ケーナの斡旋
ケーナは、試練の間のレイルを住まわせてくれる処を探す役目を負う。
「よしよし、では明日試練についての説明をしよう。今日はゆっくり休め。……と、言ってはみたのじゃが、お主は寝床のあてはあるか? 生憎じゃが、この神殿は部屋が少なくてお主を住まわせる所が無いんじゃ。」
つっぽりと旅に出されたレイルに、試練の間住ませてもらえるようなあて等無かった。
しかし、彼には助け船がすぐ傍にいた。ケーナだ。
「そのことなら任せてよ! 私が何とかしたげる。多分、あそこなら大丈夫だと思うから。」
「ほう、流石はケーナじゃな。よし、この少年の事お前に任せた。」
ケーナは、任せたと言ってえっへん胸を張った。そしてすぐにレイルを引っ張って、神殿の外に出ていき、再び馬にまたがると商業地の方へ再び走った。目的は、食事である。
わかっていたとでも言うように、レイルが食べたいと思っていた屋台に向かい、スライスした肉片をケーナは買ってあげた。お金もケーナが払った。他にも色々な食べ物と、フルーツジュースを買って、建物の下にあった腰かけに座る。
「ありがとう。 これ、食べたかったんだ!」
「おおっ、よっぽどお腹空いてたんだね。良い返事だ! その料理はドーネルスローフって言うんだ。この辺の名物だよ。」
空腹耐えきれず、レイルは肉を一切れつまむと口に入れる。
賑やかな肉汁と様々なスパイスから醸し出される旨みが新鮮かつ美味であった。
おもわず、顔がほころんでしまった。
「レイルったら、よっぽど美味しいんだねぇ。見ているだけでわかるよ。」
「むぐむぐ。」
「あんま焦って蒸し返さないようにね。 それで、レイルを泊めてくれる人の事なんだけど。」
「むぐ?」
「とってもいい人だから安心していいよ。」
「むぐぐ!」
「あ、やっぱり喉に詰まらせた!」
ケーナに背中をさすられて、もう少しで咳き込みそうだったところをレイルは何とか免れた。