ケーナの謎
神殿を後にして、デルアラスへ帰る2人。
神殿の埃臭い闇から抜け出した2人は、馬に乗り元来た道を引き返す。
太陽は、まだ沈まず強い光で照らしてきた。しかし、行きの様な不安な気持ちが無い帰り路は楽なものだった。馬が砂を踏みつける音を聞きながら、ケーナはのんびりと手綱をゆらゆらと揺らす。
「いや、大成功だったね!」
「そうだね。」レイルは頷いた。
「でも、ケーナがいなかったら今頃は食べられてたかも。」
「いやいや。」ケーナは右手を振る。
「ボル爺の人形の効果が出るのが遅かっただけだよ、多分。私もびっくりしたけどね。」
「そうかな……本当にそうだったのかな? だって、ケーナ。レインザードの言いたい事がわかってたみたいに見えたんだけど。」
「え? ああ、そういえば何となく。でも、心当たりは無いなぁ。あんな白蛇と会ったのは初めてだし。」
「ふぅん……」
レイルは、何だか腑に落ちないところがあったが、それ以上追及する気は無かった。
何にしろ、生きて目的を果たして帰れたのだ。今はそれで十分だった。
だから、次に口にした言葉はお礼の言葉だった。
「ケーナ、本当にありがとう。また、頼っちゃったね。」
「そんなことないよ! レイルの冥術すごかったじゃない。今日は、ホントに見直したよ。」
褒め返されて、いつもの如くレイルの顔は赤くなった。
馬は、それを冷やかすかのようにブルルンと鼻息を荒くする。
デルアラスの壁が2人に再びその姿を現したのは、太陽が陰りを見せた時だった。