コーヒーの味
ファリーダはレイルの居候を承諾した。
そして、洩れる過去の悲しい出来事。
「へぇ、冥術師の試練に挑むんだ。君、すごいねぇ。」
ファリーダは、コーヒーを白いカップに入れて、椅子に座ったレイルとケーナの前に置いた。
この国の独自製法で作られた「デルマリン」と言う名前のコーヒーだとケーナがレイルに教えた。
レイルが一口それを啜ると、独特の酸味が口の中に染みわたった。食後には、最高の味だった。
「いいよ、面倒見てあげる。部屋もあいてるし、一人くらいなら十分大丈夫だよ。」
「ありがと、ファリーダ。恩に着るよ。」
「気にしないで、この子がいた方がこっちとしても気が和みそうだからさ。妹のアーニャが死んでからずっと寂しい思いをしてたからね。」
レイルは、えっ? と声を出した。
「ああ、レイルは知らないよね。ファリーダは妹と2人で暮らしてたんだけど、去年その妹さんが死んじゃってね……良い子だったよ。私とはとっても仲良しだったんだ。」
「そうなんだ……」レイルは、カップを持ちながら少し俯く。
「こらこら、気にしなくてもいいって。ファリーダももう立ち直ってるしさ。それより、居候させて貰えるんだから素直に喜びなよ。」
「うん。 ファリーダさん、ありがとうございます! レイルと言います、よろしくお願いします。」
レイルはが丁寧に頭を下げると、ファリーダはまかせておいてとばかりににっこりと笑った。