城がわが家
朝の新聞に、デルアラス城に侵入者が出たとの記述。
それに関連してケーナの素性が少し明らかになる。
翌朝、レイルが朝食を取っている時にケーナは早々とやってきた。
そして、机に座るとファリーダにコーヒーを催促した。
しかし、ファリーダはすぐにコーヒーを入れようとはせず、代わりに地方新聞をケーナの前に差し出した。ケーナがのぞきこむと、そこにはこう書いてあった。
<国の中心にあるデルアラス城に昨日、何者かが侵入した! 門番4人が襲われ、気絶させられたが命に別条はなし。犯人の行方は今のところ不明、物色された物が無いか、まだ城内に犯人が残っていないか等現在城内総出で調査中である>
ファリーダは、その新聞に手をついてケーナに目を向けた。
向けた方も、向けられた方も真剣な顔だった。
「大丈夫なのかしらね? 犯人がまだわかっていないなんて、ケーナも不安でしょ。」
「まあね、こう言うのは困るよ。行動も制限されかねないし、命の危険だってあるからさ。何せ、屈強な兵士4人を手玉に取ったんだ……スパイか野盗か知らないけどただ者じゃない。ただ、私が見つけた時は何とかしてみせるつもり。」
「へぇ、自信家だねぇ。確かにあんたは昔からじゃじゃ馬で剣の腕は長けてる。でも、相手は何をしてくるか分からないからね……ところで、レイルは話についていけてないみたいだけど。」
レイルは、試練が始まる事に胸が高鳴っていたため、この事件については反応薄だった。
ただ、ケーナの素性は気になていたし、城に住んでいるという事実には興味も抱いたいたので聞いてみる事にした。」
「ケーナって、城に住んでるの?」
ケーナはまあねと、さっぱりした口調で答えた。
ただ、それ以上は語らなかった。代わりにファリーダが話し始める。
「驚いた? この子、結構いいとこの出なんだ。所謂、おひめさまってやつよ。あんまり他の奴には知られちゃなんないんだけど、レイルになら大丈夫だよね? 口外しそうにないから。」
レイルは、とりあえずうんうんと頷いた。
ケーナもなぞるようにうぬんと頷いて、にかっと笑った。
「そうだね、レイルなら大丈夫か……そうなんだ、一応この私は由緒ある家の出なのよ。こうやって外を出歩くのはあんまり良くないんだけど、城の中って退屈だし世間知らずになっちゃうし運動不足になるから、いつも抜け出してるの。一応決められた門限には戻ってるから、今のところ怒られる事は無いよ。」
「そうなんだ。ケーナってお偉いさんなんだね。」
「一応はね。でも、遠慮する事は無いよ! 私達は友達なんだからね。」
ケーナはレイルに向けてウインクをした。
そして、ファリーダが入れたモーニングコーヒーをぐいっと飲む。