闇を照らす光
神殿の内部は闇に包まれていた。
ファブラリタイの中は漆黒の闇だ。
燈す光も無く奥は吸い込むような暗黒に包まれている。
ケーナは、持ってきた松明を取り出したが、レイルが火をつけるのを止めた。
「えっ? こんな真っ暗闇を進もうって言うの。」
「ううん」レイルは首を振った。
「僕の<デリア>で何とかするよ。」
「あ、使えるんだ!」ケーナは手をパチンと合わせた。
<デリア>は冥術の1つで、当たりを照らす光の球を作りだす。
見習い冥術師でもほとんどが使える初歩的な冥術だ。
レイルは手を前に差し出すと、ふっと目を閉じて念じた。
「辺りを照らす光の球よ、我に付き添え……<デリア(照光)>!」
ぼわっ。
神殿の中は一気に光を浴びて明るくなった。
「へー」ケーナが、物珍しそうに発生した光球を見る。
「やるじゃん! さすがレイルだよ。」
「いや、そんな、褒めるものでもないよ……」
しかし、言葉に反してレイルは嬉しそうな顔をしていた。
光球は術者の側に勝手についてくる、非常に便利なものだ。
2人は両手を楽にしたまま、神殿を奥に進んだ。
暫く直線状の通路を進むと階段があり、それを降りるとまた通路が伸びていた。
通路の両橋には部屋の様なものが続く。冥術師がここで暮らしていたのだろうか?
2人は、それらの部屋を覗きながらゆっくり歩いた。
「ここも違うね……」
「うん。」
どの部屋も、空っぽだった。
家財等はみんな持っていかれてしまったのだろうか?
残っていたのは、何かの骨ばかりだった。
「さすがにこんなところにはいないかな……あっ!」
「どうしたの?」
ケーナは何かに気付いた。
目の前、通路の奥に何かがいる!