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第17話 魔王編②  端谷試験場


「深堀先輩、凜先輩、お待ちしていました!」



防衛省技術研究本部 端谷試験場の入り口の門をくぐり終えたときに、突然そう声をかけてきたのは、1人の少女だった。


髪は茶色で、長さは肩ぐらいまで。

それに髪の右側をリボンでくくった、いわゆるサイドテールという髪型であある。背は小さく、可愛らしい女の子だ。


でも、どこかで見覚えがあるような気がしたのは、気のせいだろうか?

そんな彼女は元気よく挨拶をしてきた。



 「こんにちは! パパに言われて、お迎えに来ました! あたしは端谷学園高等学校1年2組 水瀬みなせ桃華ももかです! モモって呼んでね!」


 「モモ、いつも出迎えありがとう」



深堀部長は笑顔でそう答える。



 「いえいえ、深堀先輩。今回は文崎先輩は一緒じゃないんだね」


 「あいつは忙しいからな。代わりに後輩を連れてきた」


 「へぇ~、後ろにいる女の子は、凜先輩でしょ? っで、その隣の男の子は … 」



水瀬桃華という女子は、僕の顔を見つめ、一瞬固まった。


すると何を思ったのか、その女子は僕に近づいてきて、顔をジロジロと眺めてきたのである。


そんな彼女に対し、深堀部長は答える。



 「ああ、俺の後輩 2年の柊祐磨だ。今年の4月に入部してきたばかりだから、初対面だと思うが」



しかし、その水瀬桃華は、僕の名前を聞いた瞬間、あああーーー! と声を上げた。



 「思い出した! あたしのこと覚えてる? ほら、中学の時 同じ部活だったんだけど」



中学の時?

ここでようやく僕は思い出した。


さっき彼女は、水瀬桃華と自己紹介をした。

中学時代の射撃部で、水瀬桃華という名前の後輩は確かにいた。

当時の部活内でちょっぴりした人気者だったからだ。


中学時代の彼女は、全国ジュニアビームライフル射撃大会で、中学女子個人戦で第3位になったことがあるから。



 「モモ、久しぶりだね。中学の時と髪型が変わってたから、分からなかったよ」


 「えへへ だってあたし背が小さいから、ツインテールだと小学生に間違われるんだもん。だからサイドテールにしたの」



僕たちのやり取りを不思議そうに見つめていた部長は、「なるほど」 と呟いた。



 「2人は知り合いだったのか」


 「うん! じゃぁ、深堀先輩、凜先輩、祐磨先輩、どうぞこちらです!」







桃華に案内されてやってきたのは、施設建物内にあるとあるフロアだった。


フロアのいたるところで、大勢の人間が慌ただしく動いており、機械製品でなどが溢れている。

中には見たこともない機械や製品やらもあった。


それらを桃華が説明してくれる。



 「あれは放射能可視化防護服。あれを着ると、放射能を目で確認できる防護服なんだぁ。パパが開発したんだよ」


 「へぇー、モモのパパさんはすごいねー」



凜が興味津々の目で周りにある機械やモノに食いついている。

まぁ、桃華のお父さんは確かにすごい人なんだろうな。



 「あっ! パパが見えた!」



桃華の視線の先を辿ってみると、そこには2人の男がいた。


見た目が40代に見える作業服を着た男の人が、アロハ服を着た若い金髪トンガリ頭の男の人に向かって、何か怒っている場面のようにも見える。



 「違う! トランジスタの位置が違っているぞ。設計図をしっかり確認しろ」


 「分かってますって」



何やら作業中のようである。


そこへ桃華が 「パパ!」 と声をかけると、作業服を着た40代の男の方が振り向き、スマイル笑顔になって近づいてきた。



 「おやおや、お待ちしていましたよ」


 「いつも武器提供ありがとうございます。おかげで助かっていますよ」



深堀部長が頭を下げたので、僕と凜も慌てて頭を下げる。


だがその男の人は、「頭を上げたまえ」 と言い、僕に向かって近づいてきた。



 「君は初対面だな。ワシは防衛省技術研究本部 技術開発官特殊武器担当の水瀬みなせ嘉寿夫かずおだ」


 「あっ … 僕は … 」



僕も自己紹介をしようとしたところで、それを水瀬嘉寿夫という男が制する。



 「いやいや、君のことは娘から聞いているよ。柊祐磨君だね? 中学時代は娘と同じ射撃部だったんだってな。娘の桃華が毎日のように君の話をしていたよ」


 「パパ! それは言わないでって言ったのに!」


 「いいじゃないか」


 「あの、水瀬さん。そろそろ俺も、自己紹介くらいさせてもらってもいいっスか?」



そこへ金髪トンガリ頭の若い男も、申し訳なさそうに近寄ってきた。

水瀬さんはその男を見るやいなや、呆れた顔をする。



 「じゃぁ、さっさとやれ」


 「オレは比倉ひくら正爾しょうじっス。水瀬さんの助手をやっている大学院生っすよ。よろしくっス!」



やたら っスが多いですね … 。


すると助手と名乗った比倉さんが、一度席を外し、何かを持って帰ってきた。


それは台車みたいなものの上に、布で覆われているものである。

布の下に何かがあるらしい。


それを見た水瀬さんは、うむ とうなづき、僕たち3人に向かって手招きをした。



 「例の発注品完成したよ。今度の任務は巨大蜘蛛退治と、文崎さんから聞いてな。特別に開発した武器だ。見たまえ!」



そう言うと、水瀬さんは助手が持ってきた台車の上にかけてあった布を摘み上げた。


中から出てきたのは、3つの黒い銃みたいなものだった。


見た目は普通のアサルトライフルに似ている。

だが見た目が大きく、よく見てみると見たことがない形をしている。


水瀬さんが手に持ってもいいぞ と言ってくれたので、実際に手にしてみることにした。


何か普通のライフル銃とは違って、その大きさ、そしてゴツゴツした印象だったので、結構重いのかと思ったが、案外軽かった。

小柄な凜でも何とか持っている。


この大きなライフル銃を興味深く観察していた部長が、水瀬さんに尋ねた。



 「水瀬さん、説明をお願いします。」


 「もちろん。この銃はもともとM4A1というアサルトライフルを改良したものなんだ。いろいろと機能を追加していくうちに、大きくなってしまったもんでね。でも女の子でも使えるくらいに重さは軽減しておいたよ。いろいろと軽い素材を使用したからな」


 「どういう機能がついているんですか?」


 「マルチタイプ機能式M4A1ライフル銃。この銃1丁で、さまざまな銃に変身できるのだよ」



水瀬さんはこの銃をまるで我が子のように見つめてそう言った。



 「弾倉(マガジン)を交換してモード変更さえすれば簡単さ。ガスボンベ式弾倉を挿入すれば火炎放射器、特殊発電式弾倉を挿入したら電気銃、害虫スプレー式弾倉を挿入したら昆虫タイプ型UMA対策の銃、などいろいろなことに使える夢のマルチタイプなライフル銃さ。もちろん、実弾入り弾倉を挿入すれば、普通のライフル銃としても使えるぞ」


 「す、凄い銃ですね」


 「そうだろう? ちなみに普通の銃は、1つの弾倉しか装着できないが、この銃なら3つまでの弾倉を装着できる。ガスボンベ式弾倉・実弾入り弾倉・擲弾入り特殊弾倉の3つを装着すれば、モード変換のレバーを変えるだけで、火炎放射器・ライフル銃・グレネードガンに早変わりだ」



水瀬さんの説明を聞き、深堀先輩が感心したように頷いている。

確かにこの銃だけでいろいろな銃に変身できることはすごいと思う。


一方、凜だけは首を傾げていた。


そこへ金髪トンガリ頭の比倉さんが、何かを思い出したかのように立ち上がった。



 「水瀬さん、アレは見せなくてもいいんすか? 新開発した例の薬のことッス」


 「あれか。確かにアレは一応 完成しているが、試作段階だから見せてもいいものか … 」


 「いいじゃないッスか」


 

しばらくの間、考え込んでいた水瀬さんであったが、



 「まぁ、いいだろう。比倉君、この子達にアレを見せてあげたまえ」


 「へい」



そう言って比倉さんが取り出してきたのは、小さなカプセル状の粒だった。

よく薬で見かけるアレだ。


深堀部長がそれを見て、興味あり気な表情になる。



 「それは?」


 「これは殺生石入りのカプセル状の薬だ。殺生石といっても、粉末状にして、水に溶かしたものだがな」



殺生石だと?


確か僕と凜がモスマンに襲われたとき、助けてくれた九尾の狐の子孫である倉梨狐美という女子高生が、殺生石のペンダントを持っていたよな。


その殺生石で、重傷を負って死にそうだった僕を助けてくれたものだ。

倉梨曰く、殺生石には不思議なエネルギーが宿っており、細胞を活性化させる力があるらしい。


驚愕を浮かべる僕たちを見て、水瀬さんは笑う。



 「すごいだろう? このカプセル状の殺生石入りカプセルを飲めば、重傷を負って死の瀬戸際を迎えても、一瞬で傷口が塞がるハズだ。ただし、まだ試したことはないのだが … 」



だが、深堀部長は身を乗り出し、そのカプセルを指出してこう言った。



 「水瀬さん、それを今度の任務で使わせてください。その任務で、万が一重傷を負っても、これを飲んで傷が治れば、大丈夫だってことが証明されますから」


 「だが … 何が起こるか分からんぞ? 粉末状にしてほんの少し1粒を入れただけだから、効果があるかどうかすら分からんし、それに副作用もあるかもしれん。相当危険だが?」


 「それでも構いません。使わせてください」


 「そこまで言うのなら仕方ないだろう。今度の任務は、手強そうだと聞いている。無事に帰ってくるんだぞ」



深堀部長は深々とお辞儀をした。


すると今までおとなしくしていた桃華が、僕に近づいてきてこう言ってきた。


 「祐磨先輩、今度の任務がんばってくださいね!」


 「ありがとう。任務がんばるよ」







とある土曜日の深夜0時


僕たち超常現象部は、市内西部に位置するとある研究所前に集合していた。

この研究所は確か、数年前から事実上廃墟と化している。


今回、僕たち超常現象部の任務内容は、巨大蜘蛛を退治することらしい。

集まったのは、僕・凜・麻里・マラ・深堀部長・浅井先輩の計6人だ。


 

 「みんな、今回の任務内容は巨大蜘蛛退治だ。普通の銃では効果がないと思うから、これから配る銃を使用するように」



深堀部長はそう言いながら、昨日調達した特殊な改造ライフル銃をみんなへ配り始める。

僕も当然それを受け取った。



 「この銃はマルチタイプ機能式M4A1ライフル銃というものだ。特注品だから大事に使用すること」


 「部長、弾倉を入れるところが3つあるよ?」



麻里の質問に対し、部長は答える。



 「そうだ。スイッチの切り替えだけで3種類の銃に早変わりできる。今回の相手は巨大蜘蛛だから、弾倉はガスボンベ式弾倉・害虫スプレー式弾倉・実弾入り弾倉の3種類の弾倉を使用した方がいい」


 「はーい」


 「今回は研究所建物が大きいため、2人1組のペアで行動してもらう。俺と剛一ペアは正面入り口から、マラ・麻里ペアは東側出入りドアから、祐磨・凜ペアは北側にある裏口から突入しろ」



それを聞いた麻里はなぜかしょんぼりとした。



 「ええー、あたし、祐磨君と一緒のペアがよかったなぁ」


 「麻里ちゃん、きっと今度の任務で一緒になれますわ」


 「おお! マラちゃんありがとう! 任務頑張ろうね!」



そのまま麻里は、マラの腕にしがみつきながら、突入口へと向かっていった。

そんな2人を眺めていたら、横にいた凜がニコニコ笑顔で僕を見つめてきた。



 「祐磨ー、あたしたちもガンバローねー!」


 「う、うん!」



凜の笑顔が引きつっていたのは、気のせいだろうか?


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