表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂塵りのケーナ  作者: 束間由一
第二章:愛の輝き
98/119

醜鬼襲来


 魔物達との苦戦を続け、地下15階まで辿り着いたレイル達。

 そこにいたものとは……



 「こ、こいつらは……」


 

 2人は、その階を探索していたところ、何かに囲まれてしまった。

 それは人型で、体は深緑色。大きな巨躯(きょく)を覆う分厚い脂肪は重力に負けて垂れ下がり、その上には醜悪かつ凶悪そうな顔が乗っかっている。



 「ブロトロンだよ!」剣を構えながらケーナが言った。

 「トロルの上位種だ! こいつらは、今までの魔物より厄介だよ!」


 「どうしてさ」


 「こいつらは、冥術に耐性があるんだ。炎や氷の冥術には特に強いって聞くよ」


 「そうなんだ……どうしよう、僕の冥術で何とかなるかな?」


 「何とかするしかないよ……力を温存したい気持ちはあると思うけど、出し惜しみしたらここで死んじゃう!」


 「わかった! 全力で行くよ!」



 ブロトロンの一匹が、レイル達との距離が一定まで近づくと、遂にその拳で一斉に殴りかかってきた。ケーナとレイルは二手に分かれてそれをかわす。当たれば、おそらく骨が粉砕するだろうだろう威力を示すように、ブンと言う風切り音が2人の肝を冷やす。ブロトロンはその一撃が終わると、その狙いをケーナの方に定めた。動きこそ遅いが、周囲を他のブロトロンに囲まれているため、彼女はうまく距離を放す事が出来ない。他のブロトロンが攻撃姿勢を取らないのは、彼等にとってレイル達はただの小さな獲物であり、ただ面白がって暫く高見の見物を気取るつもりなのだろう。彼等は、見た目に違わず、知能はそれほど高くないのだ。ケーナ達の小さい体に宿る実力など推し量る様子など無かった。



 「何とかしないと……ケーナが危ない!」



 レイルは、ケーナを助けるため <電槍(バルスランチャー)>を放つ!

 雷光の矢がブロトロンをかすめるが、ケーナが言うだけのことはあり、蚊が刺した様な効果しか与える事が出来なかった。悪鬼は太い手で、頭の辺りを何かあったかなと言うように気にする。しかし、注意を引くのには十分だった。



 「グォォォォォォ!」ブロトロンが怒りの雄叫びをあげ、レイルに殴りかかる!


 「くっ! 動きが遅いのなら、あの冥術を使ってみよう…………我が歩み飛鳥の如く! <俊速法(ダブルクリック)>!」



 レイルの足が光り出した。すると、彼の走るスピードが3倍になる!

 韋駄天の速さになった彼は、その動きでオークの目を撹乱すると、背後に回り込む。



 「次は……我が術法よ快く閃け! <詠唱時短(エンディミスソーン)>!」



 レイルの足元に魔法陣の様な文様が浮かぶ。これは、冥術の詠唱時間を短くする効果をもつ補助冥術だ。これを利用し、すぐさまレイルは次の冥術を使う。



 「これなら……<神電槍(パルスバルシオン)>!」



 それは、初めて使う高等冥術だった。

 しかし、今のレイルはそれを使いこなすだけの器がすでにあり、凄まじい電光が竜のような形をとってブロトロンを直撃する!



 「ギャァァァァァァ!」



 バシンと言う光と共に、その巨躯は黒焦げになり、その場にドシンと頭から崩れ落ちた。

 それに、ケーナが剣でトドメをさすと、上の階の魔物のようにブロトロンは灰になって地面の砂に(まみ)れた。



 「やった……」



 レイルは、ひとまず一匹倒してホッとしたが、安心できる状況では全く無かった。

 寧ろ危険。この一匹が倒された事により、他のブロトロンが一斉に攻撃態勢に入ったのだ。強いと分かるなり束になってかかる辺り、酷い性格をしているものである。2人の少年と少女を囲ったまま、じわじわと、甚振(いたぶ)るように、その距離を詰めていく。頭が良くない彼らだが、この包囲網はなかなか上手いやり口だ。



 「うわ……」ケーナの顔から汗がこぼれ落ちる。


 「多いね……これだけ、まとまってこられると。逃げ場が無いよ」


 


 レイルとケーナは、互いに背中を合わせて、これからの事を必死に考える。

 しかし、敵は眼前に迫っていた。そして、その一匹が襲いかかる!



 ガシッ!



 2人は、身をかわそうとした。

 しかし、目の前のそれは、予想外の動きを見せていた。何と、他のブロトロンの一匹がレイル達の盾になり、同じブロトロンの攻撃を受けとめて殴り倒したのだ!




 レイルとケーナは、何が起こったのかわからず、その場で暫し唖然とする。


  









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ