(一節)
テーマ:小説
私は唯揺れる列車の中で腰を落ち着かせうとうとしながら
景色を眺めていた。
ボックスシートの片割れに居た私は向席に座ってる
他人と時折会話を弾ませながら
差し入れを貰ったりして時間を費やしたりして、
久々の長距離移動も苦痛には感じなかった!
三年前…十月某日
私はちょっとしたトラブルに巻き込まれていたのだが、
そんな事は気には留めずに唯只管、今という時間を有効活用するため、
私にはこれっぽっちも躊躇しなかった。
ある時、私の携帯に一本の電話が掛かって来た。
話しの内容は
『貴方の娘さん…え-と美里ちゃんだっけ?
迷子になって泣いてたから保護して上げたぞ!』
って言われたからには迎えに行かなければならない。
美里は私の実の娘で今は小学二年生で陽気に友達同士で燥いでいる。
美里は実は遺児なのだ。
美里には言ってもいないし、話せる訳もなく、
美里が生まれて七歳になるまで母親の顔を拝む事など一度もなかった。
それでも美里は今だこの歳になっても哀しみに染まった事はない。
そんな美里が隣街の一角を彷徨ってる処を
偶々通り掛かった知人の巡査長に保護されたと言う。
もし、変質者の手に渡ったとなると問題だが…
私は一報を聞いたのち、知人が勤務する交番へと向かった。