悪乗り
霊がとりついて女になったレイルと、ケーナは、王家の脱出に向う。
レイルの様子が、何だかおかしい。
階段は、ピラミッドの一階のとある部屋に通じていた。罠だらけの行きとは違い、いとも簡単であった。
「もー、最初から知ってればここを使ったのに。ノエリーの情報もまだまだだなぁ」
「そんなことないよ、ケーナ。ネレストさんの話だと、あの階段は下ると罠が作動して多分死んじゃうだろうってさぁ」
「ふーん、そうなんだ」
暫く歩くと、出口の光が2人を覆った。
無事、地上に出る事が出来たのだ。
「おお、良く戻られましたな」
門番が2人を出迎える。
しかし、すぐにレイルの変化に気がついた。
「あれ? 君って……女の子だったっけ?」
「そうよぉ」レイルは艶めかしく言う。
「ボクは女の子だよぉ。おじさん失礼だなぁ」
「ああ、でも、確か……変だなぁ」
「ウフフ、おじさんの迷ってる顔かわいいなぁ」
「え、そ、そうかい? あはは、君ってお世辞ががじょうずだねぇ」
「本当よぉ、だってボク……」
何だかレイルの詰め寄り方が異常だったので、ケーナは慌てていまは「彼女」である彼の耳を引っ張り、足早にその場を後にする。階段も、物凄い勢いで下りて行った。
「ちょっと! ネレストさん聞いてる!?」
レイルにとりついた悪霊に対して、ケーナは怒った。
しかし、レイルはただフワフワしているだけだ。
「もう、とにかく、早く司祭様のところに行かないと……」
さっさと、砂漠馬にレイルをまたがらせ、ケーナは手綱を引いて砂漠を駆ける。
顔は、苛立っていた。
「しっかりつかまっててよ! 何だか今のレイルは危なっかしいからね!」
「そんなことないよぉ。もしかして、この胸が邪魔なのかな?」
「違うよっ! ……もう、ネレストさんったらいい加減にしてほしいわ!」
「ウフフ」
ブルルン!
目を覚ませと言わんばかりに馬が唸った。
しかし、それもレイルの状態を戻すにはいたらなかった。
暫くして、街が見えてくる。
ケーナは、安堵と、レイルの状態に大きなため息をついた。