引き継がれる血
ネレストは、愛する者に裏切られて死んだ。
エドガルドはそう語った。
「それは、ひどいね。愛してた人に一方的に裏切られて、その上に殺されちゃうなんて。あんまりな話だよ。ネレストさん、あんな風に飄々としてたけど色々あったんだ……」
ケーナは、何だかネレストを疑った事に対して申し訳ない気分になった。知らなかったからやむおえない話だが、それでも何だか悪い気がした。彼女の目は元気なく床を見る。それを察するか否か、エドガルドはゆっくりと話しを続けた。
「時代も悪かったのよ。身分が違ったとて人間と言うものに変わりは無いのにのお。神とは、実に人を狂わせ悲劇を起こすのがお好きなものよ」
「そうですね……」
「しかし、ネレストもただ哀れに死んだだけではない」
「えっ?」ケーナが顔を上げる。
「ネレストは、その血を残したのじゃ」
「それは……」レイルも興味深そうに耳を傾ける。
「毒を盛られたその時、ネレストは子を身ごもっていた。ネレストは、確かにその時死んでしまったが、お腹の子は無事摘出され無事だったのじゃ」
「それじゃあ!」
「ああ、今も彼女の血を引く子孫がどこかで生きているじゃろう。案外、近くにいるかも知れんぞ」
「へーっ」
ケーナは、それを聞いて元気を取り戻した。
ネレストの死が無駄じゃ無かったという事を嬉しく思った。
「ってことは、もしかしてネレストさんはその事を知ってるの?」
「かもな。 ワシからは言った事は無いが、おそらく知っているのだろう。現世にとどまるのも、もしかするとその子孫を見守る為なのかもしれんな。」
「そっか、じゃあ悪霊とい言うよりも守護霊みたいな感じだね。今日は心配して損したかも」
「ふぉふぉ、まあ、心配するに越した事は無いさ。ネレストも悪い奴じゃないがイタズラ好きでのお……レイルのその姿を見れば……ふぉふぉふぉ!」
「はっ!?」
レイルは改めて自分の体を眺め見る。
踊った時のままの、素っ裸に近い服装の自分がそこにいた。
少年の顔はみるみる赤くなっていった。