4. 高円寺隠世
「やった………みたいだな」
「みごと討ち取りましたの」
「こいつは、あれかな………まさかあの暴走車に、跳ねられたヤツの霊なのか?」
「さて、それは知らないのですん」
「ところで、お前っていったい何者なんだ?」
「え? 主さま……?」
幼い顔が驚いた表情を浮かべ、そして戸惑いを見せる。
そしてしばらく黙って俯いてから顔を上げ、満面の笑みを浮かべながら話しだした。
「申し遅れました主さま。ボクは宿得と申しますん。主さまを導きお守りするよう、仰せつかまつりですの。以後末永く、よろしくお願い仕りますん」
深々と礼をする。
「ちょっと待て、いったいどういうことなんだ? それにここはどこだ? 俺は死んじまったってことなのか?」
「お姫さまから、聞いておられないですの?」
「聞いてないよ何も」
だいたいおひいさまって誰?
「では……ひとつひとつお答えいたしますの」
「ここはどこなんだ?」
「ここは高円寺ですん」
「それは知ってる。でも現実の高円寺と違うじゃないか」
「ああ、それですの。ここは隠世と申しまして、現世とは少しばかりずれた世界ですん」
「ウツシヨってのが、現実世界のことか?」
「はいですの。隠世は、死者と生者の世界の狭間ですん。そしてさらに向こうにある世界から、魔物も神も顕れることができるという、境界にある世界ですの」
「じゃあ俺は……死んでる………のか……?」
「死んではいませんの。主さまは選ばれし使徒として、隠世に招かれたのですん」
キタ~~~、見事な厨二病設定!
これはやっぱ俺の夢確定だろう。
にしても……
「シトって……天使かよ」
「いえ、天使ではなく……」
「いや、いいんだ」
某有名人型決戦兵器アニメが脳裏をかすめたが、それを説明しても通じないだろう。
いや、通じないのが道理だ。
この幼女がアニヲタ設定というのはやり過ぎだろう。
もしそうだとしても、年齢的にあれを知っているには無理があるわけで、却下だ。
ドリームマスターとして、無理やりな設定はできるだけ押し通すべきではない。
設定の破綻は、すべてを虚しい現実へと引き戻す覚醒を、呼び込んでしまうからだ。
かくなる上は是非も無し。
存分に夢を満喫しょうぞ。
「で、誰が俺を呼んだって?」
「お姫さまですの」
「そのお姫さまってのは、いったい誰なんだい?」
「えええ? ほんとうに覚えておられないのですん?」
幼女が小首を傾げる。
「ふむ……困りましたですの」
今度は小首は逆向きに傾く。これはカワイイ。
「そう言われても……な?」
「むーう……では、これからご案内いたしますん。直接お会いして確かめるのが、手っとり早いですの。はい、きっとそうなのですん」
使徒ってのが何なのかよく判らなかったが、そのお姫さまってのに会えば判るんだろう。
それにその姫さまがどんな女の子なのか、否が応にも気になるじゃないか。
クエストとかも、彼女から発生する感じだろうか。
「こちらですの」
ヤドゥルが先に立って歩き出す。




