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砂塵りのケーナ  作者: 束間由一
最終章:別離
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悲劇のはじまり


 エドガルドの殺害理由と、その犯人を追うケーナとノエリー。





 殺人犯がどこかに潜んでいる可能性がありながらもデルアラスのマーケットはいつもと変わら人であふれていた。おそらく、新聞を読んでいない人も多くいるだろうし、殺人事件だと思っていない人も中に入るだろう。今日になってやって来た渡来人にも情報が伝わっているかどうかは疑わしい。しかし、人が単純に多いと言う事は、ケーナ達には安心感があった。



 2人は屋台に入って食事をする。

 ここはカラアゲで美味しい店だった。大きな油の入った鍋が常にじゅうじゅうと音を立て、揚げた鶏肉の香りは、通るものの食欲をそそり、店内に引きこむ。ケーナもそんな人間の1人であったが、いざ店に入って、頼んでみたもののあまり食欲がわかなかった。やはり、知り合いが殺された翌日に楽しく食事なんて気分にはなれなかったのである。



 「あれ? 食べないの、ケーナ?」


 「ノエリーはのんびりしてるね……私、さっきからずっと胸騒ぎがするんだよ」


 「落ち着きなって。焦っても犯人は見つからないよ。それより、ちゃんと食べて体力つけないと後で困るって。犯人が見つかっても、バテて対処できなかったらダメダメダメでしょ」


 「ダメが1つ多い気がする……」



 楽観的なノエリーを見ていると、ケーナも少しは食べる気になって、カラアゲの1つをつまんで口に入れた。しかし、それ以上は食べなかった。食べられなかったのだ。


 

 キャーーー



 外で悲鳴が上がる。

 ケーナ達が慌てて店から出ると、向こうの方で人だかりが出来ていた。そして、あちらこちらから様々な言葉が飛び交う?



 なんだこれは!?

 どうしたんだよ!?

 血まみれじゃないか!

 死んでる?


 

 商業区の様子は、一気に日常から混乱へと変わっていった。

 ケーナ達は、何とかその集団の中に在る物を見ようと、人の森を抜けてゆく。そして、辿り着いた先にあったものは、1人の血まみれで、男かも女かもわからないくらい頭部が焼け焦げた人間の、遺体だった。その表情に映るのは、ただ恐怖のみ。



 「こ、これは……」ケーナが口元を手で覆う。


 「ふーん」


 「ノエリー」


 「まずいね、これは。こりゃ、食事してる場合じゃ無いや」


 「そうだね! この人が商業区の外から来たのなら……レイルのところに戻らなきゃ!! 」


 

 2人は人ごみから抜け出すと、急いで馬に乗り、商業区を出て、ファリーダの家に向った。

 近づくにつれ、近づくにつれ、ケーナの胸にはゾクゾクしたものが込み上げてくる。



 生きていて、レイル、ファリーダ!



 馬を操りながら、心の中でそう叫ぶ。

 しかし、目の前に見えて来たものは、彼女の叫びを無碍むげにするような凄惨なものだった。

 


 そこには、沢山の死体が散乱していた。



 壁にもたれかかって血の海の中で息絶える者。

 半身を真っ二つに切り裂かれた女性。

 首の無い子供。

 炭と化して判別が待ってく出来ない生き物。



 など。そして、血と何かが腐ったような異臭が混じっりあった匂いが立ちこめていて、昼なのに夜のような闇の瘴気を纏っていた。そこはまるでるで、現世の地獄であった。今までなにげない日常があった街並みが、一瞬にして血に染められてしまったのだ。



 「!!」流石のノエリーも、これを見てただ平静ではいられない。

 「急いで! ケーナ! これは、まずいっ!」


 「わかってる! わかってるよ!」



 馬は、死体をよけながら走る。

 2人の待つ、通い慣れたその家へ。





 


 



 


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