少女との出会い
少年は、オアシスに入ろうとする少女を慌てて引きとめる。
少年は声を上げた。
目の前で少女が服を脱ごうとするのを、またその後の状況を放っておけるほど少年は助兵衛では無かったのだ。それに、ここで声を出して制止しなければ、いざ話かける時に疑われてしまうのも不都合であった。
少年の出した声は、空色の美しい髪を生やすその少女に届く。
少女は「はっ!?」と声を出すと慌てて服を着直した。
「誰っ!?」
少女は、剣を携えていた。それを鞘から抜くと、ずんずんと湖沿いに少年に近づいてくる。
対して、少年は華奢で武器は持たずま丸腰だった。しかし、少年は逃げる事はしなかった。逃げれば逆に怪しまれるからと言うのもあるが、話しかけようと思っていたから逃げなかった。ただ、剣を持った少女が間近に近づくとやはりちょっと怖かった。開いた両手を左右に振って必死に説得に出る。
「わわわわわ! 僕は怪しいものじゃありませんっ!」
「貴様、何者だ!?」少女は、少年を睨みつける。
「僕は、見習いの冥術師です。今修行の旅をしてるんです! たまたま、オアシスに辿り着いて、それで……たまたま……たまたまなんです! 別に、敵意は無いです! 本当です! ひゃあ!」
少女はそれを聞くと、剣を一筋ブンと空振りさせた後に鞘におさめた。
そして、さっきまでの険悪な顔とは打って変わって可愛らしい笑顔を見せた。
「なぁんだ、そういうことか。まあ、あんな大声を出すあたり悪い奴じゃ無いとは思ってたけど。ふーん、冥術師の修行か。」
少年はホッと肩を撫でおろす。話の分かりそうな人でよかったと思った。
「はい、この度は砂漠の国デルアラスに<律者の試練>を受けに行く途中なのです。」
「そっかノルマーダ神殿に行くんだね。君、運が良いね! 私、あそこの国から来たんだ! よかったら馬に乗せてあげるよ。」
「ホントですか!?」
「うん、その荷物なら2人乗っても大丈夫だし。それに、君をこのまま砂漠に放っておくのは心配だからね!」
敵ではない事を知ると、少女は非常に親切だった。
少年は、丁寧におじぎをすると一緒に馬の停められている場所に向った。