第6話 チョコ・チート
Side:タイセイ
村の広場ではクロエちゃんと5人の子供が遊んでいる。
どこか懐かしい風景だ。
クロエちゃんに呼ばれた。
「巡礼者のタイセイよ」
クロエちゃんが子供達に俺を紹介した。
瞬く間に子供達に囲まれた。
あまり外部の人が来ない村なんだろうな。
子供達の目は興味津々だ。
「巡礼者だって?」
そう赤毛の男の子が驚いた様子で言った。
そうだな。
俺も巡礼者は見た事がない。
日本でもそう言われたら、驚いただろう。
「おいら初めて見た」
と言った子供は緑色の髪だ。
俺はお前の髪の色を初めて見たと言いたい。
「どこから来たの?」
金髪の女の子が問うた。
これにはどう答えよう。
「面白いお話、聞かせて」
灰色をしている髪の女の子がせがんだ。
あまり話し過ぎるとボロがでそうだ。
「アルフィナ教徒なんだ?」
黒髪のどこか探るような目つきの女の子。
やばい、疑われている。
問題はアルフィナ教徒という言葉だ。
信徒ではないから、うかつに答えるとボロが出る。
「ニホンという所から来たんだ」
「ニホンすげぇ!」
「アルフィナ教徒だと思うんだが、よく覚えてないんだ」
「お年寄りなの?」
「そうじゃない。強いショックで忘れてしまったんだ」
「かわいそう」
なんだか騙している気分でいたたまれない。
「タイセイは何の仕事をしてるんだ?」
「今はしてないな」
「ごく潰しだ」
「それは仕事してないお兄ちゃんに言ったのか。お兄ちゃんはごく潰しなんかじゃない」
クロエが赤毛の男の子と取っ組み合いの喧嘩を始めた。
「俺の為に争うのは止めてくれ。ごく潰しじゃない証拠を見せるよ」
チョコレートを俺は買うぞ。
高いのから安いのまで頭の中にメニューが浮かぶ。
無駄遣いも出来ないから、159円のこれでいいか。
12個入りのチョコレートが出て来た。
6人いるから2個ずつだ。
子供にはやさしく。
村人を利用し尽くすのに必要だ。
実験台でもある。
まさか、死んだりしないだろう。
「これ何?」
「チョコレートだよ。手で握ると溶けるから早くお食べ。いいか、食べたら俺に感謝するんだ」
「うわ、甘ーい! えっ、魔力量+2だって」
「すげぇ! とろける! 俺も魔力量2増えた!」
「こんなの食べた事がない! 私も増えた」
「これどうやって作ったの! なんで魔力量、増えるのよ?!」
「これが都会の味! 都会のお菓子凄い! 魔力量、増えるんだ!」
「私、これを食べる為に頑張る! 美味しくって! 魔力量、増えて! もう! もう! 最高!」
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スマイル100円、頂きました。
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ぴこんと6回の音とメッセージ。
みんな笑顔で、600円ゲットだ。
159円が600円になった。
黒字だ。
赤字でも気にしないけどな。
しかし、チョコレートで魔力が増えるとはな。
ステータスの能力まで増えるとなると、チートの度合いがインフレだ。
こんなの売るしかないだろう。
もちろん俺もたまに食うけど。
「俺はこういうのを売っている商人だ」
どや顔したのが自分でも分かった。
俺って凄い。
聖剣なんか目じゃないよ。
俺の出した食い物を毎日食べたら、みんな超人だ。
超人を作り出して、ガルー国に復讐も良いけど。
復讐は自分の手でしたい。
それに、俺が一番強くないと、生き残れない。
他人を強くするより、自分だ。
実験台は別だけど。
Side:ブリタニー
私はブリタニー。
クロエちゃんが変な男の人を連れて来た。
暗い色の青系の上着と、高そうなズボン、白いシャツ。
左手には銀色に光る金属のブレスレッド。
本当に変なブレスレッド。
どこのアクセサリーかしら。
黒髪は私と同じ。
でもなんとなく黒の濃さが違う。
肌の色もなんとなく私達と違う。
タイセイという名前も変わっているわね。
ニホンという所から来たらしい。
何から何まで変な感じがする。
色々とあった後に2粒の甘い匂いのする物をくれた。
なにかしら。
口に含むと口の中でとろけていく。
お祭りの時に貰った飴玉とも違う。
なんと言ったらいいのかな。
滑らかで、味が濃い。
そうよ、乳の味だわ。
牛乳の味がする。
それ以外は何が入っているのか分からない。
滑らかで、少し苦みもあって、コクがあって、幸せぇ。
天国があるなら、きっとこれが溢れている場所よ。
悔しいけど、タイセイに感謝した。
なにかを食べて、魔力が増えるなんて、今までなかった。
天国の食べ物かな?
神様が普段食べているのかも。
私、決めたわ。
これをまた食べるために頑張る。
タイセイは何かを探しているいる目つきだ。
私が見つけ出したらまたチョコレートをくれるかな。
「何か探しているの?」
「故郷をね」
「帰り方が分からないの?」
「うん、そうなんだ」
「私も一緒に探してあげる」
「それなら頼もうかな。何か分かったら知らせてくれ」
「ただ働きは嫌よ」
「仕方ないな。チョコレートをもう2粒あげるよ」
みんなでまたチョコレートを食べた。
また、魔力が上がった。
「うほっ、また600円もらえた」
タイセイが変な声を上げた。
変なの。
「うへぇ、口の中が甘ったるい」
さっきまでクロエと喧嘩してた遊び仲間のジータがそう言った。
「残るのが良いんじゃないの。味がいつまでも残ったらいいのに」
そう私が言うと。
「水はどうしているんだ?」
タイセイが変な事を聞く。
井戸がない街に住んでいたのかしら。
「水が欲しいの? 案内するから、またチョコレート頂戴」
私はチョコレートのとりこよ。
チョコレートの為ならお手伝いも苦じゃないわ。




