砂漠をまたぐ男
<竜巻地帯>の情報を得るために、ノエリーの紹介した男のもとへ向かう。
その家は、デルアラスの北東の端にあった。
この地域は、職人たちの集う地域で、漂う空気は鉄の匂いがする。歩く者達の多くは、非常に屈強な肉体を持っており、ドシンドシンと音をたてるように堂々と歩く姿は勇敢であった。
木製の扉が開くと、独特のふわついた匂いが漂ってくる。2人はあまり嗅いだ事が無かったので分からなかったが酒の匂いだった。そんな中から顔を出した男はさながらドワーフ族のようで、背はそれほど高くないのだが、筋肉隆々で蚊も刺さないような硬さを感じさせた。
「うむ? お前らは何者だ?」
「あなたが、ガドスさんですか?」
ケーナの問いに、男は頷く。
この男こそが、砂漠の事についてならこの近辺で右に出るものはいないとすら言われる「砂漠またぎのガドス」であった。
「ガドスさん、教えてほしい事があるんです。<竜巻地帯>について詳しいと聞いたので……」
「なぬ!? まさかお主ら、あそこに行くつもりでは無かろうな?」
険しい顔でガドスは、レイルを睨みつけた。
レイルは、怯んで目を一瞬そむけたが何とかガドスの方を向きなおして重い口を開く。
「そ、そのまさかです。僕が、冥術師の試練を乗り越えるために行かなくてはならなくて、その地帯の中にあるオアシスに行く必要があるんです!」
「なるほどな。」ガドスは自分の口に生え茂った髭を撫でる。
「まあ、中に入れ。詳しい事を聞かせて貰おう。」