(四節)
テーマ:小説
木室 有弥は苛立ちを隠し切れずにいた。
昨晩に掛かって来た彼氏のラブコールの事になるが、彼が
「やっと週末が来たね。ようやく有弥に逢えるから楽しみだよ。」
何て彼は胸を躍らせているのを聞いて
わたしもそんな彼に逢えるのを心待ちしていたのだが、
その彼が約束した時間に成っても現れるのは愚か、
メールの一つもくれない。
待たされてから既に一時間余りが経っているのだが…音沙汰が無い。
その間にもわたしは桎梏と連絡を取ろうとしたのだけど、
一行に繋がらない。
そんな事をしていたわたしは次第に苛立ちを覚えていた。
わたしは痺れを切らして帰ることにしたが、
とは言えまだお昼過ぎだから帰るにしてはまだ早い、
折角梅田に居るんだしショッピングでもしても気分を紛らわす事にした。
その日の夜、突然と有弥の携帯が木霊した。
着信表示を見ると彼からだった。
わたしは慌てて通話ボタンを押して応対すると
「もしもし、俺だが今日はごめん。
どうしても片付けなきゃ逝けない仕事が入っちゃって…本当にごめん」
「…うん仕事じゃしょうがないよね。
でも、連絡くらい出来たんじゃないの?」
わたしは少し厭味を込めて問い質した。すると
「ごめん連絡貰って居たのは知っていたんだけど、
職場上、禁止されていたから…
でも近いうち詳しい経緯を話す時が来るはずだから
今は唯やること成すこと黙って見てて欲しいんだ。」
彼はこう言うと返答を待っているのか暫し間沈黙が流れた。
「どういう事?言ってる意味がいまいち理解出来ないんだけど?」
わたしは怪訝な面持ちで聞き返したが、
彼はそれ以降話してくれなかった。
でも
「明日は必ず逢えるから今日と同じ時間で日本橋の駅前で」
と言っていたけど…何処に行くんだろう。
そう想いながらわたしは寝床へ入った。
翌朝、清々しい日差しに眼を覚ましたわたしは
膚に残る寝汗を洗い流す為シャワーを浴びてから
リビングでテレビを見ながら食パンを噛っていると
彼から電話が掛かってきた。
「今、君の家に向かっている処なんだけど、
家って西九条で良かったんだっけ?」
確か昨日は日本橋って言っていたのにどうしたのかな。
「そうだけど、でもなんで?昨日は日本橋って言って居たのに…」
「そうだけど、昨日はすっぽかしたようなもんだし…
だから昨日のお詫びってわけ」
案外気が利く奴じゃないって今に成って想い知らされた。
「わたしは構わないけど…今どこ」
その時、インターフォンが鳴り、
わたしはドアフォンに近づき応対すると相手は彼だった。
「お邪魔します。突然押しかけてごめん、有弥!」
「わたしは良いけど、今日はどこ行くの?」
「USJにでも行こうかなって想ってさ…
だからさっさと着替えちゃえよ、
湯上がり姿でいられるのも悪くはないが眼のやり場に困るから…」
そういうと彼は胸元を直視した。
「あぁごめん憲二、直ぐに支度するから。」
そう言ってわたしは自室に戻った。
着替えを済まして化粧を軽く済まし、彼の待つリビングに戻ると、
わたしの食べかけのパンを齧っていた。
「お待たせ」
「あぁ、じゃあ行こうか?」
「うん」
そうしてわたしは彼の運転する車でUSJへと向かった。