そっと財布にしまっておく
レイルは、<砂漠くじ>を買ってファリーダの家に戻った。
「へぇ、なけなしのお金で買ったんだ。やるねぇ、レイル。」
ファリーダは、少年の方を揉んだ。
そして、入れて来たコーヒーを机に置いた。勿論向こう側に座っているケーナの分もある。
ケーナはふーっ息を出してからケーナに話しかけた。
「ホント、あの列に並んだのが一番疲れたよ。もう汗だくだく~まあ、ボル爺のくさーい部屋にいるのも楽じゃなかったけどね。ガドスのおっちゃんもアレだけど、ホントあの爺さんはファリーダに遇わせたくないな~」
「それ、さっきも言ってたわよ。よっぽどそのボル爺さんってのは困った人なのね。」
「うん、金と女の事になると急に耳が聞こえるようになる都合のいいお方でしたから。おまけに人の事を色気ないとかぺちゃんこだとか言ってくるし。」
「聞くからにエロいお爺さんだね! でも、ぺちゃんこなのは当たってるんじゃない?」
「ファリーダっ!」
冗談よと言いながら、褐色肌の彼女は褐色のコーヒーをケーナの胸下に置いた。
ケーナは、不機嫌そうにぐんぐんとコーヒーを飲んでプハーと大きく息を吐いた。
「それにしても、レイルったら私が払うって言ってるのに断るなんて真面目だなぁ。」
「だって……」レイルはもじもじする。
「これ以上人のお金借りるなんて悪いよ。返せる当ても無いんだから。」
「くじの1枚や2枚どうってことないのに。」
「ケーナは気にしてないかもしれないけど、それに甘えちゃいけないと思うんだ。出来る限りは僕が自分で何とかしなくちゃいけない。もし、この<砂漠くじ>が当たったら、今まで払ってもらった分全部返すからね。」
「ふーん」ケーナはレイルの考えに感心した。
「ただ、分かってると思うけど、それが当たる確率はすっごい低いよ。なにせ何百万枚と出回っているんだからさ。くじはお楽しみと思っておいた方が良いと思うよ。」
レイルは頷いた。そして、財布の中に挟まれたくじの数字を確かめる。
3枚買ったこのくじが、意外な結果をもたらす事をこの時は誰も予想していなかった。