2. ヒーローの豹変
「ここだよ」
俺はスマホ――だったもので、自分を照らし出した。
その姿は、さっきのモスグリーンの薄いコートを羽織ったのから一変していた。
「んだぁ? このガキ、そのクソチンケなカッコはよぉ、コスプレってやつか?」
派手なアロハシャツのクズ二男くん、クソチンケってワード、ちょっとヒド過ぎくない?
アンタらの服だって大概だぜ、まあ、けっこうお高そうではあるけどさ。
「こいつ、それで強くなったつもりってか!?」
「「ギャハハハハ!!」」
「で? 次はどんなマジック、見せてくれるんだぁ?」
黒シャツのクズ一男は、ぜんぶマジックだと思い込みたいらしい。
理解を超えるものに接したとき、人は何とか頭の中で納得できる説明を試みるものだ。
正常性バイアスとかいうやつの一種だな。
だがしかし、奴らの本当の気持ちなど、手に取るように分かるのであった。
二人の感情は、光背オーラ状のアストラル体のゆらぎとなって、俺の目に映じているからだ。
その色や動きが、精神状態を反映するのである。
クズ一男のアストラル体は、青緑色で小さくまとまり、ときおり小刻みに揺れている。警戒しつつ冷静さを保とうとしているが、その実焦っているのだ。
クズ二男のは赤黒くて、不規則に揺れ動いている。怒りと同時に恐怖を感じて、かなり動揺しているようすだ。
俺の装備を見て小馬鹿にするのも、不安の裏返しってことなんだろう。
灰白色の軽金属っぽい胸当て、腹部はフレキシブルな蛇腹構造、肩や肘、膝も同色の丸みのある防具でカバーしている。
足には仕掛け満載のスペシャルブーツを装備。
頬を守るフェイスガードがちょっと立っているが、ヘルメットとシールドバイザーは、オープンモードで頭部は晒している。
要するに俺ってば、特撮ヒーローばりばりな感じの変身を遂げていたわけだ。
うん、しゃあない、こりゃもろコスプレか……――イヤイヤイヤ、そんなことはないって! この装備はそこらのコスプレなんかより、断然カッコいい!
だってホンモノなんだから!
だいたいコスプレ=コスチューム・プレイってのは、あくまで遊びなのだ。こちとらマジで命懸けてるわけだし!
このコスプレ、いや、アーマードスーツ、俺は一瞬で装着したんだが、ちょっとした秘密がある。
それはこの隠世と現世との、不思議な繋がりに関わるものだ。
そのカラクリは、俺にも訳が分からないレベルの、奇妙奇天烈な力が働いている。
愛用のモスグリーンのコートのポケットには、良くわからない金属片が入っていたんだが、このスーツはそれが変化したものなのだ。
薄くて軽いアルミのような合金製の板状のケースで、スライド式に開くのだが、中は浅い上に、カードも入らない小さなものだ。
正直なぜソレがこうなるのか、まるで理解できない。