砂漠の民の心意気
ケーナが親切にしてくれる理由を、レイルは尋ねる。
「けほっ、ありがとうケーナ。色々とお世話になっちゃって……」
「いいんだよ、気にしないで。」
「ケーナ、どうしてこんなに親切にしてくれるの? 」
ケーナはフルーツジュースをひとすすりするとふーっ吐息を出した。
「この国の心意気ってやつかな? デルアラスの民は、外から来た客人はみんなこの国にいる間幸せな思いをしてほしい。そして帰る時もこの国は良かったって思ってもらいたいって言う気持ちがあるんだ。だからレイルにも、この国に来てよかったと思ってほしいの。良い思い出を残してほしいのよ。」
「そうなんだ。確かに、この国って良い雰囲気だよね。賑やかで楽しげで……こう言うところ、僕は好きだよ。」
「それはよかった! そう言ってくれると私も甲斐があるってもんだ。さあ、この人形焼きも食べちゃって!」
気を良くしたケーナは、自分の分の食べ物をどんどんレイルに与えたが、砂漠で何も食べていなかったレイルの腹はそれを全て吸収した。食べ物をたらふく食べた2人は一呼吸すると、再び馬にまたがり商業地を後にし、居住地を北西に向った。
辿り着いたのは、二階建ての一軒家だった。
白壁と全体的に四角い作りはこの国特有のものだったが点く明かりの燈す色はレイルに懐かしさを与えた。中からは香辛料のようなハーブのような匂いがした。ケーナはこの家の玄関に立つと、大きな声で聴きなれない言葉を放った。すると、中から一人の女性が扉を開けて出て来た。褐色で黒髪の美人であった。
「あら、ケーナ。こんな時間に何の用?」
「ファリーダ。悪いんだけどちょっと話聞いてくれる? この子が、ちょっと訳ありで塩居候させてくれるところを探してるんだけど。」
ファリーダと呼ばれる女性は、そうなのと答えるとケーナとレイルを家の中へと案内した。