白蛇の伝説
ケーナとレイルは白蛇に纏わる情報を集め始めた。
神殿を出ると、ケーナはレイルをある場所に連れて行った。
考古学者のノエリーという女性の家だった。
金髪ポニーテールで銀縁メガネをかけたその顔に、絹織の白いローブが良く似合う。
ファリーダも美人だったがノエリーもまた聡明な美しさがあった。
「なるほど、あの白蛇の生み出す珠<蛇真珠>を取ってくるんだ。そりゃあ大変だねぇ。しかも、殺しちゃだめってか。この子一人じゃ出来そうにないわ。」
「そうでしょ? だから、この辺の事に関して詳しいノエリーなら良い事教えてくれると思ったんだよ。」
「まあ、それは賢明だと思うよ。あの蛇の事も研究してるしねぇ……ま、300年くらい生きてるんだから正確には蛇じゃないんだけどさ。」
「せっかくだから詳しく教えてよ、ノエリー」
「いいよ。」
そう言うと、ノエリーは腕組みをしてケーナ達に背を向けた。
そしてこの地域に伝わる伝説を語り出す。
かつて、このデルアラスに大いなる災いが起こった。
水源である、オアシスの水がほとんど枯れてしまったのだ。
人々は飢えと砂漠の暑さに耐えられず、次々と死んでいった。
このままでは、砂漠の民は全滅してしまう。
当時の冥司祭オルドレアは、王の命を受けファブラリタイ神殿で降雨の儀式を行った。
その時に現れたのが今いる白蛇だと言う。
蛇は、オルドレアを丸飲みにした。
しかし、その後に見返りとして砂漠の地下に水を溢れさせ国は救われた。
現在のデルアラスの繁栄も、この白蛇によってもたらされていると言う。
凶暴で人を食うこの蛇を殺さないのはそのためである。
神の使いである白蛇を殺せば、水はたちどころに失せ、デルアラスは滅亡するだろう。
もっとも、この大蛇を倒せるものは無きに等しいが。