少女は砂に塗れて
レイルの闇の冥術がケーナに直撃する……
果たして、少女の運命は!?
「さようなら、ケーナ……」
レイルはそう言って、闇の瘴気に包まれたケーナの方を眺める。
この一撃をもろに喰らって、生きている可能性は皆無だった。皆無な筈だった。
「申し訳ないけど君たちには…………なに!?」
闇が、徐々に引いた先にあった光景に、冷徹なレイルの表情も少し動揺の色を見せた。
ケーナが剣を構えて立っていたのだ。
「馬鹿な……あの冥術の直撃で倒れなかっただと?」
レイルは、ケーナの方をじっと見て何が理由なのかを考える。
そして、1つの理由が頭に浮かんだ。
「そうか……気がつかなかったよ、ケーナ。君の持っているその剣は<スパイラルバード>だったんだね」
そう、少女に語りかけたが、彼女は言葉を返さない。
意識を失っていたのだ。そして全ての力を使い果たしたかのように、ケーナは立つ力を失い、その場に倒れてしまった。
「君が伝説の剣の保有者だったとは……」
レイルが、彼女に近づこうとした時、遠くから沢山の馬が走る音が聞こえてきた。
「ちっ……邪魔者がやってきたか」
裏切りの少年は、なぜかケーナの持つ剣を奪い命を奪う事を止め、倒れた彼女に背を向ける。
「そういえば、忘れていたよ……君に誕生日のプレゼントをあげるつもりだったんだ」
レイルは、顔だけを倒れた少女に向けた。
命の火は、消えてはいなかった。
「ケーナ、君へのプレゼントは……君の命だよ。君の命を1つ分君にあげよう。それが、僕の最後のお礼さ!」
レイルは、そう言うと、街の陰へ走りだし何処かへと姿を消した。
そして、そこに生きたまま残されたのは、砂塵りに埋もれたケーナのみであった。
これが少年と少女の別れ、そして悲しい因縁の始まりであった。
本編はこれで終了です。
残りはエピローグとなります。