王家の血
王家の墓に入る手続きは容易にとれた。
2人は昼食をとる。
商業地は、今日も人で賑わっていた。
毎日新しい商品、食品が増えていき見るに飽きない。
今日のレイルは、ファリーダからもらったお小遣いで「サンドバーガー」を買った。焼いたバトラ牛の旨みあふれる切り肉に玉ねぎ、ファタ葉を重ねてそれらをパンで挟んだ食べ物だ。レイルが一度かぶりつくと、肉と野菜と香辛料の絶妙なハーモニーが口に広がった。
「しっかし、あのおっさんも分かり易い人だったな」
と、隣に座るケーナが言う。手には、袋入りのオニオンリングを持っていた。
まったく、そうだった。上には甘くて下には冷たいのがあの受付の男だった。普通の人間、例えばレイル一人で行ったら、酷い目にあわされそうだ。あんな人間を公職に就かせるのは納得がいかないとケーナは思っていた。そんなケーナにレイルは、残念そうに言う。
「すごいね、ケーナの事知っただけであんな風になるんだもん。僕が行く必要、やっぱり、あんまり無かったかな?」
「そ、そんなことないよ! レイルが言った方が説得力あったのは事実だし。」
ケーナは、こうやってレイルに褒められているのは良い気分ではなかった。
今までもそうだが、自分の実力で何とかしているとは言い難い。「王家」の名と財産で何とかなっているのだ。
王家の血。
そう、私は、王家の人間。
ケーナは、表情が固まった。
それを見て、レイルが心配して声をかける。
「ケーナ? 僕、何か悪い事言っちゃった?」
「ううん……レイル、王家の墓ってさ、良く考えたらいつか私も入るんだよね。」
「えっ、そうなの?」
「ちゃんと死ねたらね。ミイラになってあの中で眠る事になるかも知れないよ。」
「そうなんだ」
「入った事無いけど、どんな所なんだろうな? 悪霊も出るって言うから、あんまり良いところじゃなさそうなんだよね。何だか寂しそうな感じだし。そんなとこで、ずっと眠りつづけるなんて嫌だなぁ。」
「ケーナ、まだそんな事考えなくていいよ。ケーナが死ぬなんて考えたくないし」
「レイル……私さ……ううん、そうだね、まだ早いよね! ごめん、何か辛気臭い方向にもっていきそうになっちゃったよ。はい、お詫びの印!」
ケーナは何か言おうとしたのをごまかすように、レイルにオニオンリングを一個手渡した。