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砂塵りのケーナ  作者: 束間由一
第二章:愛の輝き
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想い、胸に


 ダモロクロスの要塞で、レイル達は<歩みの種>の苗木を手にれた。

 しかし、それにはファムナの命が犠牲になった。



 要塞の帰りは、幸いにスムーズであった。

 レイル達が行きで魔物達を多く倒していたため、数が減っていたのだ。それでも、体力をかなり消耗していた2人にとっては、長距離の移動だけでも大変だったが、何とか地上に出る事が出来た。外は、既に夜の闇で覆われており、金色の大きな満月が青い光を放ち、レイル達の疲れを少しだけ癒した。



 2人はすぐに砂漠馬にまたがると、月と星と地図を参考にデルアラスへの帰り路を急ぐ。砂漠の夜は涼しいから、そのうちに帰ろうと言う考えだった。走りだした馬は、たてがみをなびかせて、歩きにくい砂の地面を軽々と駆ける。涼しくて優しい風が、レイル達に吹き付ける。



 「ねえ、ケーナ」


 「なに?」


 「ファムナさん……ケーナと本当に血のつながりがあるのかな?」


 「多分ね。私の苗字、ファアールって言うでしょ? あれはね、<アール人にそくした者って>言う意味があるの。デルアラス王家はきっとみんな少なからずアール人の血を引いていると思うよ」


 「そっか……じゃあ、エメリナって人とケーナが似てるのも無理は無いわけか」


 「そ。頼りになるご先祖様だったね……ファムナは」


 「そうだね……でも、これでよかったのかな? やっぱり、いくら魔物の姿にされたからって、死ぬことを止めなくて本当に良かったんだろうか?」


 「レイル……」



 ケーナは、後ろを振り向く事は無く、馬を操りながら小さく笑った。

 


 「やっぱり、レイルって優しいよね。いいんだよ、そんなレイルだからファムナさんはこうする事が出来たんだから」


 「そんなこと……ケーナがいなかったらそもそもファムナさんは説得できなかったんだよ? ケーナのおかげだよ」


 「素直に認めなさいな。どう曲がってもレイルは良い子なんだから」


 「…………」


 「私達、ファムナさんの分もがんばって生きようね! それが、あの人の一番喜ぶことだと思うよ」

 

 「そうだね。この命、大事にしないと……」



 ケーナも悔やんでいないわけではなかった。ファムナからは、もっと色々な事を聞きたいと思っていた。しかし、過ぎた事にいつまでも捉われていてはいけないと考えた彼女は、そのような事を呟く事はせずに、前向きな、明るい声でレイルに語ったのだった。



 砂漠の砂の世界は、暫く少年と少女を包み込む。 

 長い長い見えない道が、夜の間ひたすらに続いた。そして、太陽が地平線から顔を見せた頃、その光を遮るように立つデルアラスの高い外壁が、2人の目に飛び込んできた。



 レイルは、まるでそこが故郷であるかのように暖かい気持ちに包まれたのであった。



 






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