80 お茶会
王城の庭園。色とりどりの花が咲き乱れる中、その華やかさに負けない華やいだ声が絶え間なくあたりを満たしていた。
庭園内、日よけのパラソルの下に設置されたテーブルにはたくさんの茶菓子と茶器が並べられている。テーブルを囲んで、きゃっきゃっと会話に花を咲かせているのは、王女ミルレイユ、ディナ、そしてリシェルだ。
リシェルはディナとともに、おしゃべりがしたいというミルレイユに招かれ、王城に来ていた。てっきり以前のようにクライルもいるのかと思ったら、今日はこの三人だけだ。
リシェルはクライルがいないことに正直ほっとしていた。王子がいたら、彼の護衛騎士も来るだろうから。今は、彼に会いたくなかった。会ってしまったら……自分の気持ちがはっきりしてしまいそうで、怖かった。
「さあ、今日は邪魔な男性陣もいないし、女同士、思う存分おしゃべりしましょう」
ミルレイユの弾んだ声で始まったお茶会は、想像以上に楽しいものだった。社交界の噂話から子供時代の思い出話、今話題のお菓子やドレスの流行まで、話題は尽きない。主に会話しているのはおしゃべりなミルレイユとディナだが、法院内のことしか知らず、世事に疎いリシェルにとって、二人の話す内容は興味深いもので、聞き役に徹していてもまったく苦ではなかった。とはいえ、二人とも適度にリシェルにも話題を振ってくれるので、疎外感を感じることもなく、瞬く間に時が過ぎていく。
やがて、話題は宮廷内で誰それが付き合っているとか、婚約したとか、恋愛話に移っていき、大いに盛り上がった。
「ディナ、それであなたはどうなの? エリックとは?」
王女の口から黒髪の騎士の名が出て、リシェルは内心どきりとした。問われたディナはにんまりとする。
「ふふ、なかなかいい感じですよ。よく二人で会ってますし」
「まあ、デートしてるのね?」
「いや、まあ残念ながらデートじゃないですけど……エリック様、ちょっと特殊な能力があって、それを調べさせてもらえないかってお願いしたら協力してもらえることになって。それで研究のために会ってるんですよ」
エリックの特殊な能力。破魔の力のことだ。ディナは彼の力を研究したいと言っていたが、既に協力を取り付けていたらしい。さすがに行動が早い。
「そうなのね。この間二人、とても仲良さそうにしてたから、てっきりもう恋人同士かと思っちゃったわ。あんな柔らかい表情のエリック、見たことなかったし。侍女たちがついにエリック様に恋人が〜って大騒ぎして、泣いてる子までいたわ」
「あ、やっぱりそう見えちゃいます?」
ディナは気をよくしたのか、得意げだ。
「美男美女ですごくお似合いだもの! リシェルもそう思うわよね?」
「え? あ、はい。思い、ます……」
ミルレイユに突然振られ、動揺しながらも、リシェルは頷き、同意した。
実際、エリックとディナはお似合いだ。どこか陰のある美貌の騎士と、明るく太陽のような美女。正反対の二人なのに、並ぶととても絵になるのだ。
寄り添う二人を想像した瞬間、きりっと胃が痛んだ。またディナに対して、嫌な感情が湧いてしまいそうで、浮かんだ像を必死で頭の中から消し去る。
そんなリシェルの思いを知らず、ミルレイユは優しく微笑んだ。
「私、リシェルとシグルトもとってもお似合いだと思うわ」
「そうですか? 年離れすぎだと思いますけど」
シグルトの名が出た途端、それまで上機嫌だったディナはややむっとした顔になった。
「そうかしら? 十歳くらいの差なんて別に珍しくもないと思うけれど。それにシグルトは若く見えるしね」
「まあ、そうですけど……でも、自分が引き取って育てた子に言い寄って結婚を迫るって、倫理的にどうかと思いますけど」
ディナは嫌悪感を隠そうともせず、顔を歪めた。
「そうねぇ。でもそれも貴族では似た話はよくあるわ。私のお母様なんて、八歳で十歳年上のお父様の婚約者になって、未来の王妃になるべく、成人まで城で育てられたわけだし」
「貴族って……」
「血筋と政略が最優先。本人の気持ちとか、倫理とか二の次なのよ。貴族の結婚なんて。だから、純粋な恋愛結婚ってすごく憧れるのよね」
王女はため息をはく。自分もいずれは望まぬ結婚を強いられるであろうことはわかっているのだろう。
気を取り直すように一息おいて、リシェルのほうへ向き直る。
「シグルト、この間叔父様に王都を離れる許しを取りに来てたわね。新婚旅行に行くって聞いたわ。どこへ行くの?」
その美しい緑の瞳は好奇心で輝いている。
本当に可愛らしい人だと、同性ながら見とれながら、リシェルは答えた。
「私、実は知らなくて……どこに行きたいかって聞かれたんですけど、私王都の外のことほとんど何も知らなくて……どこでもいいって言ったら、先生がいろいろ計画してくれているみたいで」
正直に言うと、王都の外で行きたい場所といえば、カロンなのだが、まさか新婚旅行の行き先にそんな場所を希望できるわけもない。かといって他の場所も思いつかず、シグルトに任せてしまったが、逆に一任されて何やら張り切っているようだった。
「そうなの。やっぱりシグルトが年上だし師匠だし、主導権握ってるのね。引っ張って行ってくれる、頼りになる男性っていいわよね」
「そうおっしゃるなら、ミルレイユ様があいつとご結婚されればよかったじゃないですか。あいつとの縁談話、途中まで進んでたって聞きましたけど?」
「え――?」
さらりと出てきたディナの言葉に、リシェルは思わずティーカップを持ち上げかけたまま固まってしまった。
ミルレイユは困ったように笑う。
「あ、かなり前の話よ? 私は王位継承権を放棄したいんだけど古い貴族が認めてくれなくてね……なら、王家の利益になる、みんなが納得するような相手に降嫁するってことで説得したらどうかって、叔父様が勧めてくださって……でも、シグルト本人がまったく乗り気じゃなかったし、むしろ貴族の中から、いかに国の英雄といえど、貴族の家柄じゃない人間と王族の結婚はありえないって反対が出て、なくなったけど」
「本当、貴族って嫌な奴多いですよね。何かといえば血筋血筋〜って。戦争で勝つために散々魔道士を利用して、導師には媚びへつらうくせに、陰では魔道士のこと所詮平民だの卑しい血筋だのって馬鹿にしてるし」
ディナの貴族批判に、最も高貴な血筋であるミルレイユはただ苦笑している。
血統主義の貴族と実力主義の魔道士。まったく異なる価値基準を持つ両者は、お互いによい感情を持っているとは言い難い。現国王ジュリアスが戦争で勝つため、重要な戦力である魔道士を重用するようになってから、魔道士の地位は一気に向上し、最高位の魔道士である導師たちの政治的発言力も強まった。
今では力ある魔道士に貴族たちが擦り寄っていくのはよくあることだ。その実、貴族の中にはそのほとんどが平民出身である魔道士たちを蔑む者も少なくない。
だが、今はそんなことよりも。
「ミ、ミルレイユ様は、先生との縁談、どう思われてたんですか?」
リシェルにとってはそちらのほうが気になった。
シグルトは乗り気でなかったようだが、もしかしたらミルレイユは違ったかもしれない。もし彼女がシグルトに好意があったとしたら……あるいは今も……胸がざわざわと落ち着かない。
問われてミルレイユはなぜか眉を寄せた。
「そうね……正直に言うと、叔父様には話が出た時点で即お断り申し上げたわ。シグルトには家庭教師としてお世話になったし、別に嫌いではないけれど、その……礼儀正しいし、人当たりは悪くないんだけど、時々言動に性格の悪さが隠しきれてないというか、人間性に問題を感じるというか……まあ、ちょっと結婚相手としてはありえないと思って」
あまりにも率直な物言いに、ディナが吹き出した。ミルレイユははっとして、目を白黒させているリシェルに必死で首を振って見せた。
「あ、ごめんなさい! いや、素敵よ! シグルト素敵だと思うわ! うん!」
「ミルレイユ様、今更遅いですよ」
焦る王女を見て、肩を震わせ、目元に浮かんだ涙を指先で拭いながら、ディナは続けた。
「あいつ、かなりの数の縁談話が出てたけど、本人が全部断ってたのは世のご令嬢方には幸いだったわね。不幸にならずに済んで。私も成人した時、おじいちゃんにあいつとの縁談勧められたけど、今思い出すと鳥肌立つわ……」
「え、ディナも?」
これもリシェルにとって初耳だ。
シグルトに縁談が数多くあったことは噂を聞いて知ってはいたが、まさかこの二人ともそういう話があったとは。
シグルト本人は実際のところ、そういった話をどう思っていたのだろう。少しは心を動かされたりしなかったのだろうか……
「ディナ、その言い方だとリシェルが不幸になるみたいじゃないかしら?」
「いやいや、ミルレイユ様も言ってたことほぼ同じですよね?」
ディナの指摘に、王女はごまかし笑いを浮かべた。
「あ、いや、でも、ほら。シグルトはきっとリシェルには違うのよ。シグルトのリシェルを見る目、それはもう怖いくらい優しいもの。実際、リシェルには優しいって言ってたものね?」
「あ、はい。優しい、です……」
性格が悪い。人間性に問題がある。
ディナはともかくミルレイユまでがそんなことを言うとは。確かにブランやクライルも似たようなことを言っていたし、自分が気づいていないだけで、師にはそういう一面があるのだろうか。
リシェルは今までシグルトに対して、そう思ったことはなかった。確かに、仕事はすぐさぼるし、ふざけてばかりの師は、決して模範的な人格者などではないだろう。だが、過去の罪を悔い、亡き弟子の願いに応えて、自分を救い、これまで守ってきてくれた彼が、悪い人間だとは、リシェルにはとても思えなかった。
「優しい、ねぇ……それも今だけかも。人間性なんてそう簡単に変わらないんだから。あいつもそのうち本性出すわよ。考え直すなら今のうちよ? リシェル」
眉をしかめ、手近にあったお菓子をばりっと頬張りながら、ディナは忌々しげに言う。
「ディナったら。リシェルと出会ってシグルトだって変わったのよ。あの優しい眼差しを見ればわかるわ。昔より雰囲気も柔らかくなったし。真実の愛は人を変えるのよ」
ミルレイユは熱く持論を述べると、リシェルの左手に視線をやった。
「リシェル、その指輪、婚約指輪よね? とっても素敵だわ」
うっとり見つめるミルレイユに対して、ディナは半眼になって、リシェルの薬指の銀の輝きを睨んだ。
「それ……王室御用達の宝飾店のやつね。まあ、あいつ金だけはやたら持ってそうだしね。昔の活躍で陛下からたんまり褒賞金もらってたけど、地味〜な生活してるから全然使ってないっぽいし。離婚するときにふんだくってやればいいわ、リシェル」
「もう、ディナは本当にシグルト嫌いなのね」
どうあってもシグルトを悪く言いたいらしいディナに、ミルレイユも呆れ顔だ。
「ええ、そりゃあもう……私が男だったら、リシェルを口説いて、結婚式で花嫁を奪ってやりたいくらいですよ」
「それはそれで物語みたいでときめく展開だけど……花嫁を連れて逃げても、魂の羅針盤ですぐに見つかっちゃうんじゃないかしら?」
「魂の……羅針盤?」
聞き慣れない単語にリシェルは聞き返した。
「あら、リシェルもシグルトと交換するんでしょう?」
「ミルレイユ様、魂の羅針盤なんて魔道具、よくご存知ですね」
ディナが驚くと、王女はテーブルに手をついて身を乗り出した。
「もちろん。ディナ、あなたもしかして、まだローラの新作小説読んでいないの? 今度の話は魔道士同士の恋愛なのよ。それに出てきたの!」
「あー、そういえば新作出たんですよね……ここのところ忙しくて……早く買いに行かなきゃ」
「あの、魂の羅針盤って?」
リシェルが問うと、ミルレイユは不思議そうに首をかしげた。
「あら、リシェル知らないの? 魔道士にとっては当たり前のものかと思ってたわ。魂の羅針盤っていうのは、魔道士が作る魔道具で、いつどんな時でも、自分の居場所を常に指し示すものなんですって。魔道士同士で結婚する時、お互いの羅針盤を交換するんでしょう?」
「まあ、それ結構古い習慣で、最近はやらない夫婦も多いですけどね。常に相手の居場所がわかるから、浮気防止になるし、安否確認に使えて便利だけど」
ミルレイユの説明に、ディナが補足するように言った。
「作り主が死ぬと羅針盤も割れるのよね? 私、小説の最後で本当に感動したのよ。主人公が、ようやく結ばれた恋人の羅針盤が突然割れて、彼の死を知るっていう場面がもう泣けて泣けて……」
「ミルレイユ様! ちょっと私まだ読んでないんですから!」
「あ、ごめんなさい!」
ミルレイユはしまったと、慌てて自身の口を手で塞いだ。
リシェルは騒がしい二人のやり取りを微笑ましく笑って見ていたが、ふと視線を感じて、上を見上げた。
城の窓の一つから、見覚えのある、ふわふわした茶髪の男――クライルがへらへら笑いながらこちらに向かって手を振っている。そして、その背後には、彼の影になって顔は見えないものの、黒髪の騎士の姿があった。
リシェルはさっと素早く一礼だけして、すぐに窓から目をそらした。
心臓が、ばくばくと音を立てていた。
「ふふ、姉上楽しそうだなぁ」
クライルは窓の下を見下ろしながら、目尻を下げた。
「いいなぁ、美女三人のお茶会、僕も混ぜて欲しかったなぁ。絶対邪魔するなって姉上に言われちゃったけどさ」
「……」
彼に付き従う騎士の方は何も応えず、その眩しさを避けるかのように、窓から顔を背けていた。
「エリック、ここ最近元気ないよね? どうしたの?」
「……いえ、別に」
「ふーん。もしかしてリシェルちゃんの結婚が決まって、落ち込んでるみたいな?」
「……なんで俺が落ち込むんです?」
クライルはへらっと笑うと、下からエリックの顔を覗き込む。
「そうだよね。君にはディナいるもんね。しょっちゅう会ってるみたいだし、もう付き合ってるのぉ?」
「……何か誤解されているようですが、ディナとは別に何もありませんよ。ただ彼女の研究に協力してるだけです」
「ふーん……じゃあ、リシェルちゃんとは何かあるの? 君が他の女の子と態度違うのって、あの二人だけだもんね? どっちが本命?」
「……二人とも何もありません」
エリックは疎ましげに主から顔を背ける。クライルはなおも逃すまいとするように、しつこく回り込んでその秀麗な顔を見上げた。
「ねえ、僕ずっと気になってるんだけど、君とリシェルちゃんってどういう関係?」
「別にな――」
「何もないことないよね? この前の宴会といい、君、やたらとリシェルちゃんのこと気にかけて世話焼いてるし。同じカロン出身、同じ黒髪、シグルトとの関わり……これだけ揃って、何もないってのは無理あるんじゃない?」
「……あなたには関係ない」
好奇心なのか、一見無邪気に輝く緑の瞳を、黒い双眸が睨み下ろす。
腹心の部下に突き放されても、クライルは気にした様子もなく、くすっと笑ってエリックから離れた。再び窓のそばへ行き、下へと視線を落とす。
「もしかして僕と一緒だったりして」
窓の下では彼の言う美女三人のお茶会がまだ賑やかに続いている。だが、彼がその目に捉えているのは一人だけだ。
「でも僕はさ、ミリィが誰と結婚しても、笑ってお祝いしてあげるよ。……弟だからね」
何でもないことのように言う声に、わずかに混じる切なさに気付いて、エリックは目を伏せた。
クライルはふと、首を傾げる。
「ん? あれ? ……いや、リシェルちゃんが僕と一緒なのかな? 僕が思うにリシェルちゃん、君に惚れてると思うよ」
「そんなわけないでしょう?」
エリックは伏せていた目をわずかに見開き、何を言っているんだとばかりに、即座に主の言葉を否定した。
「はは、ほんと、君ってあいつと真逆だよねー」
クライルはおかしそうに声を立てて笑った。
「?」
「自分のことより、相手の幸せを一番に考えるタイプ。そこは僕と同類なんだよなぁ。だから僕は君のことも実は結構好きだよ」
「……」
「でも、神様って意地悪でさ。君や僕みたいな良い奴には、試練ばっかり与えるの。悪い奴には権力だの魔力だのあげるくせにさ」
クライルが何を言いたいのか計りかね、エリックは怪訝そうに主を見つめ返した。
「ま、君がリシェルちゃんとの関係を言いたくない、言えないって言うなら、別にいいんだけど」
クライルは芝居がかった動きで両手を広げた。
「君とリシェルちゃんの関係が何であれ、普通に考えて、リシェルちゃんは君よりシグルトと一緒になったほうが幸せだよね。かたや国の英雄で大陸中に名の知れた大魔道士、かたや一介の騎士、しかも実は国王に楯突く反乱軍の一員で、ばれたらいつ処刑されるかわからない身の上だ」
「……」
「僕もリシェルちゃんのことは大好きだし、出来ればこのまま幸せになって欲しいなぁ」
エリックがぎゅっと拳に力を入れるのを視界の端で捉えながら、クライルは脳天気な調子で続ける。
「ということで僕、リシェルちゃんとシグルトの結婚式、行くつもりだから。シグルトが駄目って行ってもお忍びで押しかけるもんねー。リシェルちゃんの花嫁姿、絶対可愛いよぉ」
にへらっとだらしなく笑いながらも、真っ直ぐに部下を見つめる。
「……君もそこで区切りつけてさ、リシェルちゃんのことは忘れたら? 君の容姿と才覚なら、もっと人生楽しく面白おかしく生きられるよ。何があったかは知らないけどさ、過去だの復讐だの……叶わない恋だのに囚われて生きるのなんて、もったいないと僕は思うなぁ」
「……」
「ま、僕が言えた立場じゃないんだけどね〜」
クライルはくるりとエリックに背を向けると、片手をひらひらさせながら、その場を後にする。
「ということで、その時は護衛よろしくー」
「……」
エリックもまた、主に続いて歩き出す。
窓の前を通り過ぎる時、眼下でディナとミルレイユに何やら詰め寄られ、リシェルが困ったように笑っているのが見えた。彼女たちの賑やかな声が聞こえて来そうな、うららかな日差しの中繰り広げられる、平和で穏やかな光景。
もし、彼女にすべてを打ち明けたら。
自分は彼女の今の幸せすべてを壊し、奪うことになるだろう。
大切な友人たち、不自由のない暮らし、国中の人々から祝福される結婚、信じて愛する婚約者……すべてを。
結局、自分が彼女に与えられるものは絶望しかない。
幸せにしてやることなんて出来ない。
「エレナ……お前もこのままの方がいいって……きっと思うよな……」
エリックは少女の笑顔から視線をひき剥がすと、主の後を追った。
お読みいただきありがとうございました!