祝勝会
冥術士の試練を全て突破したレイル。
免許皆伝は間近に迫る。
レイルとケーナは国に着くと、すぐにエドガルドのいる神殿に向った.
そして、エドガルドに<歩みの種>の苗木を渡すと、老人は頷き、良くやったと2人を褒めた。そして、5日後にデルアラスの一流冥術士として認可する儀式をとり行うから1人でこの神殿に来るようにとレイルに告げる。
2人はエドガルドとの用事が終わると、どっと体の疲れが出て、各自家に戻ると死んだように眠ってしまった。
そして、2日たったその日の晩、ファリーダの家でレイルの冥術士昇格を祝して食事会が開かれた。参加したのは、レイルとファリーダ、ケーナと色々頼りになった学者のノエリーだった。4人は、グラスにデルアラス酒造特製シャンパンを入れて、乾杯の音頭とともに、互いのグラスを合わせて鳴らした。チリンチリンと綺麗な音が部屋の中に鳴り響いた。
ファリーダが1人で作った料理は、豪勢で机の上を賑やかにするだけでなく、食欲をそそった。ケーナもレイルも食べ物が揃うとすぐに食べ始める。学者のノエリーは腕組みをしてそれを暫し眺めていた。
「はー、君達食いしん坊だねぇ」
「ノエリーも食べなよ? そんな風にジロジロ見られると恥ずかしいんですけど」
「悪いけどケーナ、私はゆっくりおしとやかに食べるほうなんでね。あんたみたいに子供っぽくがっついたりしないの」
「ふん、悪かったわね!それに、ノエリーにおしとやかなイメージなんてまるでないと思うんだけど?」
「それはグサリだな~でも、こう見えても私って女の子なんだよ? プロポーションとかも気にしてダイエットもしてるんだから」
「ノエリーは本の虫だから、食べる事に気がいかないだけじゃないの?」
「さらに、グサリだわ。ファリーダ、子供って残酷なこと言うよね」
ファリーダは、にっこり笑った。
「まあ、ノエリーだから言うんじゃないの? 正直、あなたって色気ないしね」
「お主までグサッと言うかっ! …………流石に、ちょっとヘコむわ」
「すこしは、知識集積以外の事にも目を向けてみたら? 顔としては、そんなに悪くないわけだし」
「え、そう? さすがファリーダ、けなした後で持ち上げるとは粋な事をするねぇ」
「ふふっ、ま、童顔なのはどうしようもないけど」
「前言撤回!」
食卓は、和やかなムードに包まれていた。
そこにいるだけで、レイルは何だか幸せだった。祖国にいた頃だって、こんな楽しくて幸せな思いをした事は無かった。
「ところでさぁ、ケーナ」机に肘をついてノエリーが言う。
「な、何よ?」
「単刀直入に聞くけど、あんたレイルとどこまで言ってるの?」
「ちょ! ちょっと!」
焦り、顔が赤くなるケーナを見て、ノエリーはイタズラッ子のように二ヒヒ笑う。
「いまさら、何を戸惑ってんのよ? あんたがレイルのこと好きな事くらい、私もファリーダもずっと前からわかってるんだからね!」
「誤解しないでよ! 私とレイルはそんなんじゃ……」
「照れちゃって可愛いなあ。でも、素直に認めた方がいいと思うよ? そうじゃなきゃ、私がレイル君をゲットしちゃうかもしれないし~」
「ノエリー!」
ケーナが、机をドンと叩いて立ったので。レイルはビックリした。
ただでさえ、自分が好きかどうかの話でドキドキしていたので、心臓が飛び出そうになった。先日、凶悪な魔物と戦った人間と同一人物とは思えないくらい、レイルはいつもの恥ずかしがり屋の少年に戻っていたのだった。