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4.死刑宣告


「侍女殿!」


 ん? 私の事かしら。


「あら、ラザフォード伯爵?」

「勤務中にすまない。少しだけ話しても大丈夫だろうか」


 真面目な方ね。わざわざ伺いを立てるだなんて。


「はい。急ぎの用事はございませんので平気ですわ」

「よかった。先日いただいたお菓子のお礼を伝えたくて。とても美味しかった、感謝する」


 どこかのゴミ宰相補佐官のせいで気分が悪くなったのを助けていただいたお礼にお菓子を送った。でも、それには丁寧にお礼のカードと花束まで頂いたのに。


「こちらこそ、お礼だったのにお花を頂いてしまって。ありがたく部屋に飾らせていただきました」

「いや、部署の皆も喜んでいた」

「お口にあったのでしたらよかったですわ」


 お礼には消え物が一番だと思い、クッキーの詰め合わせを送った。誤解の無いように部署宛で、感謝の言葉と皆様でどうぞというメッセージを添えておいたのだが、無事お仕事仲間と食べてくださったようだ。


「私は甘くないクッキーを初めて食べたが美味かったよ」

「ええ、美味しいですよね。私はあのお店のチーズと黒胡椒のクッキーが好きです。ワインにも合いますよ」

「なるほど。仕事中で無ければそうしたのだが」

「お店を教えましょうか?」

「………男一人で菓子を買いに行くのは勇気がいるな」


 まあ、眉間に皺を寄せて真剣に悩んでる!


「ふふっ、よろしければご自宅用に買ってきて差し上げますわ。明日は丁度お休みなんです」

「いや、だがせっかくの休日を」

「美味しいですわよ?」

「では、私はワインを用意しよう。それと交換でどうかな」

「そうですね。では、お菓子と同程度のワインにしてくださいね?」

「……貰い物のワインでは駄目だろうか」


 なぜショボンとなさるの。寡黙な方かと思ったのに、思っていたよりも分かりやすい。大きく表情が動くわけでもないのに不思議だわ。


「普段はあまり飲まれないのですか?」

「そうだな。一人で飲むことを楽しむ程ではない。だが、美味しく食べるためなら喜んで飲もう」

「おつまみがメインですか」


 それから少しだけ談笑して別れた。何となく楽しい気持ちになっていたのに。


「君はあんなふうに笑うのだな」


 気持ち悪い。人の顔を見ないでほしい。


「殿下はただいま執務中です。宰相補佐官様がいらっしゃった旨を伝えて参りますので暫くお待ちください」


 なぜ来る。本当に暇なのか。

 宰相閣下! ここでサボってる男がいますよ! 回収してくださいませ!!


「待ってくれ。今日は君に用があってきたんだ」

「……私にですか?」

「ああ。先日は私のせいで不快な思いをさせて申し訳なかった。お詫びといっては何だが受け取ってもらえないだろうか」


 ───この男は馬鹿なの?


 彼が差し出したのは、どう見てもアクセサリーが入っているであろう箱だ。

 貴方のファンに睨まれたくないと伝えたはずなのに、どうして全く伝わっていないのだろう。それ以上に貴方からの贈り物など絶対に受け取りたくはないけど。


「申し訳ございませんが、受け取ることはできません」

「……必要なければ捨ててくれていい」

「受け取りませんので捨てることも致しかねます」

「どうして?」


 どうしてって。私の方が聞きたい。

 なぜ私に構うの。まさか……気付いている?


「受け取る理由がありません」

「受け取ってくれたら、私は嬉しい」

「……私の困惑よりも、貴方様の感情を優先させろと仰るのですね」


 何処までも自分勝手な男だ。虫唾が走る。


「ごめん、そうじゃなくて! ただ、どうしてだろう。君に嫌われている事が辛いんだ」

「……女性に無理強いなさる方と親しくはできません」

「!!」

「失礼いたします」


 本当は走り去ってしまいたい。でも、ここで走って逃げるなんてできない。

 何も関心などないように、普段通りに振る舞おう。


 ああ、何故私を気にしているの。

 思い出さないで、気付かないで。

 そっとしておいて……。



 ◇◇◇



「受け取りませんよ」


 ありえない。あのゴミは信じられないことに、殿下にプレゼントを預けていったようだ。


「何故そこまで嫌がるのだ?」

「女性の嫉妬は恐ろしいですから。あの方からアクセサリーを貰ったことがバレたら刺されるかもしれません」

「いや、そこまではされないだろうけど」


 甘いですよ。女は陰湿ですから。刺されはしないけれど嫌がらせは確実にされると思います。


「でもなあ。やっとあいつがグローリアを忘れそうだから私としては応援したいんだ」


 ………何?


「グローリア様とはどういうことでしょう」

「君は知っているから話すね。あいつはずっとグローリア嬢に片思いをしていたんだ」

「ですが、あの方は」

「そ。アイツの思いが叶っていたら国が大変なことになる。絶対に叶わぬ恋ってやつだ。でも、最後の最後まで諦めきれず、とうとう結婚することになった。祝いのパーティーで酔ったのはそのせいだ。

 アイツは何があったか覚えていないらしい。

 無理矢理だったのか、アイツのファンが一夜のお情けを望んだのか。

 まあ、とにかく体の関係を結んでしまったという訳だ」


 一夜のお情けですって? 私が? 彼を慕っていて、一度でいいから抱いて欲しいと縋ったというの?


「……それで、その女性をお気に召して探していらっしゃるということでしょうか。だとしても、真実が分からないのであれば探すことのお手伝いは致しかねます」


 落ち着くのよ。何かがおかしい。どうしてこんな話になっているの?


「いや、その件はもういいんだ。どうやらアイツは別の女性が気になって仕方がないらしい」


 まさか……


「シャノン。オーガストのことを前向きに考えてもらえないだろうか」



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― 新着の感想 ―
お情け。 ◯◯を吐きそうなほどに傲慢極まりない。 ここまでの腐臭はなかなか見ないレベル。 まあ気づけというのも多少無茶かもしれんが、お前が話している彼女も女性であるなら強◯された可能性があるわけだぞ。…
どMかな? 自分に靡かない異性が好きな可哀想な癖の方かな?
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