悪霊の住まう所
ケーナは、目的の部屋を発見した……?
「ここが……ノエリーさんの言っていた部屋なのかな?」
入口より向こうに蔓延る闇。
レイルは、それに呼ばれているような気もしたし、拒まれているような気もした。混沌とした何かがその部屋の内部を取り巻いているのが、よくわかった。
「ノエリーさんは、ここの悪霊は霊感が強ければ見る事が出来るっていってたね」
「うん。でも、本当かなぁ?」
レイルは、ノエリーの情報を信頼はしていたが、今回の件に関してはちょっと不安だった。そもそもに、霊感と言うものが自分に備わっているのかがわかっていなかった。
「入ってみるしかないね。一応、私はそこそこ霊感があるんだ。私の家系は基本的にみんな霊視が出来るらしいし、実際に昔見た事があるからね。幽霊を」
「えっ! そうなの? ケーナって幽霊見たことあるんだ」
「うん、昔お城でね。女の人の霊だったな。体は透けてたんだけど、とってもきれいな人だった。もしかすると私のご先祖サマかもね~あはは!」
ケーナの冗談は微妙だったが、レイルの不安をやわらげる効果はあった。
そうだ、霊なんてそんなに恐ろしいものではないんだ。少しだがそう思えてきた。
「行こう、ケーナ。危険かもしれないけど、僕はいかなきゃならない。」
「うん! 任せてよ! もしもの時は私がレイルを守ってあげるからね! 神聖系冥術は私もある程度使えるし」
レイルは、ケーナに信頼の眼差しを向ける。
彼女はウインクをすると、手に持つ剣を光らせながら、レイルより先に部屋の内部に侵入した。
「レイル! いいよ! 来て!」
「わかった! 今行くよ!」
ケーナの言葉に従う。レイルは、悪霊渦巻く部屋に足を踏み入れる。
おぞましい何かで、一瞬寒気を感じた。
そこは確かに、王家の墓の禁じられし部屋「不昇の間」であった。