真意は蒼空に消ゆ
森を探しても犯人は見つからなかった。
しかし、レイルとケーナはお互いの事を知り、更に歩み寄った。
「よかったね! 犯人が捕まって。これで、表も安心して歩けるってものさ」
今朝の新聞の見出しは、「殺人犯逮捕! 商業区でまさかの潜伏!」と書いてあった。
レイル達が探索を諦めたその夜に、その犯人は軍の兵士達によって捕獲され城に送られていた。ノエリーの予想通り、使用禁止の<禁経>を取得していたが、スパイでは無く、自称「反国家分子」と名乗っているらしい。犯行は素直に認めたようだ。
「そうだね。本当に良かった。でも、どうやって犯人を割り出したんだろう?」
「そこに書いてあるでしょ?」ファリーダは紙面をちょいちょいと指差す。
「ええと……書いてないよ?」
「ううん、でも何か証拠が出てたたんじゃないの? それを手がかりに探した結果見つかったんだよ……多分」
「そうなのかな」
「まあ、直に分かってくるさ。」
バタン!
玄関の扉を開ける音が2人に耳に聞こえた。今日もケーナがやって来たのだ。
「おはよ! レイル、新聞見た?」
「見てるよ、ケーナ。見つかって良かったね」
「うん、ノエリーはもういないっていたけど、いたじゃないの!? まったく、アテになるんだかならないんだかわからないよね? ノエリーの推理って」
「まあ……だけど、この人が犯人と決まったわけじゃないかもね。本人は認めてるだけだけど、共謀者とかいるかもしれないし」
「へぇ、レイルなかなか冴えた事言うじゃん。確かにそうだね、この事件このまま終わらすのはちょっと問題ありそうだね。反国家分子とか言ってるしさ」
ケーナは腰に手を当ててうんうんと納得したような仕草をした。
レイルもそれにつられて頷いた。
「まあ、ともかく外に出ても良くなったわけだし。今日もどこかに遊びに行こうか! 外の天気も最高だしね?」
「うん!」
褐色の肌を持つファリーダは、いつものように元気そうな2人を見て優しく微笑むと、気をつけていってらっしゃいと見送った。2人はいつものように砂漠馬サンドラブに乗り、商業区目指して走り去る。
家の玄関で手を振るファリーダに砂漠の乾いた砂が吹き付ける。
彼女は砂が入らないように目を瞑った。
ごぅと言う風の音が何かを言っているように聞こえた。
爽やかでもあり、不穏でもある風の声。
しかし、ファリーダはそのメッセージを聞きとる事は出来なかった。
デルアラスの風が伝える言葉はただ砂塵と共に舞い上がり、青空に消えて行った。