼らをエサのように食いつぶす奇妙な生物たちが映し出されていた。



 「一体 … 何が起きているんだ … !?」



谷奥は声を震わせながら、思わずそう呟く。


監視モニターのほとんどに、地獄のような映像が映し出されているのだ。

あまりの突然の出来事に、2人は何をすべきかも忘れかけていた。


呆然とモニターを眺めてると、他の同僚から無線が入ってきた。



 「こちら管制室だ。どうぞ」


 『おい!聞こえてるか!? 至急、ハザードレッドを発令して、遮蔽扉を下ろせ! 至急だ!』



言われたとおり谷奥は、監視モニターの操作盤に付いてある赤いボタンを押し、続けて黄色のボタンを押した。


すると、施設内に轟音が響き、施設のあちこちで遮蔽扉が降りてきて、通路や部屋を封鎖し始める。


これは万が一、この施設で研究・保管してある未確認生物や遺伝子操作で生み出された生物が、檻から脱走したときに使われるものだ。


このハザードレッドが発令されると、施設の建物すべてのドアと窓に遮蔽扉が降りてきて、誰も外部に出れなくなるのだ。

無論、この施設で勤務している研究員、警備員、特殊部隊さえも二度と外部にでることはできない。

そう、完全にこの施設は封鎖されるということを示している。



 『よし、それでいい。あとは防衛省本部の方へと報告を … 』



そこで無線が途切れたと思ったら、無籍の向こうからけたたましい銃撃音が聞こえてきた。



 「おい、どうした!? 一体何が起きたんだ!」


 『うわっ!来るなぁぁ!!助・け・・・・て・・・・、うわぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!』



そこでザザザザッと通信が途絶えた。


谷奥は無線機を持ったまま、茫然とする。


その時、中央管制室の扉がドンッと響き、大きく振動した。


谷奥と安屋はドアの方へと目をやる。

安屋の方はすでに、手にアサルトライフルを持ち、構えている。


もちろん、先ほどハザードレッドを発令したので、この中央管制室の入り口扉は遮蔽扉によってふさがれているのだが。

この遮蔽扉はちょっとやそっとでは破られないハズなのだが・・・・次の瞬間、遮蔽扉ごと破られてしまった。


そして、中央管制室に1体の生物が入ってくる。


見た目は恐竜のアンキロサウルスに似ていおり、硬い甲羅で全身覆われているが、頭部の部分は縦に割れていた。

その割れ目からは細長い舌と、大量の鋭い牙が覗かせている。



 「ひっ … ひぃいいいいい!!」



咄嗟に安屋はアサルトライフルを連射し出すが、全身硬い甲羅で覆われているため、銃弾はすべて跳ね返ってしまう。


そして次の瞬間、その生物は安屋に噛みつき、安屋は真っ二つに噛み千切られた。



 「あっ … うわぁああああ!!」



谷奥は恐怖のあまり、床に座り込んでしまう。


目の前で同僚が真っ二つになってしまった光景を見て、この現状を呑み込めない。

しかも、中央管制室唯一の出入り口は、化け物が占領しているため、逃げ場がない。

彼に絶望感が押し寄せる。


そうしている間にも、化け物はゆっくりと近づいてきている。



 「アハッ!あはははははははははh」



とうとう恐怖の限界を超え、彼は不気味に笑い出した。

ポケットから拳銃を取り出し、それを自分のこめかみへと押し当てる。



 「ハハッ、こんな化け物に食われるくらいなら、死んでやる!!」



谷奥は拳銃の引き金を思いっきり引く。


だが、慌てていたため、安全装置を解除するのを忘れていたので、引き金はビクともしなかった。



 「あっ!?」



次の瞬間、怪物の大きな口が彼の頭部に襲いかかった。







ところ変わって、施設内の地下2階の廊下を1人の男が歩いていた。


髪は真っ黒で腰まである長い髪、目は吊り上がり赤く光り、耳が鋭くとがっていた。

服装は真っ黒なコートを身にまとっている。


そんな彼は、つまらない表情を浮かべながら、血しぶきを上げて倒れていく特殊部隊らを見つめていた。



 「弱いな。実に人間は弱いものだ。武器を手にしても我に勝てぬとはな」



男の両手からは、絶えず空気の刃が生まれ、前方へと飛んでいく。

そしてその空気の刃は、前方で銃を連射している部隊を、ハムにするように輪切りにしていく。


そして数分後、施設内には静寂が訪れていた。


聞こえてくるのは、獣が肉を食いあさる音のみ。

侵入者であるその男は、辺りを見渡す。


通路の壁と床は血まみれ。

いたるところに人間がただの肉塊と化していた。

それを見ても、男は何も思わない。

そう、彼は人間ではないのだから。


しばらく男は辺りを見渡していると、通路の奥から、全身硬い甲羅で覆われたアンキロサウルスみたいな生き物が現れ、男に近づいてきた。


男に襲いかかるかと思いきや、男が右手を上へと掲げると、その生き物はおとなしくお座りをしたのである。



 「よしよし、人間に無理矢理 檻に入れられて苦しかっただろうに。だが、今日から君は自由の身だ。さぁ、そこらに転がっている肉を好きなだけ食いあさるがいい。忌々しき人間どもの肉をな」



そう言い残し、男は本日の目的の品が保管されている、施設の地下5階へと向かった。







地下5階にたどり着き、男は1つの分厚い扉の前に立っていた。


扉は、銀行の金庫室の大扉みたいに40cmもの厚さがある頑丈な扉であるのだが、男は構わず、両手から空気の刃を出現させる。

空気の刃はまるで紙を切り裂くかのように、その頑丈な扉を簡単に破壊する。


男は何食わぬ顔で、部屋の中へと足を踏み入れた。

中に入ると、そこは保管庫だった。


博物館の展示品のようにガラスケースに収められているモノの正体は、オーパーツと呼ばれるものであった。


オーパーツとは、発見された時代や場所に、本来あるハズのない物品のことを指すものである。

例えば、1億年前の地層から見つかった鉄製のハンマー、インドにある錆びない鉄柱、ナスカの地上絵など。


別名:「場違いな加工品」というものである。



ガラスケースで厳重に保管されているオーパーツの中から、男は目的の品を探す。

そして見つけた。


それは、黄金色の水晶ドクロであった。

その水晶ドクロを保管してあるガラスケースの周辺には、目に見えない赤外線センターで覆われている。


しかし、そんなこともお構いなしに男は水晶ドクロに近づき、ガラスケースを破壊し、無造作にそれを掴み取った。


直後、施設内にけたたましい警報音が鳴り響き始めた。

だが、この施設内には既に生存者は1人も残っていないので無意味である。


男は黄金に輝いた水晶ドクロをまじまじと見つめ、不気味な笑みを浮かべる。


 「これが空間に異変をもたらすとされる伝説の水晶か。ついに我がものになりしか。グフフフッ、これでまた、我輩の計画に一歩、近づいたものだな」


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