王家の墓
女になるには、霊をその身に憑依する必要がある。
ノエリーが格好の場所として挙げたのは「王家の墓」だった。
「あの……ノエリー、あそこは国で管理してるから入っちゃいけないんだよ!」
王家の墓は、デルアラスの国家遺産建造物として厳重に管理されていた。もし何もせず放っておいたら、墓荒らしに何をされるか分からないからだ。実際、眠っている王族のミイラや金品を奪われる事件が過去にあった。ただ、その盗んだ人物は原因不明の怪死を遂げたと言う噂だ。しかし、そんなケーナの言葉に、ノエリーは動じる事は無かった。
「ケーナ、合法的に入る方法は十分あるでしょ? 今までの冥術師の人だって、多分国に許可とってるはずだ。それに、あんたはあの三角形のお墓に入る様な家柄でしょ?」
「そうだけど、言うほど簡単じゃないよ。お金の融通よりも大変かもしれない。まあ、レイルのためだし掛け合ってみるけどさ」
「さっすが! レイル君、頼りになる友達見つけたね!」
レイルは、大きく頷いた。ケーナには本当に助けてもらってばかりだ。
何か自分に出来る事は無いかと思った。そして思いついたのがこの言葉だった。
「ケーナ、その、許可を取るところって僕も行けるの?」
「ん? そうだね、管理局なら私がいれば大丈夫だと思うけど……」
「じゃあ、僕も一緒に頼みに行くよ。全部任せるなんて悪いし」
「そっか! 確かに一緒にいた方が逆に怪しまれないかもね。じゃあ、明日管理局に行こうよ。」
「うん!」
2人は難しい試練の前であるにも関わらず互いに微笑み合った。
ノエリーはそれを見て、ちょっと羨ましいなと思った。