表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/40

第5話 入部編⑤  カエル男の脅威

そして、トンネル内に凄まじい銃撃音が響き始めた。


マラの軍用散弾銃が、5体のカエル男をまとめて吹き飛ばし、凜のアサルトライフルが連続でカエル男を蜂の巣にしていく。

僕も負けじと拳銃の引き金を引く。


そうしてトンネル内は、銃撃音と獣の悲鳴とが混ざり合い、壮絶な空間へと変わりつつあった。


だが、



 「くっ … 数が多すぎるわ」



マラは弾切れになった散弾銃に弾を補充しながら、顔をしかめてそう呟く。


銃で撃っても撃ってもカエル男の数が減っているようには見えない。

このままでは弾が切れたら、一貫の終わりだ。


しびれを切らしたのか、マラはポケットから焼夷弾を取り出し、カエル男の大群へと投げつけた。


次の瞬間、真っ赤な光がトンネル内を照らし、灼熱の炎がカエル男達を包みこんだ。

カエル男は悲鳴を上げながら、のた打ち回り、次々絶命していく。



 「みんな、焼夷弾を投げて!」



言われたとおり、焼夷弾を取り出して、奴らに向かって投げつけてやる。


すると、カエル男たちがまとめて吹き飛び、辺りを肉が焦げたような臭いが充満した。

これは結構うまくいったように見えた。


その時、グァァァァという獣の咆哮が聞こえたと思ったら、炎の向こう側から巨大な影が出現した。



 「クッ … 恐らくアイツが親玉ね。焼夷弾でも死なないなんて … 」



マラが見つめるその先には、巨大なカエル男の姿があった。

さっきまでのカエル男とは違い、身長は2倍程ある。

巨大な体を支えきれないのか、4足歩行状態であった。



 「デカいな。どうするんだよ?」

 「るに決まってるわ」



そう言うと、マラは軍用散弾銃を構えて引き金を引いた。

銃口から火が噴き、多数の小さな弾丸が巨大カエル男の腹へとぶち当たる。


だが、表面の皮膚を浅く吹き飛ばした程度であり、あまりダメージを受けていないようだった。

マラは驚愕の表情を浮かべて驚く。



 「ウソ!? 散弾銃でも … 効いてない!?」



 こういう戦闘に慣れているはずのマラが、少し後ずさりをしたのを見て、僕は不安になった。



 「コイツ … 相当やばいの?」


 「コイツより強い生物を相手にしたことはあるけど … 信じられない! カエル男といえば、さっきまでわたし達が倒したサイズが普通なの。こんなに大きくて、しかも皮膚が頑丈なカエル男は初めてだわ」



そう言いながら、彼女は連続して引き金を引く。

だが先ほどと同じように、弾丸が皮膚を薄く吹き飛ばす程度だった。


何だか物々しい雰囲気が立ち込め始める。


続けて凜もアサルトライフルを連射し始め、マラも散弾銃を連射しだしたので、僕も9mm拳銃を連射することにした。


鼓膜が破れるのではないかと思うほどの銃撃音がトンネル内に響き渡る。


しばらくすると、それぞれの銃が弾切れになり、一気に静寂が訪れる。

辺りは火薬の臭いと煙が充満し、鼻と目が痛い …。


 「うぅ、やったかなー?」


 「いくらなんでも死んでるだろう。」


 「いや、待って!」



次の瞬間、トンネル内に地響きがした。

それが巨大カエル男の咆哮によるものだと分かったときには、マラはすでに前へと飛び出していた。



 「マラ!! 何してんだよ!」


 「あんなに銃弾を浴びせても死なないなら、わたしの日本刀で斬り落とすわ!」


 「無茶しないでよ!」


 「大丈夫」



マラは巨大カエル男に向かって走りながら、弾切れになった散弾銃を捨て、腰に掲げていた日本刀に手をあてた。


一定の距離まで詰めると、一気に日本刀を引き抜く。


次の瞬間、地面に緑色をした細長い腕が落下した。

見れば、カエル男の左腕がない。


あまりの速さに、僕は日本刀を操るマラに感心した。


続けて彼女は、今度は巨大カエル男の頭部を切り落とそうとする。

そのまま日本刀は、巨大カエル男の首筋部分に食い込み、そのまま切り落とそうとしたが、そこで刃は止まってしまった。



 「えっ?」



という声が聞こえた直後、カエル男の長い舌がマラの首に巻き付いた。

彼女は咄嗟に日本刀で再び斬ろうとするが、刃が深く食い込んでいるため引き抜けない。


そうこうしている隙に、彼女の首が締め上げられた。

マラの体が宙に浮く。

彼女は必死に抵抗しようともがくが、カエル男はビクともしない。


巨大カエル男は、大きく口を開け、マラを丸呑みしようとしたので、僕は弾倉マガジンを交換した拳銃を、咄嗟に撃った。


見事、弾は舌に命中した。

巨大カエル男は絶叫し、マラを投げ捨てる。

彼女は地面を転がり、壁に激突した。



 「マラ! 大丈夫!?」



僕は急いで彼女に駆け寄った。

マラは痛そうに右足を押さえており、膝から血がでていた。



 「くそっ、怪我してるじゃないか」



僕はポケットからハンカチを取り出し、手当てしようと思ったが、後ろからカエル男が近づいてきている気配がしたのを感じ、中断せざる負えなかった。


これは、もうやるしかないな・・・・

そう決意し、急いで駆け付けてきた凜に、マラの処置を託すことにした。



 「祐磨ー? 何するつもりなのー?」


 「決まってるだろ。アイツを倒す」


 「でもー!! 祐磨はまだ新入部員じゃー … 」

 

 「大丈夫さ。いい作戦思いついたから … 。凜はマラの処置を頼む」


 「祐磨ーーー!!」



僕は、今にも泣きだしそうな目でこちらを見てくる凜に背を向け、巨大カエル男に向かった。


そう、僕は先ほどマラを助けるために、拳銃でカエル男の舌を撃ったとき、いい作戦を思いついたのだ。

とはいっても、あくまでも いけるんじゃないか?と思っただけであり、うまくいく保証はない。

下手すれば・・・・僕は死ぬ。


マラは足を負傷しているので、無理だろう。

凜には、こんな無茶はさせたくない。


一度ここから離脱して応援を呼ぶにしても、その間に巨大カエル男がトンネルを出て、住宅街へと向かったら、被害は拡大してしまう。

だから僕がやるしかない。


まず、9mm拳銃でできるだけ奴の注意をひきつけることにした。

拳銃を連射しながら、カエル男に近づくと、分厚い舌がカエル男の口から伸びてくる。

舌めがけて狙いを定めようとしたとき、突如、舌がムチのようにとんできた。


僕は咄嗟に体勢を低くし、なんとか回避することに成功するが、その際に手に握り締めていた9mm拳銃が跳ね飛ばされ、地面へと転がってしまった。


だが、僕は足を止めることなく、突き進むことにする。

これはもう、一か八か試してみるしかない。


僕は、巨大カエルの前までくると、手ぶらになった手を大きく広げ、



 「お~い! ここにおいしい肉があるぞ~!!」



ジャンプしながらそう叫ぶと、カエル男はギロリと僕に狙いを定めるように睨みつけてきた。



 「ここだ! ほらっ、僕を食ってみろ!!」


 「ちょっ、祐磨ー!! 何してるのー!!」



凜が叫ぶ声が聞こえてきたが、あえて無視する。


すると、舌が僕の首に巻き付いてきて、上半身がカエル男の口内へと呑みこまれた。

ヌメヌメとした感触が伝わってきて気持ち悪いが、このときを僕は狙っていた。


ポケットから焼夷弾1つと閃光弾2つを取り出してピンを抜き、カエル男の喉の奥へと投げ入れる。

そして、すぐにサバイバルナイフでカエル男の舌の根元へと突き刺した。


すると、巨大カエル男は咆哮しながら、僕を吐き捨てた。


僕が地面を転がると同時に、巨大カエル男の口から閃光がほとばしり、次の瞬間には巨大カエル男の体が内側から爆発した。

まるで風船を膨らませすぎて破裂したような光景だった。



 「やった、倒した … 」



カエル男がいた場所は、今はもう無数の肉片が転がっているだけだった。

巨大カエル男はもういない。


そう思った時には、体中に安心感が湧き上がってきた。

そこへ、マラの傷の処置を終えたらしい凛が、駆け寄ってくる。



 「祐磨―!よかったー、生きてるー」



凛が目に涙を浮かべながら、僕に抱きついてきた。



 「なんであんな無茶したのー? あたし、祐磨が食べられちゃう って心配したんだよー?」


 「心配かけてゴメン。でも、こうするしかないかなと思って … 」


 「うっ、でもよかったよー」



僕は苦笑いを浮かべながら、とりあえずトンネルの出口を指さし、



 「とりあえず外に出よう」







僕たちが負傷したマラを連れて、トンネルの外へと出た時には、すでに太陽が地平線から顔を覗かせており、明るくなってきていた。


携帯電話で時間を確認してみると、既に朝の5時を回っている。

もうそんなに時間が経ってたんだ。


ぼんやり空を眺めていると、救急車と赤と青の回転等が付いた特殊車両がぞくぞくとやってきた。

警察の特殊部隊な服装をした男たちが、ぞくぞくとトンネル内へと入っていく。


僕らは気を失っているマラを救急隊員にバトンタッチし、僕と凜はしばらくの間、病院へと向かい始めた救急車を見送っていた。



 「救急車は分かるんだけど、赤と青の回転等が付いた車は何なんだ? 警察車両 … のようには見えないようだけど」



僕がそう呟くと、凛が答えてくれた。



 「アレはねー、未確認生物や妖怪による被害が出た時にー、現場付近とかを封鎖したり、事件の後処理をする特殊部隊みたいなものなんだよー」


 「へぇ~、そうなんだ。」



そう言って、凛はくるりと僕の方へと向き直り、



 「ねぇー、祐磨ー? ちょっと予想外なことが起きたけど、祐磨の初任務達成おめでとー!」


 「凛・・・」



凛は両手をパチパチと鳴らし、拍手してくれた。


そうだな。

僕の初任務は終わったんだな。



 「ありがとな、凛」



僕は凛の手にハイタッチをした。

こうして僕の初任務が終わったのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ