合成魔獣は竜頭蛇尾?
ダモロクロスの要塞に侵入したレイルとケーナ。
最初のうちは大したモンスターも現れず順調だったが。
「地下にこんな空間が広がっているなんて……」
階段を下りたレイル達の前に現れたのは、茶褐色の天井と壁を持つ洞窟の様な空間だった。ここでの階よりも、また更に広い。壁に電燈の様なものがあるが、光を灯してはいなかった。古代の人々は、これを人工的に作ったのだとしたらすごいものだとレイルは思った。しかしそうやって感心している余裕はあまりない。何と目の前に今までに見たことのない異形の魔物がわらわらと現れたのだ!
竜の頭に蛇のしっぽを持った魔物、ふたつの頭を持つライオンの様な魔物、足のあるサメの様な魔物、カマキリの化け物など、どれも上の階にはいないあきらかに凶暴で強そうな雰囲気を持っていた。今まで強力なモンスターを倒してきたレイルでも、これには驚きを隠せない。過去の遺産であろう魔物達は、明らかに2人を捕食する気満々の眼差しをしていた。
「うわわっ! ど……どうしよう、ケーナ!? 上の階に逃げる?」
「ううん」勇敢なケーナは首を振った。
「これも、試練のうちだと思うよ。何とか倒そうよ? そうしないと前には進めないし、大事な時間を無駄にしちゃう」
「でも、多くない?」
「冥術があるじゃない! 確かに数は多いけど、地の利を生かせば何とかなるよ」
「……わかった。やってみよう!」
レイルは、まず得意の氷の冥術を使うことにした。足止めには有効だからだ。
その場で、少年は、急いで詠唱をする。
「抗うものよ、凍てつけ! <氷結縛衝>!」
ギリギリギリと言う音と共に、魔物の立つ地面が凍って隆起をはじめ、彼等に絡みつく。
以前、サメに使った時と比べると、水上ではない分効果は薄いが、ひとまず望んだ効果は得られた……はずだった。
ゴォォォォォ!
何と、ライオン上状の双頭の魔物が、炎を吐いて自らにこびり付く氷を一瞬にして溶かしたではないか! 他と比べて、この魔物はひときわ厄介な存在のようだった。ただ、幸いにも、他のモンスター達を気遣う事は無く、この一体を除いては動きを止める事が出来た。
「あの魔物、火を吐くのか……しかも、炎に耐性があるみたいだ」
「でも、一匹になったよ! これなら、何とかなる!」
「そうだね、ケーナ。他が動けるようになる前に急いで倒そう!」
「うん」
2人は、ノエリーから、こういった合成魔獣の弱点は聞いていた。彼等は電撃系の冥術に弱い。
レイルも、そこそこはその系統の冥術も取得していた。
「よし……貫け、駆ける雷光の裂矢! <電槍>!」
レイルの手から光の光線が、ジグザグと目の前に在る魔物に向い、貫き、周囲が閃光で煌く。
直撃を受けた双頭の魔獣は、大きな咆哮と共にその場に崩れ落ちた。
「よし! とどめっ!」
ケーナが、魔物に近づき、バッサリとその長い首を切り落とすと、頭を無くした魔物は灰になって消え去った。
「……ふう、やったね!」
「よし、先を急ごう」
2人は、氷漬けの魔物にも念のためとどめを刺し、洞窟の奥へと足を進めた。
「歩みの種」への道は長い。先へ先へ進むほど、彼等には強力な魔物が襲いかかったが、レイルの冥術とケーナの剣技で、苦しいながらも乗り越えて行く。
そして、地下15階に辿り着いた時、2人はあるものに出会うのだった。