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アメリカ合衆国 フロリダ州 パトリック空軍基地


時刻はアメリカ東部標準時間にて午後11時過ぎのこと。

基地内に突然けたたましい警報音が鳴り響き始めた。


管制本部にいた1人のレーダー管制官が本部へ連絡をする。



 「未確認飛行物体が基地に接近中! 緊急配備を願います!」



連絡を受けた本部は、基地内にいる全部隊に緊急配備を命令した。

銃を持った兵士たちが一斉に敷地内に広がる。



 「状況は?」


 『先ほどから何度も呼びかけていますが、反応はありません』


 「未確認飛行物体の正体は?」


 『ヘリを近づけて確認させましたが、それが何であるかは不明でした』


 「不明だと!?」



直後、兵士たちがざわつき始めた。

現在は夜のため、空は真っ暗である。


しかし、その空にひときわ大きな発光体が浮かんでいた。

しかも徐々にこちらへ近づいて来ている様子。



 「何だ … あれは … ?」



全員が唖然としている中、その謎の発光体が基地の敷地内に侵入してきた。

速度は徐々に減速し、その未確認飛行物体はゆっくりと滑走路に着陸する。


目をよく凝らしてみるが、目を開けられないほど発光しているため、それが何かは分からない。

大きさは戦闘機と同じくらいだが、少なくとも、ヘリや戦闘機ではないのは確かだろう。

ヘリや戦闘機はこんなにも発光はしないハズ。


兵士たちは一斉に銃を構える。



 「待て! まだ撃つな!」



次の瞬間、ゴンッ! という音と共に発光体から何かが降りてきた。


小柄なシルエットが映し出される。

見た限り、シルエットの形は人型である。


兵士らは銃を構えながら震える。



 「私の指示があるまで絶対に撃つな!」



そして、その正体が次第に露わになってきた。

それは女の子だった。


身長は小柄。

彼女の肩まで伸びた髪が、風に流され、ヒラヒラ揺らめいている。


その光景を見て兵士たちは唖然とした。

なぜこんな飛行物体から少女が降りてきたのか?


対してその謎の少女は、自分を取り囲んでいる兵士たちを見回して、首を傾げた。



 「ここはドコ? アタシはダレ?」







東京都 渋谷区上空を2機のヘリコプターが飛行していた。


見た目は2つの回転翼が左右についている、言わばオスプレイみたいな構造をしているヘリである。


そのヘリの中には、防衛省 超常現象捜査本部 超常現象調査特殊部隊(SPIC部隊)の隊員らが乗り込んでいた。

全員 完全武装を施しており、準備万全だ。


そしてその中に、倉梨葵もいた。

彼女は元陸上自衛隊員だったのだが、その身体能力をスカウトされ、SPIC部隊の関東管区支部局副隊長に任命されたのである。


白い肌と赤い瞳が印象的な彼女は、窓の外を見つめながら、隊長である瀬楽の説明を聞いていた。



 「これより、作戦任務の説明をする。首都高速4号線 西新宿JTC付近にて、ランク4の未確認生物が出現した模様。高速はすべて封鎖完了済み。我々が到着するまで、付近の高等学校の超常現象部部員が応戦中とのことだ。いつでも降下できるように準備をしておけ」



倉梨葵は降下のためのロープの確認をする。

異常はなしだ。


やがて窓の外から赤い炎と黒煙が上がっている光景が目に入ってきた。



 「よし、目標地点に到達。これより、作戦任務に入る」



ヘリの後方にある扉が大きく開き始めた。

隊長の合図をきっかけに、特殊部隊の隊員らが地上に向かって降下していく。


葵も息を整えると、地上に向かってダイブした。

空気抵抗を受け、彼女のポニーテールの髪が大きく揺れる。


うまく地面に降下した葵はロープを外し、ライフル銃の安全装置を解除。

前方を素早く見渡す。

こに見えた光景に、葵は思わず息をのんだ。



車両7台が絡むようにしてメチャクチャにひしゃげており、炎上していた。

パっと見た感じでは、普通のただの事故のようにも見える光景だ。

しかし、よく見れば異変に気が付く。


一部の車両が、まるで怪獣に踏みつぶされたのごとく、スクラップ状に変形しているのである。


そしてその近くでは、人らしき人物が倒れているのも見て取れる。


葵は急いで彼ら駆け寄ってみると、倒れていたのは血まみれの少年少女4人だった。

全員制服姿で、なおかつ胸に特殊バッジをつけていることから、超常現象部の部員だろう。


葵は彼らの息を確かめる。

4人の少年少女のうち、3人の姿を一目見た瞬間に、絶命しているとはっきりわかった。

首から上が原型をとどめていなかったからだ。


だが、1人だけ少女の手がわずかに震えていた。

彼女はまだ生きている。



 「隊長、負傷者を発見! 至急、救急車の手配をお願いします! 」



葵がそう叫ぶと、隊長の瀬楽が駆けつけてきた。



 「既に手配している。それより … 超常現象部が壊滅するとは、一体相手は何者なんだ?」


 「何でしょうね … 」



しばらくすると、別の隊員が報告しにやってきた。



 「付近を捜索した結果、未確認生物の姿は見当たりませんでした。恐らく、逃げられたかと」


 「うむ。了解した。では、部隊を消火撤去処理・目撃者の対応・逃げられたUMAの情報収集の3つに分けて行動せよ」



部隊たちに命令した後、瀬楽は葵に向き直り、



 「倉梨副隊長は、救急車が到着するまで、その負傷者からできるだけ何があったのか尋ねておいてくれ」



そう言って瀬楽は、首都高速に着陸し始めたヘリに向かって歩いて行った。

残った葵は、地面で血まみれで倒れている少女に優しく語りかける。



 「ねぇ、何があったのか、教えてくれるかな? 無理はしなくてもいいから。言いたくなければ話さなくても構わないよ?」



そう尋ねると、少女は弱々しくながらも口を開いた。

小言ながらも、彼女は目をいっぱいに見開きながら、何かうわ言のようにつ呟いていた。



 「バケ........モ.........ノ...........つ.........ば........さ.........」


 「翼? 翼が生えていたの? 」



少女は首を縦に振ったあと、そのまま気絶してしまった。


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