運命の咆哮
少年と少女は互いの名を知る。
運命の歯車は回りはじめる。
馬に乗る前に、少女は少年に名を尋ねる。
少年は、顔を赤らめて照れくさそうに答えた。
「僕は、レイルって言います。 生まれは遠く西のバリアルハンです。」
「へぇ、随分と遠くの人なんだね。 私は、ケーナって言うんだ!」
「ケーナさんですか……よろしくお願いします。」
ケーナは、少年レイルのあまりにくそまじめな態度に思わず笑ってしまった。
かわいい奴だなと思った。だからちょいとからかいたくなる。
「別に、そんな丁寧に言わなくてもいいし。軽ーくケーナって呼びなさいな。レ・イ・ル君!」
「は、はい!」
「ほら、試しに呼んでみなさいって。」
「え? ええと、け、ケーナさ……」
「さんはいらないの。はいもう一度!」
その時、ブルル―ンと馬が鳴いた。
そして蹄を乱雑に動かすと、ケーナはレイルをおちょくるのをやめた。
「ああ、ごめんごめん! あんたの紹介がまだだったね!」
「その馬は……サンドラブ?」
「へーっ、知ってるんだ! この馬は背中に水を貯められるから、こうやって砂漠を長々走っても大丈夫なんだよね。 んで、この子の名前はガファルって言うんだ。おとなしくて優しい子なんだけど、ちょっとさびしがり屋なんだよ。だから今みたいに無視されると怒るわけ。」
ケーナがそう言って脇腹を撫でると、ガファルはその通りですよと言うようにブルルンと鳴いた。
馬に殆ど乗った事のないレイルは、このサンドラブに乗せてもらえる事に対し胸が高鳴った。
「これに乗せてもらえるんですか。それにしても大きいなぁ。」
「そうでしょ? そうでしょ? そこいらの国の小さな馬よりずっと頼りになるんだから! ささ、私が前に乗るから、レイルは後ろに……そのへんに乗って。」
「う、うん。」
レイルは恐る恐る、馬に乗りにかかる。
想像以上に高く感じたが、いざ乗ってみると安定感があり気が落ち着いた。
ケーナはレイルが乗るのを見届けると颯爽と足場を駆けのぼり、彼の前に飛び乗った。
「よし、じゃあ出発しようか! オアシス入り損ねたけど。」
「は、はい!」
少年レイルとケーナはオアシスで運命の出会いをした。
後々に巻き起こる、悲しい運命への旅が馬の嘶きと共に、今始まった。