表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂塵りのケーナ  作者: 束間由一
最終章:別離
114/119

3つの仕事


 レイルの正体は帝国の手の者だった。

 彼は全てを欺き騙していた……



 「なんで……なんで……」ケーナは怒りと悲しみに苛まれ、震える。


 「僕の目的の1つは、確かにあのジジイに認められることだった。この国に伝わる秘伝の冥術を習得する事が仕事の1つだったんだよ。だけど、他にも目的があった」


 「レイル……」


 「この国の偵察……即ちスパイさ。このデルアラスは、帝国の事を良く思ってないからね。いずれは敵に回る可能性が高い厄介な国だから、こうやって僕を差し向けたんだよ」


 「まさか……あの時の、城内での事件も……」


 「へえ、良く思いだしたね! そうだよ、あのたちを殺したのも僕さ。なかなか、勘の良い奴だったから気付かれちまってね、悪いけど死んでもらったよ。あの犯人は、僕の冥術で記憶を刷り込ませてやったのさ。可哀そうに……無実の罪で牢獄暮らしとはね」


 「………………だったら……だったら、何でここにファリーダや住んでいた関係のない人まで殺したのよ!? レイルがスパイだって言うんなら、全部目立たないようにやればよかったじゃない!!」


 「ククク……そうだね、ただのスパイならそれでもよかっただろう。けど、僕にはもう1つ仕事があった……それが、この虐殺さ!」


 「なんですって!?」


 「他の仕事が全部終わったら、最後に見せしめで幾らかの人間を殺してこいって言われていてね。まあ、ちょっとした脅しのようなものかな」


 「人の命を、何だと思ってるのよ!!」


 「悪いねぇ、ケーナ……お前には悪いけど、この仕事が全て成功した暁には、冥導隊隊長の地位と多額の資金が手に入るんだよ! 金も権力も一度に手に入るんだ!」


 「自らの地位と欲望の為にみんなを…………許せない…………」


 「ええ? 聞こえないなぁ」


 「許せないって言ってるのよ!! レイル!!」



 ケーナが、まるで悪魔のような邪笑を浮かべる少年を睨みつける。

 しかし、少年はそれに動じることなど全くなかった。



 「君に、僕の人生を左右する力なんて無いさ。さあケーナ……いたぶってあげるよ!」



 レイルの手から、強烈な波動が巻き起こる。風の高位冥術だった。

 その勢いは強烈で、ケーナはノエリーとともに吹き飛ばされて、地に体を打ち付けた。



 「つっ………ううっ……」


 

 少女は、心身共に激痛が走り頭を抱える。

 その横で倒れているノエリーは、既に息をしていないようだった。


 そんな2人に、レイルはゆっくりと砂の地面を踏みしめて近づく。

 ズサッズサッと言う音が、ケーナの耳にひたすら大きく響いた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ