森は2人を和ませる
<ガレフ庭園>は小規模な森林地帯だった。
ケーナとレイルは、犯人を捜しにこの森に侵入する。
森の中は、一面緑に包まれていた。
木々の合間から差す光は優しく2人を照らす。
砂漠と町の乾いた色ばかり見てきたレイルにもケーナにもその風景は新鮮に映った。みずみずしい空気の変化も感じ取れた。
「何だか不思議だね……砂漠の中でここだけ、こんなに草木が生い茂ってるなんて」
「まったくよ。下にオアシスでも通ってるのかなぁ? あるいは、噂に聞く通り<禁経>のせいなのかも」
「でも、こんな風に自然をあふれさせる<禁経>だったらあんまり悪い気はしないな。砂漠の中にこういう場所も必要だと思うし」
「そーだね。……あっ?」
綺麗に作られた土の道を、何かが横切った。
早すぎてレイルはその姿を捉え損ねた。
「犯人……かな?」
「違うわよ、レイル。アレは多分ただのリスよ」
「リス? 砂漠にリスがいるなんて予想外だなぁ」
「猿とか、貴重な野鳥もいるんだよ? なかなか良い森だと思わない?」
「そうだね」
森の中を歩いていると、レイルは何だか気が落ち着くような気がした。砂漠の町の活気も良いけれど、たまにはこういう森林浴も良い。犯人探しの事も忘れてしまいそうになるほど柔らかな場所だ。大きく深呼吸をすると体の中が透き通るようだ。
「気持ちいいなぁ。何だか清々しい気持ちになるよ」
「それはよかった! ここに来て正解だったね」
「え? それって……どういうこと?」
「犯人探しもあったけど、ここに来たのはレイルにこの場所を見てほしかったのよ。私のお気に入りの場所だから」
そう言うと、ケーナはピィーと口笛を吹いた。すると、どこからともなく真っ白くて綺麗な鳥が飛んできて、ケーナの左手に止まった。レイルは、驚きと興味の目を向ける。
「そんなこと、できるんだ!」
「どう? すごいでしょ? 私って、動物と仲良くなるの得意なんだ」
「ふぅん、うらやましいなぁ。それで、その鳥は何て言うの?」
「ああ、この鳥は<ネオンアカンホロホロ鳥>って言うの。ここにしか生息していない貴重な鳥なんだよ? 綺麗でしょ?」
「うん、キレイだし目がクリクリして可愛いね。僕も鳥は好きなんだ。国にいた頃は、よく飛ぶ鳥を眺めていたよ」
「レイルの国の鳥はどんな鳥がいるのかな? 見てみたいなぁ」
「遠い国だけど、良かったら一度来てよ。もし、この試練が無事に終わったら、案内してあげるからね」
「えっ……それ本当っ!? 行くよ、きっと行くからね! その時は、私よりも上手に案内してよ?」
「ええと、ケーナみたいにはなかなかいかないと思う……」
照れたレイルを見て、青き髪の少女は笑った。
心から楽しそうな笑顔だった。