因縁(完結)
2人の別れから時は流れ……
それから幾らかの月日が流れた。
ガレストリア帝国は、近隣のサルツ国を滅ぼし、遂に世界に対して宣戦布告を発する。デルアラスではこの日、王宮で対策会議が開かれる事になった。
「皆の者良く聞け……ガレストリア帝国が遂に動き出した」
国王、ブルム=ディルアールは。その貫禄ある顔と声で円卓に座る諸侯たちに語りかける。
「数年前の虐殺事件は覚えているだろう。あれほどの非道な行いをする者があの国には存在する……奴らは危険だ。このデルアラスの民の力をもって必ずや阻止すべきである」
オーと言う声が湧き起こる。
皆、帝国を恐れ警戒する気持ちは同じだった。しかし、熱くなる彼等と対照的に固い表情を崩さない人間がいた。それはケーナだった。彼女は昨年に亡くなった父に代わり、若くして将軍の地位に就く事になった。
「おや……お主は、何か思うところがあるようだな」
「はい」
ケーナは立ちあがった。
そして、皆を強い眼差しで見まわす。
「お言葉ですが……帝国に我々だけの力だけで立ち向かうのは危険でしょう。諸国と同盟を結び、結託して戦うべきと私は考えます」
「ほう……」国王は白く長い顎髭をさわった。
「ケーナ。確かに君は、あの虐殺で生き残った者……帝国の恐ろしさは一番分かっているのは間違いないだろう。だとすれば、発言を軽視することは出来ないが、あてはあるのかね?」
「私が、同盟の使者を担いましょう。デルアラスの将軍が直接謁見を求めるのであれば、良識ある国家ならば軽視はしないはずです」
「なるほど、それは名案と言える。よし、資金は出すゆえ必ず成功させて来てくれ」
「かしこまりました」
ケーナは、一礼すると。再び席に腰を下ろした。
そして、また強い眼差しで会議の内容を聞き始める。
レイル…………あなたは、私がこの手で必ず殺す。
それが、死んだ者たちへの罪の償いなんだ!
成長した少女の胸には、そんな強い決意が沸々と湧きあがっていた。
これで、前編は終了です。
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