2人ならできる
最期の試練はダモロクロスの要塞にある「歩みの種」を手に入れ、更にそれを成長させて持ってくること。期限はわずか一週間。
「なるほど、そら大変だわ」
「やっぱり、そうだよね」
学者のノエリーは、うんうんと頷く。
デルアラス国内でも有数の知識人である彼女は、今までも度々レイル達の力になってきた。今回も例外ではない。
「あはは、さすが最期の試練ってところだね!」
「そ、そんなに、大変なの?」レイルは心配そうに聞く。
「ワイバーンとか、モンスターがうじゃうじゃいるよ。王家の墓みたいに大きな罠は無いんだけど、広いし深いし、過酷さはずっと上だね。しかも『歩みの種』はその最深部にある木になっている」
「そっか……」
「しかも、その実を実質数日で実のなる木にしなきゃならないってんだからね……まったく、先人は無茶な試練を考えるもんだよ」
「できるかな?」
「うーん…天とは言え、絶対に出来ないような試練だったら意味無いからね。ちゃーんと何とかする方法はあるはずだよ」
「そうだよね。何か方法はあるはずだよね!」
「そうそう、その意気だよ。今までの試練を乗り越えてきた、あんたたちなら出来るはずさ!」
ノエリーの言葉に、レイルは元気づけられた。
そうだ、僕達は何とかしてきたのだと。
「それで」ケーナが机に寄りかかりながら言う。
「ノエリーとしては、これからどうすればいいと思うの?」
「ええとね……まあ、とりあえずササッと種を採ってきなよ。その間に、私が一肌脱いであげるからさ」
「わかった、アテにしてるよ!」
「まかせなさーい。私がデルアラス最高の情報ツウってトコを見せてあげましょう!」
ケーナとノエリーは、拳を合わせて、お互いの健闘を祈る。
2人とも、レイルの為に頑張る気満々だった。
「ありがとう……2人とも」
「いまさら感謝なんて水くさいよ、レイル」ケーナは、何だか恥ずかしそうにする。
「私達、もうそんな間柄じゃないじゃん?」
「そうだけど……」
「それに、今まで乗り越えてこれたのはレイルの力もあってこそなんだから! あと一息だし、一緒に頑張ろうよ!」
「うん!」
少年と少女の絆を間近で見て、ノエリーは、正直羨ましいと思った。
そして、そう言う絆を築く機会のほとんどを放棄してきた自分について、ちょっと後悔の念を覚えたた。
その晩、レイル達は急いで支度を整え、翌日陽の登る前にデルアラスを出た。
砂漠は、今日も砂埃を巻き上げて、砂漠馬にまたがる彼等を祝福した。