(二節)
警戒しながら入らなくて良かったが、
もし、美里の姿が捉えなかったらショックだったからだ。
入った瞬間に美里が私に気付き「パパァ~」と泣き声を立てて駆け寄り、
私は膝間突いて美里をあやしていると、
巡査長が近ついて来て
「良かったね!パパと逢えて…。」
等と言って会話を多々交じらせてから巡査長と別れた。
その後、家に戻るにもまだ早い時間帯なので
美里を連れて動物園に行く事にした。
最寄駅の野田に向かい、
切符を二枚買って改札を潜ってプラットホームへと続く
階段を駆け上がり、
まだ電車が来ていないので
待合室に入り美里を椅子に腰掛けさせてから隣に坐った。
「パパァ~何処行くの?」
と美里は意気軒昂に聞いてきた。
私はこの美里の表情を見て理恵が居ない今、
今更になってこの娘だけは何が在っても守りたいと私は心に誓った。
「まだ午に成っていないからノンちゃんが大好きな動物園だよ!
お昼は近くの串揚げ屋で良い?」
「ウン!キリンさん元気かな?」
嬉しそうに応えた。どうも美里は麒麟の大のお気に入りらしく、
初めて動物園に行った時以来、行く度に一番に脚を運ぶのだ。
「キリンさんは元気だよ」
それから幾度か会話を重ねていると
電車入って来たので電車に乗り込んだ。
十分余りの乗車で今宮に着き、改札を潜り、
徒歩で新世界に向いながら美里との会話を弾ませてると
南陽通商店街の路地前に立っていた。
通りに入ると人一人通のが精一杯な狭さだが、
数十メーター行くと正面なアーケードに成った。
モールを北上して行くとエッフェル塔に似た通天閣が顔を見せてた。
そのまま素通りして通の角にある串カツ屋『ジャンジャン』に入った。
店に入ると満席ではいなものの、活気付いていた。
一先ず店員の案内でボックス席に通されて、
お任せ三十本とドリンクを頼み来るまで美里との会話に華を咲かした。
暫し和やかムードが流れていると、
串カツを山盛りにした御皿を店員さんが運んできた。
私は椎茸や豚肉を食べ、美里は肉やチーズ等食べながら。
「旨いか?」
「ウン!美味しい!この肉、凄く柔らかくて美味しいよ!」
美里はニッコリ笑ってそう言った。
「でも、タレの二度漬けはダメだよ!」軽く注意すると
「ウン!解ってるよ!」って言いながら食べていた。
再度注文してから暫くすると盛られていた皿も空になり、
会計を済ませて店を後にした。
そのまま動物園に向かう事にしたが、
美里はどうもビリケンが気になるようでビリケンの脚を擦っていて、
動こうとはしない。
「どうした?ビリケンに興味あるのか?」
「ウン!これって人かな?動物さんかな?」
「あれは形は違うけど、子供の恰好した神様だよ!」
私も詳しくは知らないが、
そこに書いてある事を自分なりに纏めて言ってみたが、
美里は私の詞を信じたようにこう言った。
「神様のコ・ド・モ!?ノンちゃんと一緒だ!ワ~イ!」
始めは怪訝な面持ちだったか、
何か共感できるものでも有ったのか、途端に嬉しさを表明した。
あれから二十分程たって今宮の駅前へと戻って来ると、
時刻は既に二時に脚を駆けたところだった。
ここからなら半時も掛からずに着ける。
そう想いながら美里を肩車をしてあげた。
「パパァ~何で手を繋いで居たのに肩車したの?」
「さっきよりも人が多い処に行くから、迷子になったら困るだろう!」
「そっか!ウン、解った!」
そして『天王寺動物園』の裏門から入ると直ぐに白熊が出迎えてくれて、
美里は白熊を眼にやると「シロクマさんだ!」って大騒ぎで駆け寄って行った。
記念に写真を撮って奥へと脚を進めた。
さっき鱈腹食べたのにまた空腹に満たされてる気がする。
仕方ないので売店で腹持ちの良い物を買うことにした。
「ノンちゃんは欲しいのある?」
「ノンちゃんドウブツクッキーとポッキーとクーが良い!」
「解ったよ!」
そう言って言われた物を手に取り買物を済まして
美里を連れ、ベンチに腰掛けた。
今日一日歩き回ったせいか美里は坐って間もなくうとうとし始めた。
その様子を眺めて「眠いの?」と問うと「ウ~ン」と俯きながら応え、
私は美里をベンチに横たえ、着ていた上着を掛けて上げた。
暫く膝元で安眠していたのを黙視して持っていたおむすびをほうばってから
美里を背負って動物園を出て大通に出てタクシーを捕まえて自宅に戻った。