近づく影
オアシスでひと休みする少年のところにやってきた者は……?
大きな湖の周囲は、この砂漠では珍しく植物が茂っている。
生えている大きなカヌキの木陰に、身に着けていた物を全て脱ぎ置きパンツ一丁の身軽になった少年は、そこにある美しい青の水面にザブンと飛びこんだ。
この焼かれるような砂漠において、この小湖の水は冷たさを保っていた。
少年の体の熱を緩やかに奪い、至福の時を与えた。
「ぷはー、幸せだぁ。夢見たいだぁ。」
声に出すほど少年は浮かれていた。去年の冬にコーサカルの温泉に入った時よりも、ずっとずっと気持ち良い。ずっとここにいたら最高だなぁと思ったが、そうもいかないのが残念だった。暫くしたら、また歩き出さねばならない。水から出した顔からふぅとため息が漏れる。
ふと、木々の向こうの砂漠を見ると何やら動く者が見えた。
馬か何かに人が乗っている。しかも、こちらに向ってくるようだ。
少年は、慌てて岸に泳ぎ、着くとサッと服を着て向かってくる者を木陰から待ちかまえる。こんなところで、人に会うのは幸か不幸か。危険な者でないことを少年は願った。
フードを被ったその人らしきものは、オアシスつくと馬から降りる。
そして、水面に近づくと着ていたそのフード付きのコートをバッと脱ぎ去った。
少年は眼が良かった。遠目だったが、その身なりをよく見る事が出来た。
それだけに、見えるものがあまりにも刺激的すぎた。
「わわわわわわわわわ!」