適霊探し
2人が入った「不昇の間」の中は……
「わっ!」
入った瞬間にレイルは声を上げた。
その部屋の中には半透明の人間の姿をした霊達がゆらゆら蠢いていたからだ。
彼らは、皆青白い顔をしていて目はうつろだった。2人に、気付く様子も無い。
「随分、元気の無い悪霊たちだね。」
ケーナは、少し拍子抜けしていた。もっと、ワーッと襲ってくると思っていたからだ。
しかし、銀製の剣は念のため構えていた。
「レイル、いよいよだね……この中から女の人の霊を探すよ。」
「うん、でも、この人たち本当に悪霊なのかな?」
「ノエリーが言ってるんだしそうだと思うよ。まあ、信じるしかないって。」
「そうだね。じゃあ、見てみようか。」
レイルは、<デリア>で照らされた霊達を眺める。
なるほど、霊に元気が無いのは、ひょっとするとこの光のせいかもしれない。
しかし、強い悪霊はこんなことで弱ったりするだろうか?
レイルの考えた理論の信憑性は微妙であった。
霊達は、男性と老人が多い。みんな結構豪華な服を身につけている。
子供の霊は、いなかった。悪霊になる事は少ないのだろう。
そんな中、ふと、ケーナはある霊に目が行った。
他の例とは違って、ゆらめかずに部屋の隅っこに座っている。
年は……20代後半だろうか? 長い髪と大きな胸を持つそれは、女性のようだった。
「見つけた! レイル! 見つけたよ!」
「ホントに?」
「あそこにいるよ! 行ってみよう!」
2人は、その霊のところに向う。
他の霊達はただそれを傍観しているだけだった。