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第4話 入部編④  僕の初任務

現在時刻は午後9時


端谷市の北部に位置する大丸トンネル入り口付近に、僕と凜は集まっていた。

既に辺りの日が落ち、外灯の光が漆黒の闇を照らしている。


この場所に集合した理由は、未確認生物の調査だ。

僕が超常現象調査部に入部してからの、はじめての任務である。


不安と好奇心が心の中で渦巻き合う。

そんな僕を心配してか、凜が僕の手を握りしめてきた。



 「大丈夫だよー? あたしがついてるからねー」


 「うん。ありがとう」



凜の掌の温もりが心にしみる。


あともう1人、ここに来る人物がいると聞いているのだが、この様子だとまだ来ていない様子だ。


僕達がここで、もう1人の部員が到着するのを待っていると、



 「あのぅ! お待たせしました!」



透き通った可愛らしい声が聞こえ、振り返ってみると、そこには1人の制服を着た女の子が立っていた。


銀髪ストレートの長い髪。肌は雪のように白く、瞳の色は碧色。

外国のお人形さんみたいに、綺麗な女の子だった。

そんな彼女は、体には似合わぬ大きなバッグを手にしている。



 「遅れて、すみませんでした。少し準備に時間がかかってしまって … 」


 「ううん、別にいいよー」



彼女は凜に一礼すると、今度は僕の方へと目をやり、



 「確か、新入部員の方ですよね? わたしは超常現象部 部員 2年2組の中津川マラですわ。 ちなみに日本人とフランス人とのハーフですので、よろしくお願いします」



中津川マラという女の子は、そう自己紹介をすると、スカートのすそをつかんで、丁寧にお辞儀をしてきた。

ただでさえ短いスカートを掴んでいるので、いろいろ見えそうになるのだが・・・



 「よ、よろしく。僕は2年3組の柊祐磨だよ。中津川さんって隣のクラスだったんだね」


 「あのぅ、祐磨君? わたしのことは、普通にマラって呼んで … 」


 「えっ? わかったよ、マラ」



するとマラは「はい」と頷いて、大きなバックから3つの何かを取り出した。

それを僕と凜にそれぞれ手渡してくる。


それは掌サイズの大きさで、黒色をしているモノだった。



 「これって、無線機?」


 「そう。この無線機を使って、本部と連絡を取るの。ちなみに本部っていうのは、部室にある情報収集室のことだから」



マラは無線機を配り終えると、無線機を指さしながら言った。



 「無線機のスイッチをオンにして」



言われたとおり、無線機についていたスイッチを押した瞬間



 『あーあー、マイクテスト マイクテスト。聞こえますかい?』



文崎先輩の声が聞こえた。

なるほど、これでいつでも情報収集係の文崎先輩と連絡の取れるというわけか。



 「こちら、中津川マラ。問題ありませんわ」


 「ばっちり聞こえるよー!」


 「はい、僕もちゃんと聞こえますよ」


 『うむ。よろしい。では、まず、今回あんた達が担当する任務について、大まかに説明するわね。いつもなら簡単に説明するんだけど、今回は初任務の柊もいるから、詳しく説明するわい』


 「OK」


 『まず問題の場所は、市内北部に位置する大丸トンネル。今あんた達の目

の前にあると思うけどね』



改めて僕は、トンネルの方に目をやる。


トンネルの入り口の上には、『大丸トンネル』という文字が彫られており、内は真っ暗で何も見えない。

一度中に入ったら、永遠に出てこれないと思ってしまう。

夜のトンネルは、昼間と違ってさらに不気味に見えるものだ。



 『このトンネル付近では、最近 失踪者が多く、またトンネル入り口付近にある池では自殺者が多いことでも有名。まぁ 私はこの2つには何かしらの因果関係があると推測するわい』



失踪者と自殺者というキーワード。

確か学校でも噂話を耳にしたことがあった。

あれは幽霊の仕業だ とかで一次、騒ぎになったこともあったなと思う。



 『あと、これは公には公表されていないんだけど、つい3日前に見かねた警察がこのトンネル付近を捜査したんだけど、捜査に向かったパトカー1台がそのまま戻って来なかったとか。それに、付近の民家では夜な夜な不気味な生き物を見たとかという目撃情報も入っているし、ペットが行方不明になるとかという被害もでているのよね。』


 「つまり文崎先輩は、そのすべての原因は未確認生物にあると?」


 『その可能性が極めて高い。だから調査をしてほしいのよ。調査といっても事実上は退治に近いんだけどね。』


 「退治・・・ですか?」


 『ええ、ちゃんと武器はマラちゃんと凜ちゃんが用意してくれてるから安心したまえ』



僕は横目でチラリと2人に目をやると、2人ともバックから銃とかいろいろ取り出していた。

これまた物騒なものである。



 『あと、未確認生物 or 妖怪の中には、人間に危害を加えるものもいるのよね。だから防衛省によって、危険度ランクが定められたの。人間に危害を加えないものはランク1、危害を加える恐れありはランク2、そのままランク3、ランク4、となっていき、最高がランク5 となっているわい』


 「な、なるほど。」


 『でも、無理はしないように。あんた達3人では、せいぜいランク3まで対処可能だからね。もし、危険だと判断した場合は、即座にその場から離脱し連絡すること。わかった?』


 「はい。」


 『じゃぁ、よろしい。また連絡するから。無事を祈ってるわ。』



そう告げると無線機が切れた。


そうか、いよいよ任務開始か。

何とかこの任務を達成したいと思っていると、



 「祐磨ー! はい、コレ、祐磨の分だよー。」



凜が僕の目の前に、いろいろなものを差し出してきた。


9mm拳銃が2丁、予備の弾倉マガジンが3つ、特殊閃光弾が2つ、焼夷弾が2つ、サバイバルナイフ1本、懐中電灯1つ、それにホルスターだ。


凜は既に装備を終えたようで、手にはSIG SG550のアサルトライフルを持ち、太ももに装着してある小さなホルスターには、拳銃が収まっていた。


マラの方は、手には軍用散弾銃(モスバーグM590)を持ち、腰には日本刀をぶら下げ、凜と同じく太ももに装着したホルスターには、銀色の拳銃が収まっている。


僕も差し出されたホルスターを手に取り、ズボンの上に装着して、そこに1丁の予備の拳銃を入れ、残った9mm拳銃を手に持つ。



 「祐磨ー、ごめんねー。祐磨はまだ、新入部員だから拳銃しか使っちゃいけないのー。でもそのうち使えるからねー?」


 「うん。わかってるよ」


 「じゃぁー、行こっかー」



そうして、僕・マラ・凜の3人はトンネル内へと向かったのである。







トンネル内は薄暗かった。


凜が持つアサルトライフルに装着されたライトの光と、懐中電灯の光だけが、暗い闇を照らす。

トンネル内の湿った空気が肌に感じる。


しばらく歩いていると、前方に赤い光が点滅しているのが見えてきた。



 「なぁ、あの赤い光はなんだろう?」


 「うーんー、行ってみよー。」



とりあえず近づいてみると、その正体が判明した。


車だった。


上部には赤い回転灯が付いており、白と黒の模様をした車。

そう、パトカーだった。



 「パトカー? もしかして、文崎先輩が言ってた、あのパトカーじゃないのか?」


 「たぶん、そう思うわ」



マラは赤い回転等が回ったままのパトカーに近づき、中を覗き込む。



 「でも、中には誰もいないわ。しかも、エンジンはかかったまま」



マラは懐中電灯で車内を照らしながらそう言う。



 「警官はどこに行ったんだろな」


 「恐らく … 死んだか、逃げたか。でも、何かがあったことには変わりないわね」



すると、マラはパトカーのドアを開け、中を調べ始めた。


僕は拳銃を手に持ったまま、周囲を見渡してみる。

未確認生物に襲われたにしても、周囲には血痕1滴すら見当たらない。

死体もない。

逃げたにしても、パトカーのエンジンをかけたまま、現職の警官が逃げるだろうか?


疑問に思っていたその時だった。

ペタペタッという音がトンネル内に響き始めたのだ。


とっさに凜が音源が聞こえた方向にアサルトライフルを向けると、そこに奴はいた。


身長は1.7mくらいの二足歩行型の生物だった。

手と足には水かきがあり、ヌメヌメとした緑色の皮膚、背中にはとげみたいな突起物が付いている。


まるでその容姿はカエルそのものだった。


普通カエルといえば、掌サイズくらいの大きさを思い浮かぶが、目の前のカエルは成人男性よりも大きくて、しかも二足歩行をしているのだ。


例えるならば、ポ○モンに出てくる、ガマ○ロゲみたいな様子をしている。



 「正体はカエル男だったんですね。」



そう呟きながら、マラもやってきた。



 「カエル男?」


 「そう。アメリカで出現した、カエルに似た顔とヌメヌメした皮膚を持つ怪物のことよ。分類上ではランク3に値する未確認生物ね」



カエル男という生物は、1体だけのようだった。

そのカエル男は、僕たち3人に向かって大きく口を開けてきた。

口から大量のヨダレが地面に滴り落ちる。



 「カエル男は動きが鈍いし、退治するのは結構簡単だから。じゃぁ、凜ちゃん、お願い」


 「うん!」



凜は頷くと、一気に引き金を引いた。

パパパパン!という乾いた音と共に、銃弾が大きく口を開けたカエル男の体を貫き、吹き飛んだ。



 「よしー!」



凜は嬉しそうにガッツポーズを決める。

その表情は満足そうだ。



 「とりあえず、任務はもう完了したのか … ?」

 「そだねー。たぶん」


なんかあっさりと任務が終わったな。

そう安心しかけたその時、



 「へっ?」



凜はいきなり声を上げ、首を傾げた。

何だろうと思って、凜の足元に目をやってみると、彼女の足に何かが巻き付いていた。

赤い何かで、しかもベトベトしているように見える。


次の瞬間、凜の足が引っ張られ、凜が姿勢を崩した。

地面に倒れた凜が、そのまま引きずられていく。



 「わぁああああ!? た … 助けてー! 祐磨ー!」



とっさに僕は、凜の腕を掴む。



 「凜! 離すなよ?」



凜は必死に僕の左腕にしがみついてくる。


僕は顔を上げ、凜の足に巻き付いている何かを目で追っていくと、たどった先にいたのは・・・・口を大きく開けたままのカエル男だった。

そう、凜の足に巻き付いているモノの正体は、どうやらカエル男の舌のようだった。



 「カエル男がもう1体いるぞ!」



僕がそう叫んだが、続けてマラの叫ぶ声も聞こえた。



 「1体だけじゃない。たくさんいるわ!」


 「ええっ!? ウソだろ!?」



周囲を見渡してみると、僕たち3人を囲むようにカエル男の大群がいた。

口を大きく開け、ヨダレが滴り落ちる音が響き渡っている。


僕が唖然としていると、体が引っ張られそうになった。

慌てて、両足で何とか踏ん張る。



 「祐磨ー!」



凜の叫ぶ声が聞こえる。

くそっ、このままじゃ、僕らとも・・・


そう思い、僕は9mm拳銃を巻き付いている舌に向かって撃った。


運よく弾は命中し、トンネル内に獣の絶叫が響き渡る。

同時に凜の足が解放され、勢いで僕に抱き着いてきた。



 「ううぅ、ありがとー 祐磨ー!!」


 「大丈夫か?」


 「うん、平気だよー!」



僕たち3人は改めて、銃を構える。


危険だと思ったら離脱するようにと言われたが、周囲はカエル男の大群が取り囲んでいるため、離脱できない。

しかも、ここはトンネル内だ。

応援を呼ぶにしても、電波が届くかどうか・・。

現に、無線機のボタンを押しても、文崎先輩と連絡が取れない。


 「祐磨君、凜ちゃん、ここはわたしたちでやるしかないようね」

 「そう、だねー」

 「ああ、そうみたいだな」


マラは散弾銃、凜はアサルトライフル、そして僕は9mm拳銃を構えながら大きく頷いた。


一応 未確認生物の紹介をしておきます。


◎カエル男

・出現した場所

 アメリカ、オハイオ州のリトルマイアミ川付近

・特徴

カエルに似た顔とヌメヌメした皮膚を持つ怪物。

背中にとげ状の突起があり、体長は約1.2メートルで2足歩行をし、手足に水かきがあるとする目撃者もいる。

・正体

カエル男の正体については「未発見の両生類説」「河童説」「エイリアン・アニマル説」等があげられているが、その正体は謎のままである・・・。


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