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砂塵りのケーナ  作者: 束間由一
第一章:砂漠の少女
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森は2人を和ませる


 <ガレフ庭園>は小規模な森林地帯だった。

 ケーナとレイルは、犯人を捜しにこの森に侵入する。



 森の中は、一面緑に包まれていた。

 木々の合間から差す光は優しく2人を照らす。


 砂漠と町の乾いた色ばかり見てきたレイルにもケーナにもその風景は新鮮に映った。みずみずしい空気の変化も感じ取れた。


 「何だか不思議だね……砂漠の中でここだけ、こんなに草木が生い茂ってるなんて」


 「まったくよ。下にオアシスでも通ってるのかなぁ? あるいは、噂に聞く通り<禁経>のせいなのかも」


 「でも、こんな風に自然をあふれさせる<禁経>だったらあんまり悪い気はしないな。砂漠の中にこういう場所も必要だと思うし」


 「そーだね。……あっ?」


 綺麗に作られた土の道を、何かが横切った。

 早すぎてレイルはその姿を捉え損ねた。


 「犯人……かな?」


 「違うわよ、レイル。アレは多分ただのリスよ」


 「リス? 砂漠にリスがいるなんて予想外だなぁ」


 「猿とか、貴重な野鳥もいるんだよ? なかなか良い森だと思わない?」


 「そうだね」


 森の中を歩いていると、レイルは何だか気が落ち着くような気がした。砂漠の町の活気も良いけれど、たまにはこういう森林浴も良い。犯人探しの事も忘れてしまいそうになるほど柔らかな場所だ。大きく深呼吸をすると体の中が透き通るようだ。


 「気持ちいいなぁ。何だか清々しい気持ちになるよ」


 「それはよかった! ここに来て正解だったね」


 「え? それって……どういうこと?」


 「犯人探しもあったけど、ここに来たのはレイルにこの場所を見てほしかったのよ。私のお気に入りの場所だから」


 そう言うと、ケーナはピィーと口笛を吹いた。すると、どこからともなく真っ白くて綺麗な鳥が飛んできて、ケーナの左手に止まった。レイルは、驚きと興味の目を向ける。


 「そんなこと、できるんだ!」


 「どう? すごいでしょ? 私って、動物と仲良くなるの得意なんだ」

 

 「ふぅん、うらやましいなぁ。それで、その鳥は何て言うの?」


 「ああ、この鳥は<ネオンアカンホロホロ鳥>って言うの。ここにしか生息していない貴重な鳥なんだよ? 綺麗でしょ?」


 「うん、キレイだし目がクリクリして可愛いね。僕も鳥は好きなんだ。国にいた頃は、よく飛ぶ鳥を眺めていたよ」


 「レイルの国の鳥はどんな鳥がいるのかな? 見てみたいなぁ」


 「遠い国だけど、良かったら一度来てよ。もし、この試練が無事に終わったら、案内してあげるからね」


 「えっ……それ本当っ!? 行くよ、きっと行くからね! その時は、私よりも上手に案内してよ?」


 「ええと、ケーナみたいにはなかなかいかないと思う……」


 照れたレイルを見て、青き髪の少女は笑った。

 心から楽しそうな笑顔だった。



 




 

 























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