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『話通り』

掲載日:2026/08/19

登場人物


● 漫画編集者(主人公)

▲ 漫画を持ち込んできた男

『話通り』



俺は漫画編集者をしている。


仕事柄、漫画家を目指す人から作品を持ち込まれることも珍しくない。


ある日、一人の男が編集部を訪ねてきた。


「漫画を見てもらいたいんですが」


男が持ち込んできたのは、一作のホラー漫画だった。


俺は原稿を受け取った。


●「さっそく見させてもらいますね」


▲「はい」


男は小さく頷いた。


俺はページをめくっていく。


漫画の主人公は、一人の男と向かい合って話をしていた。


物語が進むにつれて不穏な空気が強くなり、最後には――


男が横に置いていたカバンへ手を入れる。


そして、カバンに入っていたナイフを取り出し、主人公を襲う。


そこで漫画は終わっていた。


俺は原稿を机に置いた。


●「面白かったです」


男の表情が明るくなる。


俺は特に印象に残った場面について話した。


●「特に最後、犯人がカバンに入れていたナイフで主人公を襲うところがよかったです。最後まで犯人だと分からないのもいいですね」


男は嬉しそうに笑った。


そして、こう言った。


▲「実はこの話、フィクションじゃないんですよ」


●「そうなんですか」


実際にあった事件を題材にした漫画なのだろう。


そう思った俺は、何気なく尋ねた。


●「その話の題材って、何て調べたら出てくるんですか?」


▲「……」


男は何も答えなかった。


●「……?」


しばらく沈黙が続く。


さっきまで嬉しそうだった男の表情から、笑顔が消えていた。


やがて男が口を開いた。


▲「出てきませんよ……」


●「えっ?」


思わず手からペンを落としてしまった。


カラン。


ペンが床を転がる。


俺は拾おうとして机の下へ手を伸ばした。


そのとき、ふと男の横に置かれたものが目に入った。


黒いカバン。


男はいつの間にか、


そのカバンの中に手を入れていた。


『話通り』


――終わり――

最後まで見てくれてありがとうございました。

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