踊り終えて
ケーナが心配する中、レイルは素晴らしい踊りを見せた。
ノエリーも、偶然(?)駆けつける。
月がその黄色い光を強くした頃、レイルの踊りは大盛況の中終わりを迎えた。
巻き起こる拍手と歓声に押されて今は彼女である彼は舞台を降りる。
ノエリーの言った通り、特に問題となる事は何も起こらなかった。
ケーナはそれを確認すると、ホッと息を撫でおろした。
「レイル! 大丈夫だった?」
「何ともないよ。それより、どうだった? ボクの踊りは?」
「うん、よかったよ! すごかった!」
「それはよかった……ネレストさんがそう言ってるよ。」
側にいたノエリーは、腕組みをしてにやりと笑う。
「へぇ、なるほど、レイルにとりついてるのはネレストか……にひひ」
「何よ!? 何か知ってるの?」
「まあね! きっと司祭の爺さんが教えてくれるから、さっさと神殿に行きなさいな……にひひ」
「もう、勿体ぶらずにスグ教えてくれればいいのに。意地悪だなぁ。」
ケーナとレイルはノエリーと別れて、観衆の中を悠々と歩いて行く。沢山の声が2人にかけられたが、ケーナはそれを無視してレイルの手を引っ張リ続けた。そして、さっさと止めてあった馬にまたがると、神殿へめがけて走り出す。
「ケーナ、ボクまだ着替えてないんだけど……」
「いーのいーの! 後で着替えればいいの! 善は急げだよ!」
商業区を離れれば灯りは少なくなりどっと暗くなる。
涼やかな風がケーナの髪を靡かせる。
「……よし、到着っ!」
目的地に着いた途端、風が止んだ。
ケーナとレイルは、馬から飛び降りると、扉を勢いよく開けた。
バタンと大きな音がしたので、司祭エドガルドも来客がわかり、すぐに玄関に姿を現した。
「……おお、見事に事を成してきたようじゃな」
「はいぃ!」
レイルはフワフワと答えたが、エドガルドは、おそらく慣れているのだろう、無反応だった。
「よし、試練の突破を認める。 2人とも良く頑張ったな。」
「司祭様……」
ケーナは、褒められた事には関心が無く、ただ心配そうにエドガルドに話しかけた。