誕生日
祝勝会で楽しく盛り上がるレイル達。
「あはは、冗談だよ、冗談!」
「もう! 意地悪!」ケーナは口をぷーっと膨らませ、ノエリーの方を睨んだ。
「まだまだ、あんたも子供だねぇ。まあ、そう言うところが可愛いんだけど」
2人がそんなやりとりをしている最中、ファリーダがパチンと手を叩いた。
「あ、そういえば」
「何ですか?」レイルが尋ねる。
「もうすぐ、ケーナの誕生日だね! 光陽の月の14日……もうすぐじゃないか!」
ケーナは、自分のことなのにハッと今気付いたような反応をした。
そして、ファリーダの方を振り返る。
「そうそう、そうなんだよ! 祝勝会の次は誕生日パーティだね!」
「お城の方でやるの?」レイルが聞く。
「まあ、そっちもあるけど……ここでやるんだよ、今日みたいに!」
「そっか、じゃあ何かプレゼントでも用意しないとね!」
「えっ? レイル……わたしに何かくれるの?」それを聞いてケーナが目を輝かせた。
「うん」
「でも、お金あんまりもってないんじゃないの?」
「大丈夫だよ。エドガルドさんが言ってたじゃないか? 一人前の冥術士に認定された時には、国から助成金が出るって」
「あ、そうだったね! でも、そんな大事なお金で……」
「気にしないでよ。僕は、ケーナにプレゼントをあげたいんだからさ」
「レイル……ありがと」
蒼き髪の少女の顔がポッと火照る。
その表情は、レイルにとってとても艶めかしいものであった。
「よーし!」ファリーダが、右手をグッと握る。
「今年は1人多いからねぇ、去年よりももっとすごいケーキを用意してあげるからね!」
「わーい、楽しみだなぁ」と、ケーナより先に言ったのはノエリーだった。
「おいおい、去年は来なかったのに偉い乗り気じゃないかい? こういうの嫌いじゃ無かったの?」
「気にしない気にしない。なに、ちょっと面白くなってきたからさ…………」
ノエリーはレイルの方を、流し見る。
「少年、ケーナはお嬢様だからプレゼントを見る目は厳しいよ! よーく、選んで買って来るこったね!」
「はい!」
この時、ケーナの誕生日会が開かれる事を疑う余地はまるでなかった。
この時、誰が、予想できただろうか?
誕生日の日が、悲劇の始まりの日になろうとは。