26 魔道士名鑑
家に着くと、リシェルはほっと息をついた。
王子たちとお茶をした後、シグルトはリシェルを気遣って、法院には戻らず、そのまま家に帰ることにしてくれた。ずっと緊張していたせいで、疲れ切っていたリシェルには、早めの帰宅は正直有難かった。
夕食を早めに済ませ、居間のお気に入りのソファに座って、あたたかいお茶を飲むと、ようやく固くなっていた身体と気持ちがほぐれていく。
「今日は疲れたでしょう?」
シグルトに労わるように問われ、リシェルは正直に頷いた。
「でも、なんていうか、充実してました」
今日一日でたくさんの人と会った。六導師、国王ジュリアス、クライル、ミルレイユ……シグルト以外の人間とはあまり関わらない生活を送っていたリシェルにとって、こんなに活動的な一日を過ごしたのは初めてだった。一気に世界が広がった気がする。
導師会議と国王との謁見は緊張したが、クライルたちとのお茶会は楽しかった。初めこそ緊張していたが、次第にそれもほぐれた。王族だというのに気取ったところのないクライルとミルレイユの気さくな人柄のおかげだ。
それに、師がちゃんと働いている姿を初めて見ることができた。
「先生、ちゃんとお仕事されてたんですね」
導師会議の進行役を務めていた師は、落ち着いて議事を取り仕切っており、リシェルは素直に尊敬した。
弟子の言葉に、シグルトは苦笑する。
「私だって一応給料分の仕事はしてますよ。責任感だってちゃんとあります。やりたくない仕事だってほったらかしにしないで、ちゃんとブランに頼んでいるし」
「……そういうの、責任感あるって言います?」
嫌々ながらも、結局断り切れずにシグルトの仕事を代わりに引きうける、人のいいブランの顔が浮かぶ。あのパリスの一件で、ますます断りづらくなったに違いない。ブランも災難だ。
「やる気のない自分がやるより、真面目に働いてくれそうな人に仕事を任せるっていうのも、責任感だと思いますけどねぇ」
「屁理屈ですよ、それ」
やる気がないと自ら認めた師に、リシェルは苦笑いして、お茶の入ったカップを傾けた。
リシェルがお茶を飲み終えるのを待って、シグルトが口を開く。
「……リシェル。あのエリックという騎士のことですが」
急にエリックの名前を出されて、リシェルはどきりとした。エリックは、シグルトを水場に案内して戻ってきてからもほとんど口を開かず、結局一度も話すことができなかった。
「パリス君のせいですっかり聞きそびれてましたが、夜会の時、一緒に踊っていましたね」
「え、ええ。誘って頂いて……」
シグルトの声は淡々としていて、別に責めるような口調ではなかったが、罪悪感のようなものを感じた。結婚の申し込みをした相手が、その直後に他の男と踊っていたら、誰だって気分はよくないはずだ。
「彼と……何か話しましたか?」
カロンについて話した。そして――
――あいつを信用するな。お前が思っているような奴じゃない――
そんなこと、言えるわけがない。
「いえ、別に何も……なんでそんなこと聞くんですか?」
リシェルはごまかし、逆に尋ねた。
なぜそんなことを気にするのか。やはり、今日王城でエリックと二人きりになった時に、何かあったのだろうか。
「……口説かれていたわけじゃないなら、いいんですよ」
シグルトは首を振って微笑んだ。
「さあ、ちょっと早いけど今日はもう休みましょうか」
「え? もう?」
「君も今日は疲れているだろうし、明日もあるからね」
「そうですけど……」
思わず不満げな声が出てしまった。それに気づき、シグルトが首をかしげる。
「どうしました?」
「あの……先生何か忘れてません?」
「ん? 何だろう?」
「ほら、私も今日から正式に先生の弟子になったわけですし……」
リシェルは弟子という単語を強調して、なんとかシグルトにわからせようとする。
「ええ、そうですね。今日はあちこち引っ張り回されて疲れたでしょう。早く休んだ方がいい」
「いえ、全然疲れてません!」
リシェルは力強く首を横に振った。
「今から授業でも修行でもなんでも出来ます」
ようやく、シグルトはリシェルが何を言いたいのか理解したようだった。だが、少し困ったような、面倒そうな顔を見せる。
「いや、私は疲れてるから早く寝たいんだけどねぇ……」
「先生……」
弟子のじっとりと恨むような視線に、
「はいはい、わかってますよ」
シグルトは笑いながら立ち上がり、居間の本棚の元へ行くと、一冊の本を取り出し、リシェルに差し出す。
“魔道基礎入門”
そう題された薄い本だった。
「先生、これ……?」
「魔術学院の初等科の、一番初めに使う教科書です。まずはこれを読んで、基本事項を理解するところから始めましょうか」
「あ、ありがとうございます!」
リシェルはシグルトから本を受け取ると、ぎゅっと胸に抱きしめて礼を言った。
ようやく、シグルトが魔法を教えてくれる。本当に魔道士への一歩を踏み出せたのだ。嬉しさがこみ上げてくる。
期待感いっぱいに、受け取った本をさっそくぱらぱらとめくり始めたリシェルを、シグルトはじっと見つめる。師のどこか不安そうな表情に、夢中になっている弟子は気づかなかった。
次の日、リシェルは法院内にある図書館へと向かって歩いていた。
正式な弟子になったといっても、仕事内容が大きく変わるということもなく、今日のところは今までと変わりない一日だった。今まで通り、シグルトにお茶を入れたり、言いつけられた書類を届けに行ったり、簡単な計算をしたり……一言で言ってしまえば雑用だ。
でも、リシェルはずっと上の空だった。そわそわとして落ち着かない弟子に、シグルトは苦笑いして、仕事はもういいから図書館で勉強するようにと言ってくれた。リシェルは大喜びで師に礼を言い、早足で図書館へと向かった。
昨日シグルトから渡された本を、しっかり腕に抱いて歩く。早く読みたくて、昨夜はほとんど眠れなかった。それでも眠気など感じないほどの興奮のおかげで、すれ違う魔道士たちが向けてくる冷たい視線も、今はまったく気にならない。
「何一人でにやついてるんだよ。気持ち悪い奴だな」
図書館の入り口で、投げかけられた声に振り返れば、難しそうな書物を小脇に抱えたパリスが、怪訝そうな表情で立っていた。
「え、にやついてる?」
リシェルはとっさに自分の顔を押さえた。嬉しい気持ちが、気づかないうちに表情に出ていたようだ。
「なんかいいことでもあったのか? ……って、随分懐かしいもの持ってるな」
パリスはリシェルが胸に大事にそうに抱える本に目を止めた。
「昨日先生がくれたの」
「ふ~ん……お前が魔法使えるようになるまで、先は長そうだな」
その言葉に、浮かれていた気持ちが少ししぼんだ。パリスの持つ分厚い書物と、自分が持っている薄い本を見比べる。その厚さと重さの違いが、彼と自分の間にある、圧倒的な知識と経験の差なのだろう。
「パリスは初めて魔法を使えるまで、どのくらいかかったの?」
「僕か? 僕は魔術学院に入学して二週間後くらいだったかな。同期入学の連中の中で一番早かった。才能ない奴は一年経っても使えなくて退学になってたけど」
魔術学院に入学後、一年経っても初歩の魔法すら使えなかったものは、退学処分となる。その話はリシェルも聞いたことがある。
神童と言われるパリスで二週間。自分はいったいどれくらいで魔法を使えるようになるのだろう。
「どうしたらそんなに早く使えるようになるの? 努力? コツとかあるの?」
「才能だよ、才能。魔法に関してはそれがすべてだ。それがなきゃ、努力もコツも無意味」
パリスの身も蓋もない答えにリシェルはがっくりした。
才能。そんなもの、自分にあるだろうか。
「僕はもともと魔力が強くて、よく力を暴走させてたくらいだったしな。屋敷中の窓を粉々にしたり、使用人に怪我させたり……先祖伝来の茶器を壊したときに、父上に無理やり魔術学院に入れられたんだ」
「自分で希望して入ったわけじゃないの?」
てっきり、シグルトに憧れて魔道士の道を志したものだと思っていた。
「最初はな。僕は叔父のラスコー将軍みたいな、強い軍人に憧れてたからさ。魔道士なんかになりたくないって思ってた。シグルト様に出会わなかったら、なんの努力もしないで才能を腐らせてただろうな」
パリスはリシェルが持っている入門書を懐かしそうに見つめながら言った。昔を思い出しているのだろう。
「お前は魔術学院には通ってないから知らないだろうけど、最初から魔道士になりたくて入学してくる奴はたいしたことない。逆に嫌々入れられた奴程優秀なんだ。子供の頃、強い魔力を制御できなくて、暴走した結果、身内や周囲の人間に強制的に入れられるっていうのが大半だからさ」
「へえ……」
魔力の暴走。自分は一度もそんな経験をしたことがない。ということは、自分にはたいした魔力はない、ということか。
ふと疑問が浮かんだ。
「じゃあ、嫌々この世界に入れられる人がいるってことは、自分から魔道士を辞める人もいるの?」
「さあ? 聞いたことないな。魔道士やってれば、それなりの生活は保障されるし、辞める奴なんかいないと思うけど」
「でも、先生の前の弟子のアーシェは、自分から弟子を辞めたって……」
アーシェの名前を出した途端、パリスの顔が急に強張った。
「お前、それ、シグルト様が言ったのか?」
「う、うん」
「そうか……あの噂、本当だったのか……」
「あの噂?」
聞き返すと、パリスは首を振って強い口調で続けた。
「なんでもない。それよりお前、法院内で彼女の名前出すなよ。特に、シグルト様とルゼル導師の前ではな」
「な、なんで?」
「なんでもだよ。彼女に関する質問も一切なしだ。……お前ははぶられてたから知らないかもしれないけどな、この法院内では“暗黙の掟”っていうのがいろいろあるんだよ。お前もシグルト様の正式な弟子になったわけだし、そういうのちゃんと知っておけ」
リシェルを蔑んでいた魔道士たちの筆頭とも言える存在がパリスであったのに、こんな言い方をされるのはどこか釈然としない。
むくれるリシェルに、パリスは今度はためらいがちに言った。
「あのさ」
「何?」
「あの……昨日クライル王子と一緒にいた、エリックとかいう騎士のことだけど……あいつ、お前の知り合いなのか?」
リシェルはエリックとの出会いの経緯をどう言おうか迷ったが、正直に答えることにした。
「うん。えーと……最初にあのロドムって人の仲間に攫われそうになった時に、助けてもらったの」
気まずい空気が流れることを心配して様子を伺うが、
「……そうか」
パリスは何か考えるようにして黙り込む。だが、リシェルに対して罪悪感を感じて……というわけでもないようだ。
「エリックさんがどうかした?」
「……いや、ちょっと知り合いに似てる気がしただけだ。じゃあな。しっかり勉強しろよ」
パリスはそれ以上の会話を避けるように、一方的に言い残すと、さっさと行ってしまった。
法院内でアーシェの名前を出してはいけないという、パリスの言う“暗黙の掟”。その理由を知りたかったが、あの様子では、パリスもアーシェのことについては教えてくれそうもない。
(一体何があったんだろう……?)
気になって仕方ないが、パリスはあの様子だし、シグルトにも直接は聞きづらい。今度ブランにでも聞いてみようか。
そんなことを考えながら、リシェルは図書館に入り、人気のない場所を選ぶと、備えられた机と椅子に陣取った。
わくわくとしながら、シグルトから渡された入門書を開く。
――――魔法とは、魔力を生成・制御し、一定の効果を生じせしめる技術のことである。魔法には大きく分けて、次の三種類がある。自然現象を人為的に引き起こす自然魔術、精神に直接働きかける精神魔術、人間とは異なる次元の存在を操る召喚魔術がある。魔力はすべての人間が潜在的に持っているが、その強さは個人差が大きい。一定量以上の魔力がなければ、最も初歩の技でも現実に行使することはできない。特に、召喚魔術には多大な魔力を要する。
ここまでは理解できる。
――――では、魔力とは何か。魔力とは個々の魂が持つ固有の波動であり、その強さは一生を通じて変化することがない。修練によって潜在的な魔力の発現を高めることは可能だが、生まれながらに持っている魔力以上の力を引き出すことは、一部の方法を用いた場合を除き、不可能である。
つまり、先程パリスが言っていたように、魔法を使うのは結局のところ才能、ということなのだろう。
――――また、魔力が強い場合、肉体に影響を及ぼすことがある。具体的には、髪や瞳の色の変色などがある。赤、青、緑といった自然界に多く存在する色に変化することが大半だが、この現象について詳しくは解明されていない。また、他にも肉体の不老や、逆に老化が急激に進むといった現象も報告されている。一説には、これらの現象は、魔力すなわち魂の波動と、肉体が持つ物質としての波動、どちらかの波動に変化が生じたとき、互いに相殺、あるいは増長し合うことによって起こるとされる。
……難しい。
魔術学院に入学したばかりの生徒たちは、本当にこれを読んで理解しているというのか。教師が授業でわかりやすく解説してくれるのだろうが、それにしても難しい。
少しでも理解しようと、本にかじりつくように読み進めた。
どれくらい経っただろうか。
時間を忘れて読みふけっていたが、やがて小さい文字を追うことに疲れ、リシェルは本から顔を上げた。
(ちょっと休憩しよう……)
リシェルは大きく伸びをした。
今座っている場所は、図書館でも角のほうに位置し、使用頻度が低い書物が並んでいるのか、人がまったくやって来ない。人目を気にしなくていので気楽だ。
ふと、すぐ横の本棚に収められている分厚い本の題が目に入った。
“エテルネル法院認定魔道士名鑑”
なんとなく手を伸ばして取り、ぱらぱらとめくってみる。人の名前と、その略歴がずらりと並んでいる。どうやら、法院が認定している魔道士の名簿のようだ。リシェルが手にしているのはつい最近発行されたばかりの最新版だった。
無意識に、今一番気になっている名前を探していた。
(アーシェ……)
索引で探すが、求める名前は見当たらない。
シグルトは弟子を辞めた、と言っていたから、法院にももう魔道士として名前が登録されていないのかもしれない。
リシェルはがっかりしながら、次はシグルトの名前を探す。今度はあっさりと見つかった。六導師だけ、本の一番最初にまとめて掲載されていた。
――――シグルト・アルフェレス。星暦1235年生。48年、魔術学院首席卒業。同年、先代導師オルアン・ギアーシュに弟子入り。57年、導師就任。論文に「召喚術応用による魔力及び知識継承の可能性」、「魔力供給による延命術の考察」など多数。得意分野は召喚魔術。
ここにもアーシェに関する記載はなかった。
だが、シグルトに関して、リシェルの知らないことばかり書かれている。
(先生って、召喚魔術が得意なんだ……)
そんな術を使っているのを見たことがない。そもそも召喚魔術とはどんな術なのか。
「何を調べているのかな?」
突然、頭上から降ってきた若い男の声に、リシェルは反射的に本を閉じ、背後を振り仰いだ。
緋色の瞳と視線がぶつかる。
そこに立っていたのは、柔らかな微笑を浮かべ、自分を見下ろす金髪の美青年。
(ヴァイス導師……!)
「こんにちは。シグルト導師のお弟子さん」
「こ、こんにちは……」
思わぬ人物の登場に、身体が強張る。立ち上がって挨拶すべきだとは思ったが、すぐ背後に立たれているせいで、それもできない。
「何かわからないことがあったら、遠慮なく聞いてくれていいよ」
「あ、ありがとうございます」
緊張で声がかすれる。単にリシェルが人見知りだからではない。彼は好意的な態度で接してくれているのに、リシェルはなぜか身構えてしまう。
「何か知りたいことでもあるのかな?」
「あ、いえ。先生に聞きますから……」
他の導師と関わるな。師の言いつけを思い出して首を振る。
ヴァイスはそんなリシェルを微笑んで見下ろしながら、柔らかな声音で言った。
「シグルト導師に……ね。でも彼にも、弟子には教えられない――――いや、教えたくないこともあるかもしれないよ?」
「教えたくないこと……?」
「例えば、君が今知りたいと思ってること、とかね」
ヴァイスが身を乗り出し、魔道士名鑑の上にそっと手を置いた。身体が密着し、まるで背後から包み込まれているかのような格好になる。
リシェルは目を見開いた。
まさか、彼にはリシェルが今何を調べようとしていたのか、わかっているのだろうか。
「あの――――」
口を開きかけるが、ヴァイスの端正な顔がすぐ目の前に近づいてきて、思わず黙る。
「君のその瞳の色……」
ヴァイスはいきなり話題を変えて、リシェルの目を覗き込んでくる。
「珍しい色だね……とても綺麗だ……」
間近に緋色の瞳があった。
血を連想させる、どこか不吉な色。
得体の知れない不安感が湧き上がってくる。
怖い。
そう思うのに、身体が動かない。
魅入られたように、その瞳から目を逸らすこともできなかった。
ヴァイスがゆっくりと手を伸ばしてくる。
その指先が、リシェルの頬に触れようとし――――寸前で止まった。
「……私の弟子に何か御用ですか?」
横手から現れた手が、ヴァイスの腕を掴んでいた。
「……先生」
シグルトがすぐ傍に立って、無表情にヴァイスを見ていた。
師がこんなに近くまで来ていたことに、まったく気づかなかった。
「いえ、ちょっとお話していただけですよ」
ヴァイスは手を引っ込めると、シグルトに微笑みかける。
「シグルト導師。可愛いお弟子さんですね。……僕も彼女みたいな弟子が欲しくなりましたよ」
「そうですか。あいにくこの子は私の弟子なんでね。頑張って他を探してください」
愛想笑いを浮かべるヴァイスに対し、シグルトの態度は素っ気なかった。
「ええ。そうします。……では、また」
しかし、ヴァイスは気にする様子もなく、リシェルにも優しい笑みを見せてから、濃紺のローブを翻して去って行った。
リシェルは緊張を解いて、ほっと一息ついた。
しかし、シグルトが不機嫌そうな表情で自分を見下ろしていることに気づき、再び身を強張らせる。
「……リシェル。ああいうナンパ男には関わるなと言いませんでしたか?」
「ええ!? 言ってませんよ? 他の導師に関わるな、とは仰いましたけど」
「同じことです。君は可愛いんだから、気をつけないと駄目ですよ」
「べ、別にそんなんじゃ……」
「じゃあ何をしていたんです? あんなに顔を近づけて?」
「……!」
シグルトの言葉に、先程の状況を思い出し、顔が熱くなる。確かに、かなり近い距離で見つめあっていた。
シグルトは溜息をついて肩をすくめた。
「……まあ、いいでしょう。さ、勉強が終わったなら帰りましょう。もう夕方ですよ。君は本当に勉強熱心ですねぇ」
シグルトは言いながら机の上に目をやった。机の上には閉じられた魔道士名鑑がある。リシェルは気まずい気持ちになった。シグルトはおそらく、リシェルがアーシェのことを調べていたのだと気付いたはずだ。
「……さ、行きましょうか」
しかし、シグルトは何も言わなかった。
リシェルは机の上のものを急いで片づけると、師とともに家路についた。
前回更新から1カ月近くあいてしまいました~(汗
12月頃までなかなか執筆時間が取れない状況でして、不定期更新になるかもしれません。。
見捨てずお付き合いいただけましたら幸いです(><)