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砂塵りのケーナ  作者: 束間由一
第二章:愛の輝き
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砂漠の害虫


 デルアラスでは珍しい雨の日。

 ケーナが持ってきた情報は……



 「えっ!?」ファリーダが驚きの声を上げる。

 「噂では聞いたことあるけど。まだ生息していたんだねぇ」


 「そうなのよ」ケーナは椅子に腰かけると、ぐーっと猫のように背伸びをした。

 「薬草取りに行った連中が襲われて、大変だったんだって。王宮でも今はその話で持ちきりだよ」


 「そうなのかい。それで、もしかして今日は、その<サンドディシマ>の退治に行こうってつもりなんじゃないだろうね」


 「そのとおりだけど」



 ファリーダが呆れた顔をしているところへレイルはあのさと口を挟んだ。 



 「そのサンド何とかって、魔物なの?」


 「うん、そうだよ」ケーナは頷く。

 「昔はこの辺に良く出て、人を喰らった事も良くあったアリジゴク見たいな凶暴な奴さ。知能も高くて、地形を利用して砂漠を歩く者の動きを封じて狩るんだ。もう5年くらい前に国で大規模な駆除活動をしたから、もう絶滅したと思ってたんだけど、また出現したから、みんな大騒ぎなんだよ」


 「それを、今から退治しに行くって言うの? 他の人に任せた方が良いんじゃない」


 「あのねぇ」ケーナはほっぺを膨らませた。

 「<サンドディキシマ>は一体とは限らないの。今でも国の兵士たちが動いてるけど、対応しきれるかわからないわ。冥術使いもそれほど沢山いるわけじゃないし、レイルや私の力もあったほうがもしもの時に役に立つはずだよ。」


 「でも……」


 「それに、あの魔物は雨が苦手らしいの。今日は討伐するのに最高のチャンスなんだよ? レイルが行かなくても私は行くつもりだから」


 「ケーナ……」



 レイルは、弱ったなと言う顔はしていたが、答えは決まっていた。

 ケーナが行くと言うのなら、どんな危険な事でもレイルは行くつもりだったのだ。冥術の試験をこなしていく上で強固なものとなった絆は、少女を1人で魔物のところにいかせるような真似をするはずもなかった。



 「しょうがないな。わかった、一緒に行こう!」


 「さすがレイル! ……それじゃあ、早速現地に向うから、準備して。雨避けはファリーダが持ってるから」


 

 ファリーダは、人使いが荒いなと思いつつも、奥の部屋に歩いて行き、黒色のレインコートをレイルに手渡した。サイズはぴったりだった。



 「あんまり無理はしないでね。レイル」


 「ありがとう、ファリーダ。大丈夫だよ、ちゃんとケーナを連れて戻ってくるから」 


 「随分、逞しくなったねぇ……よし、晩飯までには帰ってくるんだよ!」


 「うん」



 どしゃぶりになった雨の中、ケーナとレイルは馬を走らせて、デルアラスの外に向かった。

 2人の体では大粒の雨が弾け、白いしぶきを上げて辺りを虚ろにした。

 








 


 


 

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