英雄の像
神殿に入った2人は中にあった2体の彫像を見る。
中には、迎えるかのように二体の石像があった。
一体は冥術師の始祖である賢者ウガルティウス。
もう一体は、かつて魔神ヴェザイアスを倒した英雄アクロスを助けた聖女メルサイアだ。
2人ともこの世界で知らぬものは笑われると言うくらい有名な人物であった。
これらの彫像は、冥術関連の神殿に行けばどこにでもあるものだか、制作者は皆違うため顔や雰囲気は異なる事が多い。時にはものすごく面白く滑稽な顔をした彫像もあった。
「どう? ここの、ウガルティウスは良い出来でしょ?」
ケーナは、そういって威厳ある老人の像をポンポン叩く。
ウガルティウスの像を触るのは冥術師にとってはやってはいけないことだったが、レイルは止めなかった。彫像の出来の良さに見とれていたのだ。
「すごいよ。今まで見た中で一番格好いいよ。誰が作ったの?」
「ああ、確かこの国の彫刻家でアルミンドラって人だったかな? もう死んじゃったんだけど、人間国宝になったんだよ。」
「へぇ、すごいなぁ。こんなに精密に人物を作れるなんて。僕には出来そうにないよ。」
「もー、レイルは弱気だね。やってみてもいないのに出来ないなんて決めつけちゃだめだよ。私は、興味引かれたらバンバン挑戦しちゃうんだけどな。 ……あ!」
ケーナは足音に気付いた。
そして、その足音はすぐに人の姿を現す。
「……フムム、何か用かな? おお、ケーナじゃないか!」
その皺多き老人は、冥術師特有の銀色の神官服と、帽子をかぶっていた。
眉毛は長く垂れて穏やかそうな表情を見せる。顎鬚も長く首の付け根くらいまであった。