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第4話 チート・ピーラー

Side:タイセイ


 ジェシーさんがお茶を淹れてくれる事になった。

 喉が渇いていたので御呼ばれする。


「少し酸っぱいが、美味いお茶ですね。体に染み渡るようだ」


 薪割りの後だから、余計にそう感じるのかも知れない。


「そうでしょ、自家製のハーブティーだけど、自信があるわ」

「私、これ嫌い」


「もう、好き嫌いしたら、駄目でしょ。嫌なら飲まないでおきなさい」

「子供にはまだ早いのかもしれないな」


 俺も子供の頃はジュースなんかの方が美味く感じた。


「クロエ、芋の皮むき手伝ってくれる」

「ええっ、芋の皮むき。やりたくない」

「いいわね。手伝いなさい」


「俺も手伝うよ。お茶のお礼だ」


 三人で炊事場に立つ。

 芋はジャガイモみたいな感じで少しごつごつしてる。


 ジェシーさんは危なげない手つきで皮をむいていく。

 さすが主婦だな。


 俺もぎこちないながらも包丁で芋をむいていく。


 クロエちゃんは小ぶりのナイフを手に悪戦苦闘している。

 そのうちクロエちゃんの手が止まった。


「こらっ」


 ジェシーさんがクロエちゃんを優しく叱る。


「うー、上手くむけない」

「最初のうちは誰でもそうよ。練習していくと上手くなるの」

「もう辞める!」

「クロエっ! 最後までやりなさい!」


 涙目になって、逃げるクロエ。

 おっ、点数稼ぎする良い機会かな。

 好感度を上げておくのは悪くない。

 誰だって、良い奴だと思っていたら、便宜を図るってもの。

 衣食住ゲットに持って行きたい。

 スキルで食い物は出せるが節約したいから。


「まあまあ。子供のうちは手がぶきっちょだからね。飽きっぽいのもよくある事」

「うちの子を甘やかさないでくれますか」


「俺が続けるように、言い聞かせてみるよ」

「じゃあ頼んでみようかしら」


 クロエちゃんは庭でいじけてた。


「仕事を投げ出すのは感心しない。でも気持ちは分かる。上手くいかないと、楽しくなくて苦しいだけだよな」

「うん」


「じゃこうしよう。皮むきの道具をあげるから使ってみて。誰でも名人になれる道具だ」

「本当? 私にも出来る?」

「ああ、出来るよ。【スマイル100円通販】」


 ピーラーを検索、安いのまで選り取り見取りだ。

 100円ので十分だろう。

 出でよ100均のピーラー。

 衣食住が付いてくると思えば、100円の投資は安い。

 クロエちゃんの機嫌を取れば、取り込める。

 将を射んとする者はまず馬を射よだ。


「これ何?」

「ピーラーさ。ここを芋に当てて滑らすと綺麗に皮がむける」


 持って来た芋にピーラーを滑らすと一筋ではなく。

 皮の全部が綺麗にむけた。

 何だってー!

 ピーラー、おまえもか!

 ちょっと、どうなってるの?!


 レーザーポインターは物理法則の違いじゃなかった。

 ただのピーラーなのに、これは凄い。

 チートじゃん。

 こんなの勇者クラス。

 まあ、本物の勇者だけど。


 良く思い出すと、召喚陣を暴走させたのは電池だった。

 これから出すであろうピーラー以外の商品も凄いに違いない。


「やらして。うわ、凄い。力が要らないし、薄くむける」


 クロエちゃんは気に入ってくれたようだ。

 そして、しばらくとりとめのない話をした。


「仕事に戻ろう」

「うん」


 芋むきに戻るとジェシーさんは自分の分が終わっていた。

 クロエちゃんがピーラーを使って、一瞬で皮をむくと、何か言いたげだった。


「私にも貸してみなさい」


 見ているだけでは我慢できなくなったのだろう。

 ジェシーさんが口を出した。


「すぐに返してよ」


 ジェシーさんがピーラーを使う。

 やっぱり一瞬で全部の皮がむける。


「便利なのね。これ、高いんでしょ。壊した時の事を考えると、怖いわ」


 実は俺も怖い。

 チート過ぎるだろう。

 俺ってこれからどうなってしまうんだ。

 でも、生き残れる確率は上がってる気がする。


「いえ、安いから気にしないで」

「パン10個分だって」


 日本だと食パン10枚が買えるから、そうクロエちゃんに説明した。

 クロエちゃんがピーラーで芋むきをやると、あっという間に終わる。


「クロエ偉いわ。よく頑張ったわね。ご褒美にキュラスのドライフルーツを昼ごはんの後に出しましょう」

「やった。お母さん大好き」

「もうこの子ったら現金なんだから」


 ジェシーさんとクロエちゃんから、100円ずつが加算された。

 仲直りできたようだ。

 投資の配当が出た。

 利用するにはウインウインが一番いい。

 なので、良い結果と言える。

 笑顔に癒されたなどということはない。


 スキルは隠さない方向で行く。

 腹は括った。


 失笑みたいなのはともかく、普通は人に感謝されないと、スマイル100円が貰えない。

 スキルで出した道具を使わないでどうする。

 隠れてビクビクしながら、生きるのは嫌だ。


 300円の残金で、ピーラーを3個買う。

 これを村の人に使ってもらって、感謝の笑顔を貰おう。

 利用し尽くしてやる。


Side:クロエ


 皮むき嫌い。

 薄くむけないし、たまに手を切ったりする。


 お母さんは何であんなに厳しいの。

 もっと優しくしてくれても良いじゃない。


 見かねたお兄ちゃんがへんてこな道具を出してくれた。


 取っ手と金属の薄い刃が付いていて、取っ手は青色の透き通った物で出来ている。

 宝石で出来ているのかな。


 お兄ちゃんに教わって芋に道具を押しあてて軽く引く。

 シュって音がして、一瞬で全ての皮がむけた。


 凄い、簡単に皮がむける。

 こんな道具があるなんて。


 これはきっとどこかの王国の宝物なんだわ。

 お兄ちゃんはそこの王子様。


「お兄ちゃんは王子?」

「いや、平民だよ」


「だって皮むきの道具は宝物なんでしょ」

「まさか。大銅貨一枚で買えるよ」


 たしか、そんなことを言ってたな。


「大銅貨って私、使ったことない」

「へぇ、そんな価格なんだ。えっとピーラーはパン10個ぐらいかな」

「それだと知ってる。銅貨10枚ぐらい」

「そうなんだ」


「でもこれの取っ手は何で出来ているの?」


 思わず疑問が口を突いて出た。


「あー、プラスチックだな」

「プラスチックって何?」

「何と言われると困るな。樹脂みたいな物だよ」


 木の樹液で出来ているのかな。

 木の液が固まったのは見た事がある。

 たしか茶色の透き通ったのだった。

 青い木の汁もあるのかな。


 そうよ、良い事を思いついた。


「お兄ちゃん。お駄賃で銅貨10枚もらったら、ピーラー売ってよ」

「ああ、売ってやる」

「約束だよ。絶対だよ」


 ピーラーを買って家宝にするんだ。

 みんなが羨ましがるに違いない。

 皮むき名人なんて呼ばれたりして。


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